下書き・相談

Index ~作品もくじ~


 
大幅に遅れてじゃじゃじゃじゃーんです。申し訳ありません。働きながら長編執筆するの結構厳しいものがあります。

ちょっとプロフィールもいじりますね。

ゲストヒロイン
(一応一話につき毎回こういうゲストヒロインがいます)
(一話のときはフィーネちゃんがそのポジションでした)
(次の話ではフォルテ君の母、ピエタがそのポジションになる予定です)

名前:エーデル
年齢:享年12歳(フォルテ君5歳のころ)。以後をリタルダンド渓谷の谷底で幽霊として過ごしており、フォルテ君がエーデルの死を忘れ、お姉ちゃんというイメージを持っているために、フォルテ君から見て少し大人びた15歳程度の少女の姿になっている。
性別:女
性格:純真無垢で素直な泣き虫。アッチェレランド病を発症し、繰り返す発作の中で、いつも父親であるアドルフ(アンダンテさん)に会いたいと泣いていた。自分の気持ちを伝えるのが苦手で、すぐにだんまりを決め込んで泣いてしまう。リタルダンドの幽霊と化してからは名前を奪われエコー(こだま)と呼ばれる存在になっており、相手が言った言葉の中から自分の言いたい言葉を繰り返すことしかできない(思考能力は普通にあるし、しゃべる以外の意思伝達は行える)。
容姿:母親ゆずりの黒い巻き毛をふんわりと結び後ろで一括りにしている。白い肌。目は父方の祖母と同じく、くすんだ緑。背はややフォルテ君より高く、フォルテ君がお姉さんと思える程度には体つきは少し発達している。
背景:霊感が強く、死者と話せる。アドルフ(アンダンテさん)の娘でありメトロノーム伯爵の一派にあっては幼子のフォルテ君と年が近く本当の兄弟のように仲よくしていた。母親の死因であるアッチェレランド病を発症し、それが原因で死んでしまう。アドルフはその治療薬を求めるための金を用意するために伯爵を売りエーデルを助けようとしたが、アドルフが駆けつけた時におりしもフォルテ君がエーデルを連れ出し、アドルフに会いに行こうとしている道中で遭難し、そこで発作を起こして死んでしまって途方に暮れているところを近隣の村人に見つかり保護されるも、アッチェレランド病を恐れる村人にエーデルの遺骸は川に打ち捨てられてしまい、アドルフは彼女の死を確かめることもできなかった。
エーデルの死体は川を流れてリタルダンドの底を流れるモルダウ河にたどり着いており、そこで停留した結果、リタルダンド渓谷にエコー(エーデル)として顕現した。同じく人に忘れ去られて過去に停留している赤毛の司祭とともに、リタルダンド渓谷の番人を務めている。

赤毛の司祭
名前:アントニオ・ヴィヴァルディ
年齢:見た目アンダンテさんと同じくらいの中年
性別:男
性格:哲学者のような感じで、言っていることはあまりに観念的すぎてよくわからないことが多い。一の質問に対して十くらいの思索を並べ立てて、全然関係ないことをたくさん言って相手が辟易した辺りで相手が目当ての答えが返って来たりする。免罪譜の原本を全て所有しており、持っているヴァイオリンで譜面が無くとも奏でることができる。生死間についてももうすでに死んでから百年近く経っているために非常に達観している。リタルダンドに留まっていることについては、免罪譜を求めるものがいる限り、自分はこの谷底から出ることを許されないと悟っている。
容姿:炎と見まごうほどの深紅の巻毛をふんわりと後ろで一括りにして、それを肩に流している(エーデルと同じ髪型)(というよりエーデルの髪をヴィヴァルディが結ってあげている感じ)。目の色はとび色で天使のような微笑を浮かべている割と美男。どこか遠い目をしている。
背景:百年前に『調和の霊感』という免罪譜と呼ばれる楽譜による免罪符を発行し、それを演奏した人はもちろん、聞いた人間の罪さえ許されるという救いの音楽を作り上げた。免罪譜は既に散逸しており、教会はその保護を呼び掛けているが、現存するものはないと言われている。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3 モチーフはこの人なので詳しいことはこの辺を見てください。あまり詳しく余生に言及する人でもないのでふんわりとこんな人がいたのねというニュアンスで結構です。

メイン

フォルテ君
名前:クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(本名フォルクローレ・ディ・メルツェル)(メトロノーム伯爵の名字もメルツェルです。その息子です)
年齢:およそ12歳前後(本人が幼少期にいろいろありすぎて誕生日その他諸々を覚えていないため)
性別:男
性格:天真爛漫、純真無垢、誰かが泣いているのを見過ごせない正義感のある少年(その割にヴェクサシオン時代には生きていくために追いはぎをやっていた過去もある)。とにかく元気。十二歳前後だがまともな教育を受けていないため、文盲であり、字はようやく名前が書ける程度。計算も苦手で足し算引き算も繰り上がりがあると指を使う。掛け算割り算はわからない。また、幼少期の過酷な経験(エーデル関係、ピエタ関係)などから、自分の過去についてよく覚えていないが、あまりそういうことを深く考えたこともなかった。今はアンダンテさんとともに旅人として世界を巡ることだけを考えている。旅人になりたいかどうかはよくわかっていない。
容姿:日焼けした褐色の肌、コーヒー色の茶色の強い髪の毛、やや癖毛で外に跳ねる。目の色は明るい緑色。服装はぶかぶかの大人用のワイシャツを袖まくりしてきており、擦り切れてつるつるになった半ズボンをサスペンダーで留めている。上から黄色いフードつきのマントを着ている。
背景:メトロノーム一門の首魁である、メトロノーム伯爵、メルツェルの長男として生まれるも、最後の弟子アドルフの密告によりメルツェルは処刑され、一門もピエタの開いた晩餐会により、アドルフ、プレストを残し全員が死亡している。その後ピエタが館を燃やした火事が延焼して町全体を覆いこみ、廃墟となったウィーンの街はヴェクサシオンと呼ばれるスラムになり、以後そこで追いはぎをしながら通りかかる人の荷物を持つ振りをしてそれを盗んでは生計を立てていた。そんな折にアンダンテさんがそこを通りがかりヴァイオリンを盗んだことで警邏に捕まり捕縛されるも、アンダンテさんがそのヴァイオリンは彼にあげたもので、彼は私の弟子なんですよ、みたいなことを言ってフォルテ君を救う。以後そのままなあなあで旅人の弟子としてアンダンテさんと共に旅をしている。

アンダンテさん
名前:アドルフ・アイヒマン(アンダンテは旅人としての名前)
年齢:不詳(エーデルくらいの年の娘がいる程度には中年)
性別:男
性格:自称紳士であり、女性と見れば見境なく挨拶のように口説く(曰く紳士のたしなみ)。独特のユーモアと多彩な知識を持っていて、旅人でありながらも、上流階級の人間(この前のブラームス家の人々なんかもそうです)とも社交できる教養をもつ。昔の職業は医者であり、特に外科的な処置については詳しい。また自らが犯した罪をすすぐためには免罪譜を手に入れるしかないとかたくなに信じている節があり、そのためならやや非道な手段や結果がどうなるかとか考えずに行動してしまう困った面もある。人使いは結構荒い。実際過去に犯してきた罪については堪えがたい懊悩を感じており、それを思い出すために、夜な夜なランプに火をつけて伯爵を呼び出している。
容姿:血色のない白い肌に黒い髪をひっつめにして後ろで一括りにしている。何といっても口髭がトレードマーク。目の色は黒。話していても相手と目を合わせることは少なく、特にフォルテ君の方を見て何か言うことは少ない(客として接する相手はちゃんと目を合わせる)。襟を立てて上からスカーフできつく巻いており、自殺した際に残る首の縄の痕を誰にも見られないようにしている。
背景:アッチェレランド病を発症した妻を救えなかった苦しみから、娘さえ放り出して自殺しようとしたところをメルツェル伯爵(メトロノーム伯爵)に救われ、メトロノーム一門に入門した最後の弟子。外科医としての能力を生かし、死者の遺体を整えるエンバーミングを行うことができ、悲惨な死に肩に納得できない人たちの最期を見送る旅人。その後娘のエーデルもアッチェレランド病を発症し、治療法を探している所を詐欺師に付け込まれ、銀貨三十で薬を売ってやると言われ、その銀貨三十を用意するために伯爵を教会に密告し、その褒賞金で薬を買おうとした。結果伯爵は当時盛んだった旅人の異端審問により処刑され、エーデルもフォルテ君の色々で助からなかった。失意に暮れる一門を何とか立て直そうと伯爵の妻であったピエタはアドルフとともに隠遁生活を送るも、やがて罪に耐えきれず事情をピエタに告白すると、ピエタは絶望し、一門全員と晩餐会を開き、そこで毒入りのぶどう酒を配って一門とともに自らも死のうとした。アドルフとプレストだけ助かるも、その後に起こした火事によりウィーンの街は全焼し、スラムとなる。以後各地を転々としていたが、ある日立ち寄ったヴェクサシオン(元ウィーンの街)で、成長したフォルテ君にヴァイオリンを盗まれ、それを機に彼を弟子見習いにし、旅人として免罪符を探す旅を始める。

プレスト君
名前:プリースト・カルファゲーテ(プレストは旅人としての名前)
年齢:少なくとも二十代以上。アンダンテさんよりはずっと年下。
性別:男
性格:せっかちで短気で割と粗暴。フォルテ君のことは少なくとも今のところ一度もフォルテと呼んだことはない(第一話でも小僧とか坊主とかチビとか呼んでます)。アンダンテさんの過去を明確に知る数少ない人物の一人。本人自身も旅人をやっている以上何かしらの罪に対する意識があるはずだがあまり本編とは関わってこない。巻き込まれ役。グリッサンドの一件からアンダンテさんの旅に加わる。
容姿:長身で逞しい男性。髪の毛は白く眼の色は赤。ベージュのハンチング帽と灰色のマフラーをして、いつも漆黒の乗馬服に身を包んでいる。
背景:特に決まっていない。少なくともアンダンテさんより若く、かつメトロノーム一門に入門した時期が早い存在ではある。フォルテ君やエーデルとも面識があるはずだが本人たちはあまり覚えていない。世界最速のクシコスポスト(郵便馬車)であり、旅人としての力を使いあの世とこの世で手紙のやり取りをする冥府の渡し守。基本愛馬、ヴォルフガングとともにいけない場所はない。

とりあえずキャラクタープロフィールまとめです。基本今回の話はこの五人+伯爵で進めていこうと思っています。
お待たせしていて申し訳ありません。
合作カンタータ №72
»»  2015.01.25.
大まかなプロットを立てましたのでざっとでいいので目を通してくださいませませ。質問提案はご自由に。

ピルグリムの唄 ~忘却の子守唄~

道歌:らくだ様に考えていただいた碑文を採用します。

覚えていない思い出:エーデルがフォルテくんの前で死に、その目の前でアッチェレランド病を恐る村人に川に捨てられるシーンの村人たちのセリフ。

プロローグ:リタルダンド渓谷の概要。世界の裂け目とさえ言われる奈落の底で、すべての過去が滞留し、リタルダンド(だんだん遅く)している時間の溝であることなどの説明。よく崩落することも添えて、このへんの地理的なこととともに。

一:グリッサンドからアンダンテさんたちが馬車を出すシーン。普通は旅団を組んで渡るこの渓谷なんですが、アンダンテさんたちは単身で行きます。で、この谷を渡るしきたりみたいのがあって、決して誰かが落ちても助けようとは思ってはいけない、振り返らずとどまることなく、ゆっくりでも前だけを見て進まなければいけないみたいのがあって、そこでフォルテくんとアンダンテさんはお互い遺書を交換し合うみたいな。仮に自分が死んでも、どちらかが生き残って果たして欲しい約束を交換し合うみたいな。で、フォルテくんは自分の持ち物からアンダンテさんに残しておきたいものをひっくり返すんですがこれといったものは特になくて、お母さんの遺骨は何が何でも手放すことはできないとかで、ずた袋(フォルテくんの持ち物)を探して、その奥の方に一つの押し花にした栞を見つけて、それはエーデルワイスの白い花の栞で、掠れた字で――への贈り物と書かれていて(名前のところが読めなくなっているんですが、実際にはえーデルへの贈り物と書かれています)、それを見たアンダンテさんはなにか深刻な顔をして、それを預かろうとかって言って、フォルテくんは特に気にもとめずにアンダンテさんにそれをあずけて、それで遺書の交換とするみたいな(この時アンダンテさんが渡すフォルテくんへの遺書にはリタルダンドに落ちた時に川に沿って進み、罪の釣瓶を目指せと書かれていたり)。

二:そしてアンダンテさん、フォルテくん、プレストくんで道中を進むわけですが、その間にフォルテ君は暇なので鼻歌なんか歌ったりして、それがエーデルワイスの歌で、アンダンテさんはその曲をどこで知ったのかねとかって聴いたりして、フォルテ君はどこで聞いたんでしょうねみたいになって、そこからフォルテくんとアンダンテさんの出会いの話になって、ちょうどヴェクサシオンで追い剥ぎをしていて、立ち寄ったアンダンテさんの荷物を持つふりをして、そのままバイオリンをくすねようとして結局アンダンテさんに捕まった話なんかを笑い話みたいに話しながら、では、その前のことを覚えているかね、みたいな話になって、フォルテ君はその前のことなんて少しも覚えていないんですが、君は突然木の股から生まれたわけではないのだから、ちゃんと父親がいて、母親がいて、育てられていた時期があるはずだよとかって言われて、でも全然そんなの覚えてなくて、きっと捨てられたんだろう程度に思っているわけなんですが、徐々に昔のことがフラッシュバックしていくみたいな。

三:リタルダンド渓谷崩落。馬車に乗っていたフォルテ君たちは即座に逃げて無事でしたが馬車は崩落に巻き込まれて落下(ヴォルフガングはプレストくんが即座に馬車から離して無事です)。馬車は途中の岩場に引っかかって止まりますが、フォルテくんはそれを見て、馬車の中につい荷物(というか母親の遺骨)を残してきてしまったことを思い出し、アンダンテさんやプレストくんの制止も構わず岩場に向かって降りてしまい、馬車に潜って遺骨を抱き抱えて脱出しようとしたその時にまた崩落が起き、フォルテ君はそのまま谷底へ。

四:フォルテ君が目を覚ますとそこは見たこともない薄暗い谷底で目の前には一人の女の子と赤毛の男性がいて、フォルテ君は赤毛の男性からここがリタルダンド渓谷の谷底であることを聞き、そしてその赤毛の男性が、アンダンテさんが探してやまない免罪譜〈調和の霊感〉の作者たる赤毛の司祭、アントニオ・ヴィヴァルディであることに気づきびっくりし、彼から女の子の事を聞いて、こちらが言った言葉からしか返事ができないこと、唯一言えるのは行かないでだけで、名前さえわからないこと、しかしもしかしたら君は彼女のことを知っているのではないかみたいなことを言われて怪訝に思いながらも、とりあえずは助けを待つことに。

五:アンダンテさんたちの動き。とりあえずフォルテ君を助けたりはせず、谷を越えた先の街についていてそこからどうしようかという話に。しかしプレストくんはアンダンテさんが目論み合ってフォルテ君をあえて谷に落としたことを気づいていてアンダンテさんには超ブチギレみたいな。もしかして赤毛の司祭を谷底から引きずり出して、免罪譜を得ようとしているのではないかとアンダンテさんを糾弾。で、アンダンテさんはこの町にある底のない井戸罪の釣瓶がリタルダンドにつながっていることを知っていて、そこからフォルテ君を救い出すといい、君はこのまま見捨てて次の町に行くかねと言われ、渋々ながら付き合うことに。夜になり、アンダンテさんは例のごとく伯爵を呼び出し、そこで伯爵からも責められる。曰くお前はお前の娘のことなど愛してはいなかったと言われて、そのくせに彼女が死んだ今になって大切にしてあげようとしている、そんなことをするくらいならどうして生きているうちにあの子の願いを聞いてあげなかったんだ、お前はお前の娘が生きている時に、あの子の願いをたったひとつでも聞いてあげたかね、とかって言われたりして、それでも私はだからこそ贖わなければならないとかって話をしたり。で、横からそれを見ていたプレスト君のところにも伯爵がいたりして、伯爵はプレストくんの罪も責めるんですが、プレスト君はそれをほとんど無視して俺は許されたいなんて思ってないし、免罪譜も求めてない、罪を負って生きる覚悟をしてるみたいな事を言って、それを聞いた伯爵はお前は逃げているだけだろうとかって言いながら闇に消えていくみたいな。

六:フォルテくんはとりあえずは助けを待つことに。で、エーデルと一緒に助けを待っている間に、過去にもこんなことがあったようなことを思い出して、子供だった頃に、アッチェレランド病に苦しんで、それでもアンダンテさんに会いたいとなくエーデルを慰めながら、ここで待っていればもうすぐにアンダンテさん(アドルフ)が来ると言い聞かせて待っていたことを思い出したり。それで記憶に確かにエーデルの顔が残っているのにその名前が思い出せないでいながら、赤毛の司祭に君はやはりこの子を知っているようだねとか言われたりして。それで、待っていても助けは来ないよ、この奈落には生きているものは入れないのだからねとか言われて、待っていても仕方ない、と崖を登ろうとするんですが、すぐに崩れてダメで、そういえばアンダンテさんは遺書に何を書いたんだろうとか思って開けると、そこにはフォルテくんがようやく読める文字で、川に沿って進め、行き止まりの井戸を上れと書いてあって、フォルテ君は赤毛の司祭とエーデルとともにモルダウの流れに沿ってリタルダンドを歩いていきます。

七:そうして歩いていくうちにどんどん思い出されていくフォルテ君自身の記憶。かつてこうして川に沿って病気のエーデルを連れてアドルフに会いにそりを引いて五歳のフォルテ君は街を目指したみたいな。で、その時にも、エーデルがずっとお父さんに会いたい、とつぶやいていたことを思い出して、そうだ、あの日もこんな風に、みたいになっているうちにだんだん記憶が怪しくなっていって、思い出そうとすることが怖くなっていったり。あの時一緒にいたあの子はどうなったんだっけ、オレは今生きているけど、ならどうなったんだっけとか考え出していくうちにもどうしてもそこから先が思い出せなくてみたいな。

八:再びアンダンテさんサイド、アンダンテさんは次の街にたどり着き、そこで底のない井戸を見つけ、延々と組み上げても組み上げても果てのない釣瓶をひたすらに引き上げることを始めたり。プレスト君はそれをそばで見ながら、そんなになってまで免罪譜が欲しいのかよとかって言って、アンダンテさんはそれがなければ私はアンダンテとして生きていくことができなのだとか言いながら、肩も上がらなくなるほどになりながらもひたすらに釣瓶を汲み上げ続けるみたいな。

九:フォルテ君たちは、そして行き止まりの釣瓶の井戸にたどり着いて、赤毛の司祭がこの釣瓶は罪の釣瓶というもので、片方により重い罪を載せることで、片方をすくい上げるものだとフォルテ君にいい、フォルテ君はエーデルを釣瓶に載せれば自分は助かるとか言われたり。エーデルはもとより死んでいるのだから、ここで彼女を忘却の河、モルダウの底に沈めたとして、それはフォルテ君の罪ではないし、気に病むことでもない、むしろこの谷底にずっと縛られ続けるより、忘却の河に飲まれて忘れ去られたほうが彼女のためになるとか言われて、フォルテ君はそれでも自分は助かりたいのも事実で、それを見ていたエーデルは自分から釣瓶に乗って、フォルテ君に反対の瓶に乗るように示して、フォルテ君は渋々ながらも乗って、そして釣瓶は上がり始めるみたいな。

十一:アンダンテさんの方は井戸に捧げられるものを次々に投げ打って井戸から何かを組み上げようとしていたり。そのうちに楽器であるヴァイオリンのエーデルにまで手をかけて、プレスト君はそれは捨てちゃなんねえものだろうがとかって止めるんですが、アンダンテさんは免罪譜のためならば惜しくもないとかって言ってヴァイオリンを底に落とすとか。それを見てプレストくんはアンダンテさんを殴ったり。でもアンダンテさんは無言で釣瓶を組み上げ続けるとか。

十二:で、フォルテ君は釣瓶の井戸の下から聴こえてくるエーデルの歌を聴きながら、やっぱりダメだと思って、縄をつかみ、エーデルを自分の瓶に乗せて、エーデルと自分のふたり分の重みを背負って、自らの力だけで釣瓶の井戸を引き上げ始めたり。で、渾身の力を振り絞って井戸を上げていくんですが、その間にエーデルと二人で家を出て、どうなったのかを思い出して、そうだ、あの時、そりが動けなくなって、エーデルが死にそうになって、お薬になるから、あの白い花を取りに行ったんだと思い出すとか。冒頭にあったエーデルワイスの栞は、その時にフォルテ君がエーデルの発作を癒すために取りに行った花で、その間にエーデルは村人に見つかって、フォルテ君が止めに行くまもなく川に捨てられてしまったとか。で、それを思い出してフォルテ君は、そうだ、あの時オレはエーデルを見捨てたんだ、とかって思い出して、だから、オレがエーデルをアンダンテさんに会わせてあげなくちゃいけないんだとかって泣きながら嗚咽して、こんなに頑張ったんだから、もうすぐ頂上だ、と思って上を見上げると、それは全然近づいていなくて、以前上の明かりはずっと遠くにあり、絶望と言えるほどの距離に、愕然とした時に、ふと上から、アンダンテさんのヴァイオリンが落ちてきて、それがも片方の釣瓶に落ち、大きくフォルテ君たちの釣瓶を上げていくとか。で、そうしていくうちにだんだん意識が遠くなり、目を覚ますとフォルテ君は宿の布団で寝ていたとか。

エピローグ:目を覚ましたフォルテ君はプレスト君にアンダンテさんの居場所を聞いて、街の墳墓の丘で墓を作っていると聞いて、行くとアンダンテさんは既に一つの墓を作り終えて帰るところだったとか。で、エーデルは、とかってフォルテくんが聞くと、エーデルは死んだよ、もうずっと前のことだ、とかって言って、君は崩落に巻き込まれた時に頭を打って今の今まで眠ったままだった、君が見たのはすべて夢だ、とかっていったり。じゃあ、その墓は、とフォルテ君が聞くと、さて、君が夢の中から持ち帰った、誰かの墓だよとかって言って、アンダンテさんはフォルテ君にフォルテ君から預かったエーデルワイスの栞を渡して、去っていくとか。で、去り際にありがとうフォルテ君、ようやく会えたよとかって言って、フォルテ君はそのエーデルワイスの栞を見つめてそっとその墓碑の前にそれを備えて、手を合わせ、ごめんね、エーデル。おかえりなさい。とかって言って、で、次の日、プレストくんは街で新しい馬車を買って、あんなにしてまで引き上げようとしてたのは免罪譜じゃなくて、エーデルの骨だったのかよとかってひとりごちりながらまた次の街(ヴェクサシオン)を目指すみたいな。

覚えていたい思い出:エーデルがフォルテ君にエーデルワイスを教えている会話。私のことを忘れても、この歌を覚えていれば、私はいつでもあなたのそばにいるからみたいな。

一応作ってみました。もちろん万事このまま行くとも限らないんですがこんな感じで進行しようと思います。
合作カンタータ №74
»»  2015.01.25.
ちょっと教会と旅人はなんで対立してるのかみたいな構図も見えにくいのでこの際ですから書いておこうかなと思ったり。

まず旅人ですが、旅人の本義とは、社会通念上許されない罪を犯した人間が、自らの罪の重さを持って、死にゆく人の魂と自分の魂を秤にかけ、自らの罪の重さで死者を天上へと召し上げるような救済を行う人間であり、そのために音楽を用いて葬送を行うもののことです。
で、この旅人になるためには前提として罪を犯している必要があるわけですが、背後関係から言うなら、許されざる罪を犯した人間が、どうにかこうにか自らが許されるすべを探した結果編み出された役職が旅人というべきで、旅人になるために罪を犯すという本末が転倒したような人はいなかったはずなんですが、そのへんは時代が経つにつれ徐々に手段と目的のすり代わりが起こり始め、旅人という仕事があるのだから、どんな罪を犯しても、最終的に旅人になればオッケーと考えるような低俗かつ良識にかける旅人たちが台頭し始め、その人たちは割と刹那的で、終末を望むようなところもあったりして、旅人でダメならもう自分の首をくくって死ねばいいやとかって考える人たちだったとか。

で、そういう間違った旅人たちが台頭した時代に、世界の風紀を正すために自殺を禁じ、人が清く正しく生き、自らの罪を自分でにない、自分を報い、自分を救う自己救済を基盤とする教会の教えが出来、それが広まり、赤毛の司祭なんかも台頭して、結局旅人は少数派になり、世界に広く教会の教えが説かれるようになり、教会は旅人を堕落の象徴と断じ、厳しく弾圧した時代もあったとか。その末期がちょうどメトロノーム伯爵一派が崩壊するあたりだったり。

で、今はあらかためぼしい旅人集団もなくなって、教会も行き過ぎた弾圧だったと反省し、教会ができない土着信仰がある場所とか、人が少なすぎて協会を作れない場所とか、そういう場所に置いて葬儀を取り仕切る存在として、積極的に旅人との融和政策に転じ、現在に至っているとか。

そして教会は司法、行政の中枢でもあり、教会の定める法によって人の罪と罰は図られ、罪人を裁くことは教会が行っているみたいな。
その中で自殺はやっぱり強い禁忌として忌み嫌われており、自殺者には墓を造ることも葬儀を上げることもできないというのが罰みたいな。
そんな感じでかつての旅人の台頭、そこから生まれた旅人の堕落と、その中で生まれた教会とその趨勢、そして旅人との融和みたいのがあって今になってるみたいな。ちょっと思ったので書いてみました。何らかの参考までに。
合作カンタータ №83
»»  2015.01.25.


 一面真っ白なお花畑でした。
 昨日の夜に降った霧のような雨が、その白い花びらに雫となって、朝の光を受けて、まるで宝石のようにキラキラと輝いていました。

 男の子はその景色に目を奪われ、その花園にしゃがみこんで、足元を覆い尽くすその花を一つ、摘みました。
 掲げて空に並べてみれば、柔らかな綿毛に覆われた小さな白い花は、ふかふかの雲のようでした。
 雨粒をいっぱいに溜め込んだ花びらがくるりと倒れて、男の子の顔に雫が一つかかりました。
 雫はそのまま涙の通り道を通って、上を向いた男の子の首筋へと流れていきます。
 男の子は顔についた雫を袖で拭います。

――何を泣いているの。

 後ろから声がして、振り返ると、そこにはベッドの上で青い顔をして、悲しい目をした見慣れた顔がありました。
 お花畑はいつの間にか暗い部屋の中になっていました。
 ベッドに寝ている少女には、もはや陽の光さえ力を削ぐ毒になるので、カーテンはずっと下ろされたままで、わずかに灯るロウソクの灯りの下で、部屋の中にはいつもすすり泣きが響いていました。
 それでも少女は、本当は自分が一番心配されたいのに、男の子の顔を見ると、まずそう聞くのです。

 泣いてなんかいないよ、と男の子は答えます。
 泣いているのは、お姉ちゃんの方だ。

――お父さんは、今日も帰ってこないのね。

 もうじき帰ってくるよ。ほら、お花を摘んできたよ。
 ねえ、だから、泣かないで。

 泣かないで――。

 パチリ、と目を開くと、そこには初めて見る天井がありました。
 丸く木を彫って作られた天井。その真ん中はどうやら観音開きになっているようで、その開き戸の真ん中から、壁に沿ってはしごがつけられています。
 そしてフォルテ君は、ガタゴトと揺れるそこが馬車の中であること、自分が今まで眠って夢を見ていたことを思い出しました。
 どれくらい寝ていたのでしょうか。窓から見える太陽は、すっかり真昼の位置です。
 今日は日の出前に街を発つためにずっと早起きしたのと、馬車の揺れがあまりに心地よくて、ついうっかり寝入ってしまったのです。

 フォルテ君は寝かされていた座席から起き上がって、馬車の客車の中を見回します。
 まるで貴人を乗せるような立派な内装です。でも、中にはフォルテ君以外誰もいません。
 馬車が動いているからプレスト君は御者台にいるとしても、アンダンテさんの姿がないのはどうにもおかしい、とフォルテ君は思いました。
 アンダンテさんは女の人と一緒でないところで、呑気に景色を楽しんだり、旅の風情を味わうなんてことはしませんでした。

 アンダンテさんは、特に必要がなければ、一日中だって狭い部屋の中に閉じこもって、ひたすらにパイプを更かし続けるのです。
 そうして旅先でも、宿の狭い客室に煙を充満させて、よく宿の主に怒られて追い出されたりしました。
 一緒に旅をしていたフォルテ君は身をもってそのことをよく知っています。

 かと言って、御者台にいるということも考えられません。
 あのプレスト君が、アンダンテさんと並んで座るはずがありません。
 無理やりにアンダンテさんが横に座ろうとしたら、プレスト君の方が手綱を離して馬車から飛び降りてしまうでしょう。
 それくらいにあの二人は仲が悪いのです。

 とすれば、残っているのはこの馬車の中には一つしかありません。
 フォルテ君ははしごから続く天窓に目を向けます。まさか、あのアンダンテさんが、この上に?
 そんなことを思っていると、不意にバイオリンの音色がその天井から響いてきました。
 フォルテ君は信じられない思いで、はしごを昇って天窓から顔を覗かせました

「やあフォルテ君、眠りの森の王子様のお目覚めはいかがかな」

 バイオリンを肩に担いで、動く馬車の上に立って演奏していたアンダンテさんが振り返ります。
 フォルテ君はびっくりしてはしごを踏み外しそうになってしまいました。

「何を呆けた顔をしているのかね。紳士が涎の跡を残して、寝癖で乱れたそんな顔を人前にさらすものじゃないよ。もう少し君は身だしなみというものに気を遣いたまえ」

 飄々というアンダンテさんを見て、ああ、いつものアンダンテさんだ、と少しだけ安心します。
 そして、今一度、天窓から辺りをぐるりと見回しました。

 不思議な光景でした。トンネル、というのでしょうか。
 崖になっている地面に作られた片側だけ壁がない薄暗い道。
 幅はこの馬車が一台ようやく通れるほどしかありませんが、高さはその馬車の上に大人の男性であるアンダンテさんが立っても、全く危なげない程の余裕がありました。

 何より不思議なのはその壁のない片側から見える光景でした。
 ひたすらに開けた広大な谷。向こう側がほとんど見えないくらいに広がるリタルダンド渓谷。
 少し目を下に向ければ果てしない暗黒が広がっていて、見ているのも怖いほどなのに、少し上を向けば、そこには突き抜けるほどに青い空に、心配など一つもないかのように、白い雲が悠々とたなびいています。
 そして、その崖のトンネルをカーテンのように、白い蔦がまばらに覆っています。
 穏やかさと恐ろしさが同居している、なんとも言い難い景色でした。

「そんなところでキョロキョロしていないで、さっさと上がってきたまえ。それとも君は男に顔を踏まれる趣味でもあったのかね。まああってもおかしくないが」

「ありませんよそんな趣味は! 変な疑いをかけるのはよしてください」

「疑いでないとすると、事実ということかね」

「デタラメってことです! まったくもう、何なんですか!」

 フォルテ君が顔を赤くして大声で言うと、その言葉がまるで帯にでもなったかのように、トンネルの内側にうわんと響き渡ります。
 自分で言った言葉のあまりの大きさと響きに、フォルテ君は驚いて思わず口を閉じるのを忘れて、目を白黒させました。

「轟くだろう?」

「……はい、井戸の中みたいです」

「ふむ、いい喩えだ。正しくそのとおり。この細長い隧道は三方に音が跳ね返って響く。こういうところでの音色を楽しむのもたまにはいいと思ってね。ここのエコーはなかなか気持ちがいい」

「エコー?」

「この残響のことだ。さあ、いつまでそこにいるつもりなのかね。中に戻るなり出てくるなり、どちらかにしたまえ。邪魔でしょうがないよ」

 天井から頭だけ覗かせていたフォルテ君は、じゃあそこまで言うなら、とアンダンテさんの手を借りて天井に上り出ます。

「ったくどいつもこいつも、客でもねえのに人の新品の馬車の屋根に足跡をつけやがって」

 下から聞こえた声に、天蓋から顔を出すと、プレスト君が黒い馬の手綱を握って不満そうな顔を浮かべていました。

「感謝しているよ、プレスト君、だが、この馬車の代金の一部は、私が君に依頼した仕事の報酬から出ていた気がするが」

「俺があんたからもらった報酬で何買おうが、買ったものにあんたが口出しする権限があるわけないだろ」

「なるほど道理だ。では私たちも適正な値でこの馬車に乗っている以上は、客としてもてなされる権限を持つはずだがね。君は人を乗せるときにもそんなぶっきらぼうな態度を取るのかね」

 プレスト君は苦々しげに舌打ちをしましたが、それ以上はもう言い返しませんでした。
 アンダンテさんに言い負かされたというよりは、アンダンテさんの屁理屈に付き合う気が失せたということでしょう。
 何せ口が達者な自称紳士のアンダンテさんは、一緒に議論などしようものなら、理屈をこねくり回して煮詰めてシチューでも作っているかのように、詭弁を弄し、論点をすり替え、いつの間にか何について話していたかを忘れさせられ、煙に巻かれてしまうのです。
 長く付き合っているフォルテ君たちからすれば、まともに話をするのは時間と労力の骨折り損でしかありません。
 フォルテ君はそんな二人をよそに、横に広がる景色を眺めました。

 常闇の淵と、広大な蒼穹。
 特段変わるわけでもないのに、いいえ、だからこそでしょう。不思議と目がそちらから離れません。

「やめたまえ、フォルテ君。魅入られてしまうよ」

 アンダンテさんがフォルテ君の肩に手を置いたので、フォルテ君はようやくハッとしました。

「眺めるならこの道の方にしておきたまえ。谷を覗き込むと、招かれてしまうよ」

 アンダンテさんの方を向くと、その黒い目が、しっかりとフォルテ君を捉えていました。
 フォルテ君は思わずその両目から目を逸らしてしまいます。
 アンダンテさんの黒い目は、このリタルダンド渓谷の闇と同じ色をしているのです。
 深く、底なしの、空っぽの黒。
 それは恐れて遠ざけるものだと、心の深いところで何かが叫ぶ気がしました。

 フォルテ君は目のやり場をなくして、その薄暗いトンネルを見やります。
 壁の色は薄い橙色。この崖そのものの岩の色でした。
 レンガが貼られて舗装されているわけでもなく、ただ岸壁を掘り抜いて作られた道。そして、その壁面にはあちらこちらに亀裂が入っていました。

「ここ、崩れるんでしたっけ」

 フォルテ君が聞くと、アンダンテさんは崩れるよ、と当たり前のように答えます。

「言ったろう、大地はここから湧き上がって生まれるのだよ。世界の陸地というのは絶え間なく移動しているのだ。私たち人間が感じられないほど非常にゆっくりと、緩慢な速度でね。リタルダンド渓谷とはそういう意味だよ。それは神の速度だ。人間には止まっているようにしか感じられないが、確かに動いている」

「今も、ですか?」

「私は人間だよ、わかるわけなかろう。でも、動いているのだろうね。そうして歪を蓄えて、あるとき一気に崩壊する。その度にこの崖は崩れ、この道は塞がり、何人もの人が谷底に落ちていく。そうして崩れてはまた道を掘って、また崩れての繰り返しだ」

「どこか、別の道を探せばいいのに」

「探してないなどと誰が言ったのかね」

 アンダンテさんはその黒い髭をバイオリンの弓を持った手でつまみながらしれっと答えます。

「全ての道は遍く繋がっている。この谷を通らなくても、交易のための道はいくつでもあるだろう。だが、いくら道が通じていたところで、この谷を通らなければたどり着かない場所というものは存在するのだよ」

「この先の街ですか?」

 フォルテ君が問うと、アンダンテさんは短く、いや、と答えたきりで、その場所をそれ以上は言いませんでした。

「免罪譜に続いているのは、少なくともこの道しかない。君にとっても、私にとってもね」

 アンダンテさんは、何処か遠くの方を見て、おそらくフォルテ君に見るなといった、この谷の暗闇を見て、言いました。
 フォルテ君は、アンダンテさんの真意を図ろうとしますが、結局分かりません。

「そういえば、さっきからここに垂れ下がってるあの蔓みたいのはなんですか?」

 フォルテ君は隧道の開けている方向の崖の上から谷底に伸びていく白い蔦を指してアンダンテさんに聞きます。

「あれはツタウスユキソウの蔓だよ。このリタルダンドにしか自生しない花でね。白い花を咲かせるのだが、実はこれは上から垂れて伸びているのではなくて谷底から上に向かって伸びているのだ」

「え、谷底って、この下ですか?」

 フォルテ君は後ろに立つアンダンテさんを振り返って思わず訪ねます。

「唯一谷底から繋がるものだよ。これはね、リタルダンドに落ちた人間の妄念の花と言われているのだ。谷に落ちたものが、何とか谷から這い出たいという一心で草に身を窶し、崖をひたすらに昇って谷の上に咲かせる花だとね。実際その思いの丈に見合ってかどうかは知らないが、この蔓は非常に頑丈で、大人がぶら下がったくらいではびくともしない」

「じゃあ、もしこの谷に落っこちても、この蔓を昇れば戻ってこられるってことですね」

「さて、この谷に落ちて生きている人がいたとすれば、そういうことになるだろうがね。落ちればまず助かるまいよ」

 それもそうだ、とフォルテくんはちらりと谷の方を見て思います。何せ下に見えるものは何一つないのです。
 崖の壁すら、あっという間に影に飲まれて見えなくなっているのです。
 改めてその白い蔓を見ると、それは助けを求める手のようにも見えて、フォルテ君は何となく目を逸らしてしまいます。

 谷を見てもいけない、かと言って馬車の中ではすることもない、フォルテ君はどうやらすごく退屈な状態に自分がいることにようやく気づきました。
 そしてピンときました。
 アンダンテさんも退屈だったのです。
 だから珍しくお客さんもいないのにバイオリンなんて弾いていたのです。

 そして、それに気づくと、今度は無性に何か歌いたくなりました。
 見習いとは言えフォルテ君は旅人でした。

 旅人は音楽を用いて、あの世とこの世を繋ぐものです。
 一人前の旅人は何かしらの楽器を持っていて、それを弾くことで死者との別れを演出するのです。
 フォルテ君にはまだ自分の楽器はありませんでしたが、アンダンテさんのバイオリンに合わせていくつも歌を教えてもらっていました。

 フォルテ君は、不意にある旋律を口ずさみ始めました。

――真白な花よ。清く光る雪に咲く花。

 途中から歌詞を思い出して、言葉を載せます。
 ひどく懐かしい気がしました。ずっと昔に歌って、それ切り忘れていた歌を今思い出したようでした。

「その歌は――」

 アンダンテさんが、わずかに眉を上げてフォルテくんの方を見つめます。
 そして、何も言わずにバイオリンを歌に合わせて奏で始めました。
 フォルテ君はただ、トンネルの中に響いて残る、自分の声と重なるバイオリンの調べを聴いていました。
 長くこだまして聞こえる声は、何だかもう一人、一緒に誰かと歌っているような響きを持っていました。

――かおれ朝の風に。とわに咲けと。

 そこでフォルテ君の歌はぴたりと止まります。

「どうしたのかね。続きは」

「いや、歌詞を忘れちゃって。旋律はわかるんですよ。でも、言葉が出てこないんです。何でしたっけ、ここの歌詞」

 フォルテ君ははねた癖毛を後ろ手で掻きながら何となく恥ずかしい心持ちで、アンダンテさんに訪ねました。
 何気なく聞いただけなのに、アンダンテさんの顔はどうにも神妙でした。
 眉間には薄くシワが寄って、心なしか、口を少し曲げているようにも見えました。
 少し、近寄りがたい雰囲気です。フォルテ君は何だか心配になって、あの、と声をかけます。

「その歌を、どこで覚えたのだね」

「アンダンテさんが教えてくれた歌じゃなかったんでしたっけ」

「私はその歌は教えていないよ」

 じゃあ、自分はどこでこの歌を知ったんだろう、とフォルテ君は思いました。
 アンダンテさんに習ったのでなければ、他にフォルテ君に歌を教えてくれるような人はいなかったはずでした。

――高貴な白って意味なんだって。

 フォルテ君の頭の中にいきなり声が割り込んできます。途切れ途切れに、いくつもの風景が過ぎっていきます。
 フォルテ君が知らないはずの声で、知らないはずの光景が、流れるようにいくつも浮かび上がっては消えていきます。

――お父さんたちが帰ってくるまで一緒に遊んでましょう。

 誰かの声。知らないはずなのに、ずっと昔にその人を知っていたようなおかしな感覚。

――歌って、一緒に。

 白い花が咲く一面の花畑。その真ん中に、花で作った冠をかぶって誰かが座っています。
 長く緩く波打つ黒い髪。あの子は、あの子は――。

――お父さんは、帰ってこないのね。

 あのベッドの上で横たわる痩せこけた頬は。どこか虚ろなあの眼差しは。

――会いたい。お父さんに会いたい。

 そうやって、いつも泣いていたあの声が、あの泣き顔が。

――行かないで。

「どうしたんだね、フォルテ君」

 またぽんとアンダンテさんに肩を叩かれてフォルテ君はハッとしました。
 いつの間にかその視線は渓谷の闇を凝視していました。
 先ほどの剣呑な雰囲気はどこにもなく、心配するようなアンダンテさんを見て、妙な気分も消えていきます。

「見入ってはいけないと言っているだろう」

 ため息混じりに言うアンダンテさんに、フォルテ君ははい、と小さく答えます。

「その歌を教えてくれた人のことを、覚えているかね」

「いいえ、母さん、でもないと思うし。でも、アンダンテさんじゃないんですよね」

「君は、私と会った時のことを覚えているかね」

「オレはアンダンテさんのそのバイオリンを盗もうとしました」

 それははっきりと覚えていました。
 アンダンテさんと出会う前、フォルテ君は焼け落ちた街の片隅で、旅人狙いの追い剥ぎをやっていたのです。
 荷物を持つ代わりに手間賃をくれとせがんで、その荷物ごとくすねる小悪党でした。
 そうでもしなければ生きていけない、本当に何もない場所だったのです。
 フォルテ君はそこで、焼け残った母親の遺骨をひたすらに抱えて、その日その日の食べ物に困りながら、必死に生きていました。
 そこに通りかかったのがアンダンテさんで、そのアンダンテさんに目をつけてしまったのがフォルテ君の運の尽きでした。

「私も今でも覚えているよ。私の荷物はトランクとバイオリンだったが、君は迷わずバイオリンを持つといった」

「金目のものかと思ったんですよ。大切そうにしてましたから」

 強引な口車でほとんどひったくるようにしてアンダンテさんからバイオリンを奪ったフォルテ君はしばらく、従順に荷物持ちを演じ、アンダンテさんが目を離したすきにその場を立ち去って逃げようとしました。
 そこを巡回の警邏隊に捕縛されたのです。
 風紀の悪いその場所は、フォルテ君と同じような孤児や、貧しい人が犯す犯罪が後を立たなかったので、近くの街から治安を守るために役人が派遣されていたのです。
 その場で取り押さえられ、縄をかけられるフォルテ君の前にアンダンテさんがやってきて、そこでその縄を解くように、警邏にお願いしました。

――彼は私の弟子なのですよ。ちょうどバイオリンを持たせてあげているところでしてね。

 何を言っているんだろうこの男は、どんな魂胆があるんだろう、とフォルテ君は訝しみました。
 しかし重ねてアンダンテさんが、小金を握らせると、それで結局警邏は納得し、フォルテ君を開放してくれました。
 フォルテ君はすぐにアンダンテさんに問いただしました。

――言っただろう、君は私の弟子になるのだ。これから先はフォルテと名乗りたまえ。クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ。君の名前だ。

 呆気にとられるフォルテ君をよそに、アンダンテさんはパイプをふかしながら歩き出しました。

――キミのお母上にお墓を作ってあげよう。そのために君は旅人になるのだ。

 そう言って、アンダンテさんはフォルテ君をその荒地から連れ出しました。
 後の旅路は思い出すだに苦難の連続でした。
 それでもあの廃墟の街に残っているよりは断然ましだったことは間違いないのですが。

「では、私と会う以前のことを、一年前より昔のことを覚えているかね」

「え、っと、それは……」

 フォルテ君は必死に記憶を手繰ります。
 フォルテ君は人間の子供です。人間は親がいなければ生まれません。
 親がいて、家があって、そこに赤ちゃんとして子供は生まれるのです。
 だからフォルテ君があの焼け落ちた街で追い剥ぎをやっていたからといって、何もないところからいきなり追い剥ぎのフォルテ君がいたはずはなくて、そこに来るまでの過去があるはずでした。
 母親と、父親と一緒にいた記憶があるはずでした。

 でも、思い出そうと頭をひねっても、それに当てはまる思い出は何一つ出てきません。
 そうして、フォルテ君は自分が今大切に持っている母親の骨も、その顔も声も、何もかも覚えていないことに気づきます。
 そんな馬鹿な、という思いが溢れてきますが、実際フォルテ君は、母親のことを、その名前も思い出せないのです。
 確かなのは、自分にはすごく優しくしてくれた母親がいて、その人は今あの骨になっている、という思いだけでした。
 そのことだけは疑いなく真実だと信じられるのに、どうしてそう信じられるのか、その根拠が全くありません。
 フォルテ君は愕然としました。そのあまりにも大きくて深刻な、自分にまつわる記憶の溝に。

「アンダンテさん、オレ……」

「君は思い出さなければならない。何を引換にしたとしても」

――行かないで。

 また頭の中に声が過ぎります。
 泣いている女の子。多分、フォルテ君が思い出せないでいるアンダンテさんと会う前の過去にいる女の子。
 どうしてだか、フォルテ君には、もう二度とその子には会えないのだ、ということが間違いないことのように思えました。

――あの子はきっと、思い出の中にしかいない。

――でも、オレはそのことを思い出すことができないでいるんだ。

 ガタゴトと揺れる馬車の上で、アンダンテさんは適当にバイオリンを奏でます。
 フォルテくんはそれを聞き流しながら、続いていく隧道を見ていました。
 その道はまるで思い出の中に分け入っていく道のように思えました。
忘却の子守唄 本編下書き
»»  2015.02.04.
そういう理由めいたものはある程度オリジナルで作っていただいても構わないんですが、イメージで答えさせて頂くと、谷底に落ちたフォルテ君が気が付くと、自分は無数の手に囲まれていて(リタルダンドの亡者)その中で声を上げるとエーデルと赤毛の司祭がやってきて、エーデルはとりあえずこの状態では離せないので、赤毛の司祭に話を聞くわけなんですがそこで普通にヴィヴァルディと答えると思うんですよね。で、ヴィヴァルディってあの、赤毛の司祭、みたいな発言をフォルテ君がして、ああ、そう呼ばれていたこともあった、みたいな感じですね。その辺の会話のやりとりはいくらでも作っていただいて構わないというか。

アンダンテさんの目論見がバレたことについては、特段アンダンテさん側としては隠しているわけでもないし、そもそもプレスト君はそういうことをしそうな相手としてアンダンテさんを見ているので、このリタルダンド越えについても何らかの意図があるものだろうと踏んでいるわけなんですが、その結果がフォルテくんが落ちて、アンダンテさんは何かを罪の釣瓶から引き出そうとしている→アンダンテさんが一番欲しているものは免罪譜→世界中の過去が偏在するリタルダンド渓谷にはヴィヴァルディも存在し、調和の霊感もある→アンダンテさんがフォルテ君を引換にヴィヴァルディを引きずり出そうとしているという推測がプレストくんの中で成立するので、プレスト君はアンダンテさんに激怒するわけです。実際にはアンダンテさんは免罪符ではなくエーデルの骨を回収しようとしているわけですが、それは一番最後に明らかになればいいことなので、落とされたフォルテくん自身遺書に書いてある内容に沿って、アンダンテさんは自分を落として免罪符を得ようとしてるんだ、みたいな思い込みで進行して構わない、というかそのへんは一種のミスリードを狙っていたりします。自分で言わされると恥ずかしい限りなんですが。

伯爵は黒い猫です。白い猫は多分もう出てきません。呼び出し方に決まりはないんですが、夜にカンテラを灯しているとその影の中から現れるというのが一応決まりではないんですがそういう場面で出したいですね。で、フォルテ君の前に姿を現すことはないです。

プレストくんの罪は >>80 の後半をご覧下さい(>>80の内容プレスト君の罪については実は未定なんですが、彼の楽器であるギターがガブリエルという名前なので、やっぱり救えなかった恋人のガブリエルみたいな人がいたんではないかなと思ったり。プレスト君は郵便屋で、ガブリエルといえば新約聖書でマリアに受胎告知をした天使ですから、プレスト君にはガブリエルという女友達と、ヴォルフガングという男友達がいて、三人は幼馴染で仲良く育ったんですが、いつの間にかガブリエルをめぐってプレスト君とヴォルフガングの中は険悪になって、そのうちにガブリエルのお腹に子供がいることが発覚したりして、プレスト君はガブリエルは好きだったけどそういう関係にはなってなくて、完全にその子はヴォルフガングの子供だったんですが、ヴォルフガングはガブリエルを信じきれず、プレスト君を疑って、最終的にはガブリエルを殺害して、自らの命も絶って、後にはヴォルフガングが乗っていた駿馬の黒馬だけが残り、失意にくれるところにメトロノーム伯爵が現れて、ヴォルフガングとガブリエルを弔ってくれて、それでプレスト君はガブリエルとヴォルフガングの喪に服し、その黒馬にヴォルフガングと名付け、ギターにガブリエルと名付け、旅人として生きることで、その二人と、ガブリエルに宿っていた子供三人分の罪への許しとして、旅人をやっているみたいな)

フォルテ君が逃げちゃう心理としては、フォルテ君自身はエーデルをアンダンテさんに引き合わせたい一心で病気のエーデルを無理やり外に出しているわけで、その結果エーデルは発作で死に、しかもその死体も近くの住民によって捨てられてしまうという顛末を迎えてしまったわけで、そこに帰ってくるアンダンテさんにどんな顔をしていいかわからないのはむしろ当然だと思うんですよ。流石にそれくらいはわかるでしょうし。でその取り返しのつかないことをしてしまったという後悔から逃げて、アンダンテさんはうちに帰ると誰もいなくて、ようやくほかの人に聞いた限りではどうやらフォルテ君とエーデルが出かけてそのまま帰らないでいるということ、さらに足取りをたどるとエーデルがアッチェレランド病の発作でしに、近くの住人がこれを川に捨てたということだけがわかって、フォルテ君の行方はわからないみたいな状況に。で、フォルテ君は母親であるピエタのいるところに行っていて、そこに事情を聞きにアンダンテさんがやってきたことで最後の晩餐(次の話です)の夜につながっていくみたいな。でもとりあえずこの話ではフォルテ君が取り返しのつかないことをして、それで逃げ出して帰らないフォルテ君をようやくアンダンテさんが迎えに来たで、ひとつハッピーな終わりということで決着をつけたいと思います。

割と散漫な話し方をしているのでわかりにくいかもしれません。ほかにもわからないことがあったらいくらでも聞いていただいて構いません。
続きもそんなに堅苦しく考えなくても大丈夫ですよ。
№110
»»  2015.02.04.
ゴンさんへ

では、お言葉に甘えて少し肩の力を抜きます。


 ヴァイオリンの旋律は優雅で気品に満ちています。高く低く、トンネルに反響し、まるで幾千者の死者が唱和しているかのようです。
 白い手に似た亡者の花が、風に揺れ、そちらへ手招いている錯覚――そんな薄ら寒さがありました。
 ヴァイオリンの音色が、夜明けのごとく変わります。それは先ほどフォルテ君が歌った曲でした。
(アンダンテさんも知ってたんだ)
 フォルテ君は、アンダンテさんの過去を知りません。
 ただ、この歌のどこかに、彼の琴線に触れるものがあったことは、なんとなく察せられました。
「エーデルワイス エーデルワイス」

 ――お父さんに一緒に会おう。エーデル。

「エーデル―─」
 すうっとフォルテ君のほほに涙が伝います。かつての思い出に、もうすぐ出会える。
 そんな気がしました。
 ヴァイオリンが、突然止みます。
 聞こえるのは、風の声と馬車。
 怪訝に思うと、アンダンテさんと目線がぶつかりました。
 それから自分が何を呟いたかを……でも、思い出せません。
 アンダンテさんの瞳に、何かが灯ります。切望とも怒り、悲しみ──表情は虚ろとも言えるのに、目が荒れ狂っています。
 気圧されて恐々と視線を逸らした時、リズミカルだった馬車が大きく揺れました。
(車輪が外れた!?…………違う)
 地震です。
 崖の一部が崩れていくなか、混乱しかける思考を振り払って、馬車から飛び降ります。
 他の二人も無事に避難し、馬のヴォルフガングも咄嗟に手綱を外され、事なきを得ました。
 けれど……
「あっ!どうしようっ、母さん」
 母親の遺骨は落下して崖の途中にある、突き出た岩場にひっかかった馬車の中です。
 何を思ったか、フォルテ君は大胆にツタウスユキソウを足がかりに、降りてゆきます。プレスト君の制止も聞きません。
 必死に必死に下へ。なんとか辿り着きます。
 遺骨を拾い、今度は上を目指す途中、またもや崩落が起こりました。
 成す術もなく手が蔦から離れ、体が傾き、足は宙を踏み、目を見開いて落ちてゆきます。
 ――ああ、死ぬんだ。
 冷静にそう思いました。

 そして、暗転。

 目覚めた次の世界は、――異様でした。

 『おはよう』『攻撃』『大丈夫』『かなしい』『言葉』『知らない』『流れる』『過去』『おかえり』『忘れないで』『忘れないで』
 その全ての言葉の音源は、いちめんのツタウスユキソウです。
 この花々は心を持っている――フォルテ君は直感しました。
 『忘れないで』『忘れないで』『忘れないで』
 オレも
(この谷で忘れられるのか?いや、違う!)
 溢れる恐怖を必死に振り切って、それでも震える声で答えます。
 自分にはまだやりたい事があるのです。
「何を忘れて欲しくないんですか?」
「忘れて欲しくないんです」
 はっきりとした肉声に、驚きと安堵をフォルテ君は覚えます。
 そこには綺麗な女の子が立っていました。
 風がないのに揺れる黒い巻き毛。くすんだ緑色を持つ目。
「君は誰?」
と、言いつつ見覚えのある顔立ちだと思いました。



こん感じです。全力出しました。
書くって楽しいですね!

らくだ
合作カンタータ №113
»»  2015.02.06.
今回すごく良かったです。直すところも最小限でした。ツタウスユキソウを伝って降りる場面なんかも考えていた通りで全体的に非常にいい文章でした。
ただ、ウスユキソウ達の言葉は少しカットさせていただきました。やっぱりこの谷ぞこで喋れるのはエーデルと、ヴィヴァルディだけにしたいなって言うのがあって。ただ、腕の群れ(ウスユキソウ)にも感情があって、それは手の仕草なんかで表現できればいいなと思います。

で、いかが水増し本文です。



 バイオリンの旋律は優雅で気品に満ちています。
 高く低く、トンネルに反響し、まるで幾千者の死者が唱和しているかのようです。
 白い手に似た亡者の花が、風に揺れ、そちらへ手招いている錯覚――そんな薄ら寒さがありました。
 バイオリンの音色が、夜明けのごとく変わります。それは先ほどフォルテ君が歌った曲でした。

 アンダンテさんも、この歌を知っていたのでしょうか。
 フォルテ君はそう不思議に思いましたが、すぐに思い直しました。
 なにせアンダンテさんはあれでも一人前の旅人なのです。
 一度聴いた曲をその場で弾きこなすことなど、それこそ造作もないことでした。

 でも、きっとそれだって、昔誰かに教えてもらいながら身につけた技術に違いないのです。
 今、こうしてアンダンテさんに弟子入りしているフォルテ君のように。

 フォルテ君は、アンダンテさんの過去を知りません。今の姿を見る限りでは、到底誰かに教えを請うようには見えないのですが。
 ただ、この歌がどこか、アンダンテさんの心の琴線に触れるものがあったことは、なんとなく察せられました。
 フォルテ君はアンダンテさんのバイオリンの旋律に、頭の中で言葉を載せます。

 真白な花よ。清く光る雪に咲く花。
 かおれ朝の風に。とわに咲けと。

 旋律は音楽の続きを紡ぎます。でも、フォルテ君はその続きの言葉を、どうしても思い出すことができません。
 代わりに思い出されるのは、やっぱりあの誰かの泣き顔でした。

――泣かないで。大丈夫だから。

 顔の全体はぼやけているのに、目だけ、口だけ、部分部分は鮮明に覚えています。
 そのおぼろげな記憶の中で、その女の子の目は、確かに涙に濡れていて、その口が小さくつぶやきます。

――行かないで。

 すうっとフォルテ君の頬に涙が伝います。
 フォルテ君自身びっくりして、思わず声を上げてしまいました。
 それをアンダンテさんはバイオリン越しにちらりと見て、少し眉を上げて、怪訝そうに言いました。

「どうしたんだね、何を泣いているんだね」

――何を泣いているの。

 アンダンテさんの言葉に、あの夢が重なります。

 泣いてなんかいないよ。泣いているのは、泣いていたのは――。

「泣いてなんていませんよ。あくびをしたら、涙が出ただけです」

 フォルテ君は折って捲ったワイシャツの袖で、ゴシゴシと顔を拭いました。
 アンダンテさんは、さして興味もなさそうに、そうかね、とだけ言って、バイオリンを肩から下ろします。

「あれ、おしまいですか?」

「おしまいだよ。もう十分に堪能した。昼もとっくに回っているし、プレスト君、止めて昼食にしないかね。ヴォルフガングもそろそろ休ませないと気の毒だよ。まだこの馬車に、慣れてもいないのだろう?」

 アンダンテさんは馬車の天井から、御者台にいるプレスト君にも聞こえるように少し声を張り上げて言います。
 プレスト君は答える代わりに馬車を止めました。

「一時すぎか、だいたい中間点までは来ているようだ」

 止まった馬車の上で、胸から銀の懐中時計を出してアンダンテさんは時間を確認しました。
 そして天窓を開けて客車のドアから馬車を降ります。

「見たまえ、ひと月前に崩落した跡が未だに残っている」

 アンダンテさんは、続いてドアから出てきたフォルテ君に前の方を指差して言います。
 フォルテ君は言葉もありませんでした。
 隧道は途切れている、ということはありませんでしたが、その部分は岩が崩れたのがはっきりとわかります。
 辺りの壁面も地面も、そして天井も、いくつもの大きなひび割れが走っていて、これまで来た道と比べると、明らかにデコボコしていました。
 道の脇はいびつに削れており、その部分だけ極端に狭くなっているのを、板を打って橋を渡して補強してあります。
 プレスト君は御者台から降りると、つかつかと歩み寄って、その板張りの部分をみしりと踏みつけます。

「通れないってことはなさそうだな。割としっかりした補強になってる」

「それは誠に重畳。しかし、ひとまずは腹ごしらえと行こうじゃないか。何よりも、ここまで我々を運んでくれたヴォルフガングのために」

 アンダンテさんは漆黒の馬を見ながら髭をなでます。
 プレスト君は吐き捨てるように舌打ちをします。

「自分が休みたいだけのことに、俺の馬をだしに使うんじゃねえ」

 しかし、言いながらプレスト君は、ヴォルフガングと馬車をつないでいる鞍を手際よく外していきます。
 そして、ヴォルフガングを動けるようにすると、馬車の荷台に積んであった干し草と水瓶を抱えて、その首の下に下ろします。
 ヴォルフガングが水を飲み始めると、プレスト君はその鬣を優しく撫でました。

「さあ、我々も食事にしよう」

 アンダンテさんが言いました。
 食事といっても、旅人の旅の途中のご飯というのは乏しいものです。
 歯が抜けそうになるほど固いパンと、これまた一度歯を入れたら二度と抜けなくなるんじゃないかと思うほどにカチカチの干し肉。
 出発する前に、街でスープを買えたのがまだ救いでしょうか。
 冷めているとは言え、パンを浸せばそれでもいくらか固さも和らぐというものです。

 フォルテ君は停めてある馬車の客車から伸びる階段に、腰を下ろしてパンをスープに浸しながらちぎって食べます。
 目の前に広がるのは代わり映えのしない何もない淵と、果てしない空ばかり。
 それでもフォルテ君はなるべく上の方を向いて、暗い深淵を視界に入れないようにしながら食事を続けます。
 聞こえるのは、風の声。隧道を吹き抜けていく風は、港の街で聞こえるようなボー、という音を上げて響きます。
 もうここでは鳥のさえずる声さえしません。時折、カラカラと崖の淵を医師が転がる音がするばかりです。
 フォルテ君は冷たいスープを一口すすって、パンを一欠片ぱくりと食べます。
 固くてやたらとぼそぼそしたパンは、やや塩気の強いスープの美味しさと水分を吸い取って有り余るほどに美味しくありません。

「うへぇ、相変わらずまずいですね、このパン」

 フォルテ君が舌を出して言うと、アンダンテさんはくすりと頬を緩ませます。

「まずいものがまずいとわかるのは、一つ幸せなことだよ。美味しいものを食べたことがある証拠だ」

「前の街で少し贅沢しすぎたな。これが旅人の旅の味だ。思い出したか」

 アンダンテさんの言葉に重ねるようにプレスト君が吐き捨て、林檎を齧ってその芯を谷底へ投げ捨てます。
 捨てられた林檎の芯はあっという間に暗闇に飲まれ、後には落ちた音一つ残しません。
 フォルテ君は何の返事もよこさない谷に、改めて恐ろしさを覚えました。
 本当に底なしなのです。少なくとも底に落ちたものの音が聞こえないほどに。

 地鳴りのような音が聞こえたのはその時でした。
 フォルテ君はその時、大地が本当に波のように振動を伝えるその様を見ました。
 三人が進んで来たその道の彼方から、地面の揺れがガタガタとあたりを震わせてどんどん広がり、こちらに迫って来るのです。

――地震だ。

「伏せたまえ!」

「違う、ここはやばい! 走れ!」

 アンダンテさんとプレスト君がほぼ同時に言い放ちます。
 呆然として何も出来ないでいるフォルテ君を、プレスト君は乱暴に襟首を掴んで走り出しました。
 そして、ヴォルフガングの手綱を掴んで走らせながらその鞍にフォルテ君を抱えたまま飛び乗ります。
 余りにも鮮やかなとっさの動きにフォルテ君は自分がどうなったのかわからないほどでした。

「アドルフ、乗れ!」

 プレスト君は後ろを振り返って、走るアンダンテさんに手を差し伸べて叫びます。

「言われなくても」

 アンダンテさんはやや慌てた声で答えて飛ぶようにしてその手を掴みます。
 そしてプレストは信じられないような腕力で、そのままアンダンテさんをヴォルフガングの背に引き上げると、腹を蹴って駿馬を走り抜けさせます。
 迫ってくる振動が三人のいるところにたどり着くほんの一瞬の間の出来事でした。

 地震の波はその三人がいた、ひと月前の崩落下部分にたどり着くやいなや、一気にその隧道を再び崩落させました。
 天井が崩れ落ち、壁面が割れ、大きな音を立てて、道がガラガラと壊れ落ちていきます。
 プレスト君が買ったばかりのあの素敵な馬車も、岩に飲まれて崖下に落ちていきます。

「馬車が!」

 まるでおもちゃのように、崖をゴロゴロと転がる馬車は途中にせり出した岩場にぶち当たって止まりました。
 もうドアも外れ、車軸も歪み、外れた車輪が岩場からさらに下へと落ちていきます。
 プレスト君は手綱を引いてヴォルフガングを止めました。いつの間にか、揺れは収まっていました。

「気をつけろ、まだ揺れるかも知れないからな。でもあんたは降りろ、気色悪い」

 プレスト君は自分の腰に手を回して、しっかりとその背にしがみついているアンダンテさんの方を振り返って言いました。
 フォルテ君は緩んだプレスト君の腕をかいくぐって地面に降り、崩れた道を改めて眺めました。

「やれやれ、礼を言うべきかな。全く君には助けられてばかりだね」

「礼なんていらねえよ、見ろ! あの馬車の無残な姿! 俺の財産の半分あれに使ったんだからな! 買ってからまだ三日だ! 一つも街を越えられずに壊れるなんて!」

 プレスト君は天を仰ぐように上を向いて、憎々しげにハンチングを握り締めて顔を覆います。
 冬枯れした木の幹のような灰色をした髪がはらりと額に落ちます。
 プレスト君はしばらく帽子に顔をうずめたままでした。
 あんまりにも長いので、もしかして本当に泣いているのかしら、とフォルテ君はびっくりして不安になってしまいました。

「プレスト兄ちゃん、泣いてるの?」

「泣いてねえよバカ。泣きたいけど」

――泣いてるの。

――泣いてなんかいないよ。

 フォルテ君の頭にまたあの景色が繰り返されます。
 フォルテ君は頭を振ってその光景を頭から追い出します。今は、とにかくそんなことに浸っている場合ではないのです。
 フォルテ君は自分の体を確かめます。
 プレスト君に掴まれた首や、抱えられていた胸はジンジンと痛みましたが、跡が付いているくらいで怪我はしていません。
 そして、アンダンテさんも、プレスト君も、そして馬のヴォルフガングも、一応は無事のようです。
 アンダンテさんはバイオリンを手元に置いていましたし、プレスト君は必要最低限のものは、馬車には載せず、ヴォルフガングの鞍に結びつけていましたから、何もかも全てなくしてしまったということはありませんでした。
 ということは、無事では済まなかったのは、あの馬車だけだったようです。あの馬車と、あの馬車に乗っていた荷物。

「あっ!」

 フォルテ君はそれに思い至った瞬間、大声を上げてしまいました。

「母さんが!」

 フォルテ君は叫んで、崖の縁に身をかがめて、岩場で留まっている馬車の残骸を覗き込みました。
 そうです。あの中にはフォルテ君の麻袋がそのまま置いてあったのです。
 食事に使ったものは手元にありましたが、下着や着替え、日記帳や万年筆は、中に置きっ放しになっていました。
 ――もちろん、その一番下に入っていた、母親の遺骨も。

「やめたまえ、もう間に合わない」

「諦めろ、この谷に落ちたものは、お前が失わなければならないものなんだよ。俺の馬車もな。そういう運命なんだ」

 アンダンテさんとプレスト君は、あたふたするフォルテ君を見ながら冷静な口調で言い聞かせます。
 もうプレスト君は馬車のことを割り切った様子でした。
 その二人を見て、フォルテ君はもう一度、岩場に落ちた馬車を見ました。

――落ちたものは捨てていきなさい。
――それは忘れなければならないもの。

 頭をこの谷のしきたりの碑文がかすめます。
 確かに今、フォルテ君の母親の遺骨は谷に落ちてしまっています。
 しかし、それはまだ完全には落ちていません。
 捨てて忘れてしまうことが運命で、それでこの地震が起きたというのなら。

 ああやってまだフォルテ君が少し頑張れば、手の届く位置に踏みとどまっているということは、それは自分がそれでもなおそれを拾って、きちんと弔わなければならない運命を示しているように思えました。

――これは、試練だ。母さんが、忘れちゃダメだって言ってるんだ。

 フォルテ君はそれを確信して、ギュッと歯を食いしばると、側に垂れ下がるツタウスユキソウを足がかりに、リタルダンドの崖を降り始めました。

「やめろバカ! 何やってる!」

 プレスト君が慌てた声を出します。しかし、もう身を乗り出してしまったフォルテ君を止めることはできません。
 下手に触れば、蔦が切れてしまうかもしれないからです。
 フォルテ君は答えることもせずに、恐る恐る、崖を降りていきます。蔦を縄のように伝いながら。

――へっちゃらさ、こんなの。慣れっこだよ。昔も、こうして。

 こうして。

 またです。また何か、いつか見たことがあるような風景が、音が頭に広がっていきます。

――ダメだ、集中しないと。だって、こんなところで。

 そして、うっかり下を見て、その無限に広がる暗黒に、フォルテ君はくらりとしそうになります。
 へっちゃらな訳ありません。大丈夫であるはずがないのです。
 だってこんなにもぱっくりと割れた奈落の底に、今自分がしがみついている蔦は、命綱というには余りにも心もとないものでした。
 ふとした拍子に、何かの弾みで、一瞬で切れ落ちて、それでもうおしまいです。
 あの岩場の足場さえ、リタルダンドの底の前では秋の終わりの薄い氷よりなおあっけないものに思えました。

 それでもなんとか必死に必死に下へ。フォルテ君はようやく岩場に降り立ちました。
 横倒しになった馬車によじ登って、その中に入ります。
 立派だった馬車の内装はめちゃくちゃでした。
 ガラス張りの窓は割れ、割れたガラスが革張りの座席を割いて中の綿が見えていました。
 丸かった天蓋はいびつに歪んでひび割れてしまっています。
 そして、そのめちゃくちゃの客車の中に、フォルテ君の麻袋は、転がっていました。

 フォルテ君は直ぐにそれに駆け寄り、中を確かめます。
 きちんと紐で縛ることができる黒い布袋の中に、フォルテくんの母親の遺骨は、確かに無事にありました。
 フォルテ君は、ホッと胸をなでおろします。
 そして、麻袋の口を縛る紐を腕にくくりつけて、袋を肩に担いで、馬車を出ようとしたその時。

 またもや地鳴りの音が遠くから響いてきて、あっという間に馬車はまたも揺れに巻き込まれました。
 ガラリ、と音がしました。その音とともに、世界は大きく傾いでいきます。
 フォルテくんの内蔵が、ふわりと浮き上がる感触がしました。
 馬車が岩場から落ちたか、岩場そのものが崩れたのでしょう。

 フォルテ君は転がる馬車の中を一緒にゴロゴロと転がります。
 ただ胸に、皮脂と麻袋を抱きしめて。母親の骨を抱きしめて。
 足は宙を踏み、目は外につながるドアを見ていました。
 転がる世界の端に、アンダンテさんとプレスト君の姿が見えます。
 二人もやはり揺れに巻き込まれていて、さっきと同じくその場を立ち去るところでした。
 その遠くなる後ろ姿を見て、フォルテ君は思いました。

――行かないで。

 ずん、と音がして、頭にガツンと衝撃が走って、フォルテ君はそのまま暗闇に飲まれていきました。

 川の音がしました。ひんやりとした感触が、首筋を撫でます。
 優しい手つきでした。まるで、小さい頃に寝かしつけてくれた、母親のような。
 もう少し眠っていよう。
 そんな事を思うフォルテ君は、さらに足に当たる冷たい感触に身を震わせます。
 足の次は、腕、腕の次は脇腹。ひんやりとした感触は、体を触る手はどんどん増えていきます。
 フォルテ君は恐ろしくなって目を見開きます。
 そして、その目の前に広がっていたものを見て、大きな叫び声をあげました。

 それは、手の群れでした。
 薄暗い影の中のような川の岸辺で、不気味なほど白い、無数の腕。腕しかないのです。
 仰げば遥か上に線のように青い空が広がっています。そこからずっと伸びて他にぞこまで腕がつながっているのです。

 あの空を細くする崖の壁はリタルダンド渓谷の淵でしょう。上で見たときは対岸とあんなに離れているように見えたのに。
 それだけここが深いということなのか、上から見た時には見えなかった幅の狭い谷が下に広がっていたのか、それはわかりません。
 いずれにしても、谷の出口は到底登れるような高さではありませんでした。
 そして、そんな遥か高みから、白い腕は真っ直ぐに伸びて、いま、フォルテ君の体にまとわりついています。

「うわあ! 何だこれ!」

 うわあ、なんだこれ。

 フォルテ君の叫び声は、そのまま反響し、暗い谷に幾重にも重なって響き、そして消えていきます。
 手の群れは、フォルテ君の声に驚いたように、ビクッと震え、動かなくなります。
 フォルテ君は自分の腕を掴む白い腕を振り払いました。
 すると腕は一斉に、まるで起こったかのように今度は力強く、フォルテ君の体に掴みかかってきました。

「やだ、やめて! 離して!」

 やだ、やめて。離して。

 フォルテ君の声は、虚しい残響だけを残して、消えていきます。

「やめて」

 その消えていくこだまの奥から、凛とした声が響きました。
 女の子の声です。
 そして、足音が二つ、フォルテ君の方に近づいて来るのが聞こえました。

――助けが来たんだ。

 フォルテ君は安堵して、ため息が出そうになりました。

「離して」

 また女の子の声がしました。その声に反応して、手は一斉にフォルテ君の体から離れていきます。
 腕の群れから解放されたフォルテ君は、しばらく自分の周りを囲む手の群れを警戒して睨んでいました。
 しかし、どうやらもう襲って来ることがないと安心すると、その声の方に目を向けます。

 そこには綺麗な女の子が立っていました。
 黒く緩やかに波打つ長い髪。目の色は不思議な緑色をしていました。
 光が少ないせいか色の薄さが際立って青白く光っているように、浮いて見えます。
 そして、その側にカンテラを持つ男性がいます。歳はアンダンテさんと同じくらいでしょうか。
 しかし見事なのはその燃えるような赤い髪の毛です。手に持つカンテラに灯る炎と同じ朱色をした長い髪を背中で一括りにしています。

「君は、いや、あなたたちは?」

 女の子はフォルテ君より少し上くらいでしょうか。少女と言える年齢です。
 二人はただフォルテ君のことをじっと眺めるばかりで、答えようとしません。

「た、助けてくれて、ありがとう。え、えっと、君たちは、助けに来てくれた人、なのかな。それとも、オレと同じように、さっきの崖崩れに巻き込まれた人かな」

 少女と男性は答える気配すらありません。

「お、オレは、フォルテって言うんだ。君、名前は?」

 やっぱり二人とも答えません。もしかして、喋れないのかな、とフォルテ君は考え始めます。
 しかし、さっき少女はフォルテ君を助けるために声を出していました。
 ならば何かしらの決まりがあって、フォルテ君とは口がきけないのかもしれません。
 フォルテ君はアンダンテさんとの旅で、そういう奇妙な風習を持つ村や町をいくつか知っていました。

「あの、気を悪くするかも知れないんだけど、もしかして喋れないのかな、何か、決まりごとがあるとか」

「喋れない」

 少女は即座に今度は答えました。やはり、何か決まり事があるのでしょうか。
 フォルテ君は困り果てて、女の子の顔を眺めました。ふと、なにかの記憶が頭をかすめます。
 フォルテ君は少女の顔にどこか見覚えがありました。

「あの、君、もしかして、どこかで会ってる?」

「会ってる」

 少女はまたもフォルテ君の言葉を繰り返すように答えました。
 もしかして、こっちが言ったことを繰り返さなくちゃいけないのかな、とフォルテ君は考えました。

「はい、か、いいえで答えて。君たちは、オレを助けに来てくれた人?」

「いいえ」

 フォルテ君は確信しました。この少女はこちらが言った言葉しか返事できないのです。
 しかし、それはただ繰り返すだけではなく、ちゃんとこちらの言っていることは通じているようです。
 それが分かってやった、と思う反面、助けではないこともはっきりして、落ち込む気持ちもありました。

「じゃあ、この谷に落ちたの?」

「いいえ」

「じゃあ、どうして?」

 少女は答えません。はいかいいえで答えられる質問ではなくなったからです。
 フォルテ君は自分で意味のない質問をしたと、頭をガリガリと掻きむしりました。
 そして、頭を振り、質問を変えることにしました。
 そういえば、さっき、フォルテ君と少女が会っているというのは、どういうことでしょう。

「君は、オレのことを知ってるの?」

「はい」

「昔に会ってる?」

「はい」

 少女の答えに、フォルテ君はまじまじとその顔を見つめます。
 それは多分、事実なのでしょう。実際フォルテ君自身にも、少女の顔には見覚えがありました。
 でも、それがどこで会っているのか、誰なのかがさっぱり思い出せません。

「まあいいや、そんなのはここから出たあとで考えればいいんだ。ねえ、君、出口を知ってるんでしょう?」

「いいえ」

 少女の答えは簡潔でした。
 そして、その言葉にフォルテ君は薄ら寒いものが心臓に広がっていく感覚を覚えました。

「えっと、この谷に、出口は、ある、よね」

「いいえ」

 心に生えた霜柱が、心臓を裂く音が聞こえた気がしました。

「じゃあ、君たちはどこから来たの?」

 少女は何も答えません。男性はただフォルテ君の方を見つめるばかりです。
 その周りで、垂れ下がる手の群れは、落ち着きなくヒソヒソと蠢くだけでした。



これで三終了です。らくだ様は急がず焦らず四からお書きください。と思いましたがよくよく考えればここからヴィヴァルディのターンなので、初見で書くのは大変かもしれませんからちょっと私が書きますね。しばらくお待ちください。
№114 №115
»»  2015.02.06.



 フォルテ君は考え込んでしまいました。
 今、自分がいるのはおそらくはリタルダンド渓谷の谷底です。何とかしてここから脱出しなければなりません。
 しかし、辺りを見回しても、どうやら上に続いているのはあの何本もの白い腕だけで、薄暗い渓谷の底はただ、轟々と音を立てて川が流れているばかりです。

 他には何もありません。

 待っていれば助けが来るでしょうか。
 フォルテ君とすればそれを期待したいところでしたが、助けは来ない予感がしていました。
 まず、フォルテ君は地震による谷の崩落に巻き込まれました。あの隧道もきっともう通れなくなっているでしょう。
 アンダンテさんとプレスト君はあの時には無事だったように見えました。
 しかし、あの後再び地震に巻き込まれ、既に亡くなっているかもしれない、ということはあるかないかで言えば、十分にありえることでした。
 考えたくないことでしたが、もし二人が無事でなければ、助けなど来るはずもありません。

 そして万が一無事であったとしても、やはり助けは来ないのではないか、とフォルテ君は思います。
 崖崩れが広い範囲に渡っているなら、それを掘り返すだけでも相当な時間がかかるでしょうし、何より気がかりなのはあのしきたりの碑文でした。

――落ちたものは捨てていきなさい。
――それは忘れなければならないもの。

 この碑文の指すことが、そのままの意味なら。
 谷底に落ちたフォルテ君は、最初から助からないものとして、アンダンテさんたちはそのままフォルテ君をここに残して先に進んでしまうのではないか。
 大体アンダンテさんたちからすれば、ここでフォルテ君が生きているかどうか、わかるわけがないのです。
 フォルテ君自身、どうして助かったのか不思議なくらいです。

 遥か高みを見上げれば、細い線の形に切り取られる空は遥か遠くにあります。
 あんな場所から転がり落ちて、よく助かったな、とフォルテ君はそれを安心していいものか、それとも厄介なことになったと不安に駆られればいいのか、気持ちを持て余していました。

 フォルテ君は川の岸辺で白い手たちとまるでおしゃべりをするように、その手を撫でたり握ったりする少女を振り返りました。
 白い手たちはなにか乱暴をすることもなく、どちらかといえば、嬉しそうに、その触れ合いを楽しんでいるように見えました。
 それは、今、あるいは昨日今日、ここに来た人の動きではありません。
 明らかに少女はその手とのふれあいに慣れていましたし、手たちも、それを受け入れています。
 つまり、それはそれだけ長い時間を、あの少女はここで過ごしていることを示していました。

「ううん」

 フォルテ君は一つ唸って、川の岸辺に座り込み、その水面をじっと見つめました。
 流れる川は、不思議な色をしています。川底が見えないくらいに水量は多く、激しく流れています。
 その流れをぼんやりと眺めていると、その奥に何かが浮かび上がってきました。
 なんだろうと思って、フォルテ君は目を凝らします。

――こんにちは、あなたの名前は?

 おぼろげな輪郭が、水面に像を結んでいきます。黒い髪の、かすれた緑色の目をした女の子。

――私のことは、お姉ちゃんって呼んで。私もあなたのこと、本当の弟だと思うから。

――仲良くしましょうね。

――お互い、お父さんたちが帰ってくるまで。

 女の子は笑い、こちらに手招きをします。

――ほら、素敵なお家でしょう? 見て、あの花畑。真っ白な花が咲いてて、すごく綺麗でしょ。

――エーデルワイスって言うんだよ。

――気高い白っていう意味なの。

「やめなさい」

 肩を叩かれてフォルテ君はハッとします。
 振り返ると、あの少女の側にいた赤毛の男性がフォルテ君の隣に立っていました。
 この薄暗い谷底の中でも、眩しいほどに明るい赤毛。肌は白く、鼻筋の通った整った顔は、まるで人形のようでした。

「この川はモルダウという川だ。すべての世界の記憶、過去、思念、思い出、そういうものが一緒くたにここを流れ去っていく。未来の水源から、忘却の海を目指して真っ直ぐに流れていく懐かしき川。見入ると、招かれてしまう。そして一度この川に入ってしまえば、出るのは容易なことではない」

 抑揚に乏しく、しかし流暢に喋る男性に、フォルテ君はびっくりして口をパクパクさせてしまいます。

「しゃ、喋れるんですか?」

「喋る? それが言葉を発したものの発言の内容とその意図を慮り、しかるべく応答のために口からものを言う、その言葉の応酬ができるか、という意味なら、もちろん私は喋ることができる。できないと誰かが言ったか。私が喋ることができないと推論する論拠が何かあったか」

 赤毛の男性は無機質な言い方で一息に言います。
 フォルテ君にはやや難しい言葉が多く、言っていることを理解するのに、少し時間がかかってしまいます。

「でも、あの子は」

「あの子?」

「あの……」

 赤毛の男性が怪訝そうにするので、フォルテ君は手と戯れる少女を指さします。

「ああ、彼女はこだまだ。やまびこだ。こちらの言った言葉の中で、返答に使える音しか返すことができない。私はもっぱらエコーと呼んでいるが、それは彼女の本当の名前ではない」

「エコー……。あなたは?」

 あなたの名前は、という意味だったのですが、赤毛の男性は意図を組めないようで、首を傾げます。
 どうにも奇妙な間がお互いに空いてしまいます。
 フォルテ君には、この男性の言うことは少し難しすぎ、フォルテ君の言うことは、赤毛の男性にはいささか言葉が足りないようでした。

「あなたは、何ていう名前なんですか」

「私の名前、今更そんなことに意味があるとも思えないし、私の名前は時代の変遷とともに増えていく一方で、何を自分の名前とすればいいのか、明確にこれが正解とわかるものはない。アルディヴィーヴァ・リカンテ、インセグナンテ・ディ・オスピダーレ・デッラ・ピエタ、バンビーノ・ディ・ベネチア、バスタルド・エレティコ、あるいは、イル・プレーテ・ロッソ、アントニオ・ヴィヴァルディ……」

 さらにブツブツと呟き続ける赤毛の男性の言葉に、フォルテ君は何か聞き逃せない言葉が紛れていた気がしました。

「ん、あれ、今……、アントニオ・ヴィヴァルディって言いました?」

「言ったかどうか、それはもはや過去になってしまったことだ。言葉は発したその瞬間から、中空に消え、音声はエコーを残してどこかへ去ってしまう。音はどこに消えていくのか。それを留めておく方法はないのか。それが歌であり、楽譜の意義だ」

 また別の話に展開していく男性をフォルテ君は慌てて止めます。

「ちょっと待って! あの、本当に、少しいいですか、あなた、あの、『赤毛の司祭(イル・プレーテ・ロッソ)』のアントニオ・ヴィヴァルディなんですか?」

 すると男性は、ちらりとだけその赤銅の瞳でフォルテ君を見ました。

「そう呼ばれていた過去も、確かに存在する」

「そんなわけ無い! だって、アントニオ・ヴィヴァルディは確か、五百年前に死んでるはず!」

「死んでいるものがいてはおかしいだろうか。そんなことはない。なぜならここは忘却の谷間で、流れているのは過去の川なのだから。ここには全ての忘れ去られた存在が等しくある。私も既に人々にとっては忘却の淵から思い出される存在になっている。だからここにいる。ここにしかいられない」

 赤毛の司祭は静かに答えました。
 その言い方は余りにも平坦で棒のような言い方でしたが、少しだけ、寂しそうでもありました。
 フォルテ君は興奮と混乱で頭の中がこんがらがってしまいそうでした。
 自分はもしかしたらこれでこのまま死んでしまうかもしれないのに、今目の前にいるのは、あのアンダンテさんが追い求めてやまない免罪譜の作者なのです。

――この人を連れ帰れば、免罪譜はいくらでも手に入る。いや、でも、そもそも帰る方法があるだろうか。大体この人たちは一体、どうやって暮らしているんだろう。暮らしてきたんだろうか。

 そして、その時、フォルテ君はある当然の疑惑に行き着きました。

「あの、もしかしてここって、死後の世界とかですか? オレ、実は死んでて、だから五百年前に死んだ司祭様がここにいらっしゃるんですか?」

 むしろこれまで自分が助かったと考えるより、余程ここの光景は、その死後の世界にふさわしいものでした。
 冥府の入口には川が流れているというし、上から垂れ下がる手の群れも、地獄の亡者というには相応でした。

「いいえ」

 後ろから声がしました。
 少女がいつの間にかこちらにやってきて、ブンブンと首を横に振っています。それだけはないのだ、と強く主張するように。

「あなた、は、死んで、ない」

 少女はとぎれとぎれに言います。おそらくは、フォルテ君がさっきまで話していた言葉の中から、自分が使いたい言葉を繋げて。
 それはぎこちない言い方でしたが、それだけに必死さが伝わって、信用できるものに思えました。

「オレは、生きてるの?」

「はい」

 フォルテ君の言葉に、少女は力強く頷きます。
 それを見て、フォルテ君はホッと胸をなで下ろしました。
 それから弾かれたように顔を上げ、少女の方を見つめます。

「君たちは――」

 生きているの、と言いかけて、フォルテ君はそのまま続きを言えませんでした。
 少女はそれを見て、その淡い緑の瞳をふ、と緩ませて、困ったように笑い、首を横に振りました。
 フォルテ君はごめん、と俯いて答えます。すると、少女はフォルテ君の焦げ茶色の癖毛を優しく撫でました。
 頭に触れてくる感触は、雪と同じ冷たさをしていました。
 それは紛れもなく、少女の命が既にないものだということを、何よりも雄弁に語っていました。


続きです。もうちょっと四の内容を盛り込んで文章を増やしてとりあえず待ってみようとフォルテくんが思うところまで持っていきたいんですがひとまず続きをらくだ様にお願いしたいです。

そして今後のことというか、ラストの話ですが、虹とかっていう庵もあったんですが、エーデルワイスの花が咲くっていうのもいいなと思いました。そもそもツタウスユキソウは一応架空の植物なので、何年かに一度いっせいに咲いて綿毛を飛ばして種をまくとかでもいいと思ったり。で、腕たちはフォルテ君たちが罪の釣瓶を登るのを手伝ったことで自らの因果を果たして昇天するわけなんですが、エーデルの埋葬とともに、隧道を覆うツタウスユキソウが一斉に開花して、その綿毛がリタルダンドの谷間をわたっていくエンドとかもありだなと思ったりしました。とりあえず思いつきついでに。
№119
»»  2015.02.17.


 フォルテ君は考え込んでしまいました。
 今、自分がいるのはおそらくはリタルダンド渓谷の谷底です。何とかしてここから脱出しなければなりません。
 しかし、辺りを見回しても、どうやら上に続いているのはあの何本もの白い腕だけで、薄暗い渓谷の底はただ、轟々と音を立てて川が流れているばかりです。

 他には何もありません。
 待っていれば助けが来るでしょうか。
 助けは来る、とは思いたいところでしたが、考えてみれば、考えてみるほど、助けは来ないような気がしてなりませんでした。

 まず、フォルテ君は地震による谷の崩落に巻き込まれました。フォルテ君の目の前であの隧道もろともに崩れてしまったのです。
 それは、誰かが助けに来るにしても、まずあの崩落を掘り起こさなければならないことを意味します。
 つまり、今すぐに、というわけには行かないことは間違いありません。

 また、アンダンテさんとプレスト君はあの時には無事だったように見えました。
 しかし、あの後再び地震に巻き込まれ、既に亡くなっているかもしれない、ということはあるかないかで言えば、十分にありえることでした。
 考えたくないことでしたが、もし二人が無事でなければ、助けなど来るはずもありません。

 そして万が一、二人が無事であったとしても、二人は助けには来ないのではないか、という漠然とした、それでいて確信めいた思いがフォルテ君の中にありました。
 それは決して、フォルテ君があの二人に不信を抱いている、ということではありません。
 何より気がかりなのはあのしきたりの碑文でした。

――落ちたものは捨てていきなさい。
――それは忘れなければならないもの。

 この碑文の指すことが、そのままの意味なら。
 谷底に落ちたフォルテ君は、最初から助からないものとして、アンダンテさんたちはそのままフォルテ君をここに残して先に進んでしまうのではないか。
 大体アンダンテさんたちからすれば、ここでフォルテ君が生きているかどうか、わかるわけがないのです。
 フォルテ君自身、どうして助かったのか不思議なくらいです。

 遥か高みを見上げれば、細い線の形に切り取られる空は遥か遠くにあります。
 あんな場所から転がり落ちて、よく助かったな、とフォルテ君はそれを安心していいものか、それとも厄介なことになったと不安に駆られればいいのか、気持ちを持て余していました。

 フォルテ君は川の岸辺で白い手たちとまるでおしゃべりをするように、その手を撫でたり握ったりする少女を振り返りました。
 白い手たちはなにか乱暴をすることもなく、どちらかといえば、嬉しそうに、その触れ合いを楽しんでいるように見えました。
 それは、今、あるいは昨日今日、ここに来た人の動きではありません。
 明らかに少女はその手とのふれあいに慣れていましたし、手たちも、それを受け入れています。
 つまり、それはそれだけ長い時間を、あの少女はここで過ごしていることを示していました。

「ううん」

 フォルテ君は一つ唸って、川の岸辺に座り込み、その水面をじっと見つめました。
 流れる川は、不思議な色をしています。川底が見えないくらいに水量は多く、激しく流れています。
 その流れをぼんやりと眺めていると、その奥に何かが浮かび上がってきました。
 なんだろうと思って、フォルテ君は目を凝らします。

――こんにちは、あなたの名前は?

 おぼろげな輪郭が、水面に像を結んでいきます。黒い髪の、かすれた緑色の目をした女の子。

――私のことは、お姉ちゃんって呼んで。私もあなたのこと、本当の弟だと思うから。

――仲良くしましょうね。

――お互い、お父さんたちが帰ってくるまで。

 女の子は笑い、こちらに手招きをします。

――ほら、素敵なお家でしょう? 見て、あの花畑。真っ白な花が咲いてて、すごく綺麗でしょ。

――エーデルワイスって言うんだよ。

――気高い白っていう意味なの。

「やめなさい」

 肩を叩かれてフォルテ君はハッとします。
 振り返ると、あの少女の側にいた赤毛の男性がフォルテ君の隣に立っていました。
 この薄暗い谷底の中でも、眩しいほどに明るい赤毛。肌は白く、鼻筋の通った整った顔は、まるで人形のようでした。

「この川はモルダウという川だ。すべての世界の記憶、過去、思念、思い出、そういうものが一緒くたにここを流れ去っていく。始まりはあれど終わりは無い悠久の大河。全ての人の過去に存在する懐かしき川。見入ると、招かれてしまう。そして一度この川に入ってしまえば、出るのは容易なことではない」
 抑揚に乏しく、しかし流暢に喋る男性に、フォルテ君はびっくりして口をパクパクさせてしまいます。

「しゃ、喋れるんですか?」

「喋る? それが言葉を発したものの発言の内容とその意図を慮り、しかるべく応答のために口からものを言う、その言葉の応酬ができるか、という意味なら、もちろん私は喋ることができる。できないと誰かが言ったか。私が喋ることができないと推論する論拠が何かあったか」

 赤毛の男性は無機質な言い方で言います。

「ここはどこですか? あなたたちはどうしてここにいるんです? どうやったらここから出られますか? オレ、帰らないといけないんです!」

 話が通じる人がいたという事実にフォルテ君は興奮気味に一息に赤毛の男性に詰め寄ります。男性は冷ややかな目でただフォルテ君を見つめ、一つため息をついてから、フォルテ君の胸を押し返すようにして、少し離れます。

「ここはリタルダンドの谷底。東と西の境、過去と未来の境、男と女の境、大人と子供の境、君と私の境。ありとあらゆる背反する二律のその狭間。決して相容れぬ深い溝。その奈落だ。ここには過去になったものだけが滞留している。私もそうだ。もうシからは随分と長い月日が経つが、私はこの谷底で永遠にとどまり続けるだろう」

「でも、あの子は」

「あの子?」

「あの……」

 赤毛の男性が怪訝そうにするので、フォルテ君は手と戯れる少女を指さします。

「ああ、彼女はこだまだ。やまびこだ。こちらの言った言葉の中で、返答に使える音しか返すことができない。私はもっぱらエコーと呼んでいるが、それは彼女の本当の名前ではない」

「エコー……。あなたは?」

 あなたの名前は、という意味だったのですが、赤毛の男性は意図を組めないようで、首を傾げます。
 どうにも奇妙な間がお互いに空いてしまいます。
 フォルテ君には、この男性の言うことは少し難しすぎ、フォルテ君の言うことは、赤毛の男性にはいささか言葉が足りないようでした。

「あなたは、何ていう名前なんですか」

「私の名前、今更そんなことに意味があるとも思えないし、私の名前は時代の変遷とともに増えていく一方で、何を自分の名前とすればいいのか、明確にこれが正解とわかるものはない。アルディヴィーヴァ・リカンテ、インセグナンテ・ディ・オスピダーレ・デッラ・ピエタ、バンビーノ・ディ・ベネチア、バスタルド・エレティコ、あるいは、イル・プレーテ・ロッソ、アントニオ・ヴィヴァルディ……」

 さらにブツブツと呟き続ける赤毛の男性の言葉に、フォルテ君は何か聞き逃せない言葉が紛れていた気がしました。

「ん、あれ、今……、アントニオ・ヴィヴァルディって言いました?」

「言ったかどうか、それはもはや過去になってしまったことだ。言葉は発したその瞬間から、中空に消え、音声はエコーを残してどこかへ去ってしまう。音はどこに消えていくのか。それを留めておく方法はないのか。それが歌であり、楽譜の意義だ」

 また別の話に展開していく男性をフォルテ君は慌てて止めます。

「ちょっと待って! あの、本当に、少しいいですか、あなた、あの、『赤毛の司祭(イル・プレーテ・ロッソ)』のアントニオ・ヴィヴァルディなんですか? 免罪譜の、『調和の霊感』の作者の!」

 すると男性は、ちらりとだけその赤銅の瞳でフォルテ君を見ました。

「そう呼ばれていた過去も、確かに存在する」

「そんなわけ無い! だって、アントニオ・ヴィヴァルディは確か、五百年前に死んでるはず!」

「死んでいるものがいてはおかしいだろうか。そんなことはない。なぜならここは忘却の谷間で、流れているのは過去の川なのだから。ここには全ての忘れ去られた存在が等しくある。私も既に人々にとっては忘却の淵から思い出される存在になっている。だからここにいる。ここにしかいられない」

 赤毛の司祭は静かに答えました。
 その言い方は余りにも平坦で棒のような言い方でしたが、少しだけ、寂しそうでもありました。
 フォルテ君は興奮と混乱で頭の中がこんがらがってしまいそうでした。
 自分はもしかしたらこれでこのまま死んでしまうかもしれないのに、今目の前にいるのは、あのアンダンテさんが追い求めてやまない免罪譜の作者なのです。

――この人を連れ帰れば、免罪譜はいくらでも手に入る。いや、でも、そもそも帰る方法があるだろうか。大体この人たちは一体、どうやって暮らしているんだろう。暮らしてきたんだろうか。

 そして、その時、フォルテ君はある当然の疑惑に行き着きました。

「あの、もしかしてここって、死後の世界とかですか? オレ、実は死んでて、だから五百年前に死んだ司祭様がここにいらっしゃるんですか?」

 むしろこれまで自分が助かったと考えるより、余程ここの光景は、その死後の世界にふさわしいものでした。
 冥府の入口には川が流れているというし、上から垂れ下がる手の群れも、地獄の亡者というには相応でした。

「いいえ」

 後ろから声がしました。
 少女がいつの間にかこちらにやってきて、ふるふると首を横に振っています。それだけはないのだ、と強く主張するように。

「あなた、は、死んで、ない」

 少女はとぎれとぎれに言います。おそらくは、フォルテ君がさっきまで話していた言葉の中から、自分が使いたい言葉を繋げて。
 それはぎこちない言い方でしたが、それだけに必死さが伝わって、信用できるものに思えました。

「オレは、生きてるの?」

「はい」

 フォルテ君の言葉に、少女は力強く頷きます。
 それを見て、フォルテ君はホッと胸をなで下ろしました。
 それから弾かれたように顔を上げ、少女の方を見つめます。

「君たちは――」

 生きているの、と言いかけて、フォルテ君はそのまま続きを言えませんでした。
 少女はそれを見て、その淡い緑の瞳をふ、と緩ませて、困ったように笑い、首を横に振りました。
 フォルテ君はごめん、と俯いて答えます。すると、少女はフォルテ君の焦げ茶色の癖毛を優しく撫でました。
 頭に触れてくる感触は、雪と同じ冷たさをしていました。
 それは紛れもなく、少女の命が既にないものだということを、何よりも雄弁に語っていました。
 フォルテ君は自分の髪をなでるその手を、そっと握ります。

――小さな手だな。

 自分の荒れた手と比べ、そんなことを思いました。
 白くて、冷たくて、サラサラとして、本当に雪のように、気が付けば溶けてなくなっているのではないか、そんな儚さを感じさせます。
 それから老若男女の白い手の野原を見渡します。皺だらけの手、子供の手。
 爪に色をつけた綺麗な手、ゴツゴツと節くれだった強そうな手。一つとして同じ手はありません。
 そして、そのどれもが既に亡くなった人たちのその手なのです。

 谷に落ちて忘れられていった、その数。
 忘れられていった、その因果の数。

 自分もずっとここにいたら、あの腕のようになってしまうに違いない。
 なんとなく慄然とするものに背筋を震わせていると、手を握られたままの少女が、恥らうようにフォルテ君の手を見て、頬を染めまているのに気づきました。

「ご、ごめん!」

 慌てて手を引っ込めようとしたフォルテ君ですが、何故か彼女は手を離しません。

「どうしたの?」

 すがるような瞳が、だんだんに潤んでいきます。
 その口は、何かを言いかけて、結局言葉にはできないままに、少女は口をつぐんでしまいます。
 はっきりと感じる、既視感。
 そうだ、そうだった。あの子はいつも、こうしていた。
 フォルテ君の頭の中にいる少女も、いつもそうやって、何かを言いたそうにしては、結局言えないままに、悲しそうに口をつぐんでいたのです。
5分前 No.122 
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( 3907文字 / 獲得金貨 6枚 金貨 )
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――この子は、あの子なんだ。

 フォルテ君が忘れている誰か。忘れているまま、思い出せないでいる誰か。
 思い出さなくちゃいけない、ちゃんと思い出さなくちゃいけないんだ、とフォルテ君は自分の頭の中のページを猛然とまくり出しました。
 見つめる少女の淡い緑の瞳の奥から、フォルテ君のこれまでの記憶が溢れてくるようでした。
 フォルテ君はその目に魅入られるように自分の記憶を過去へ、過去へとさかのぼります。

 アンダンテさんと旅してきた町々、出会ってきた人々。通ってきた道々、祈ってきた旅路。アンダンテさんと出会ったあの焼け落ちた街。
 自分が追い剥ぎをしてきた燃えかすの荒野。アンダンテさんのバイオリンに手をかけたあの日。その前のこと――。

――思い出せない。思い出せない。

 フォルテ君の記憶の旅路は、そこから先に進むことができません。
 なぜ自分はあの廃墟にいたのか。どうして一人であそこにいたのか。何一つ、覚えていないのです。

 フォルテ君は、最初から母親の遺骨とともにあって、それを埋めてやりたいのにそれができないという思いだけ残ったまま、そこにいたのです。
 どうしてそこにいたのか、そもそも母親の遺骨と思っているけれど、本当はそれさえ確かなことではないのです。
 間違いなくこれはフォルテ君の母親の遺骨なのだ、という確信はありました。でもフォルテ君は、その母親の顔さえ、思い出せないのです。

――何だ、これは。

 フォルテ君は自らの記憶の欠落に愕然としました。フォルテ君は、実は自分が誰なのか、ということさえ分かっていないのです。
 分かっていないままに、ずっと旅を続けていました。そのことを疑問に思うことさえありませんでした。
 それがどれほど恐ろしいことか、フォルテ君はこの時初めて知りました。

――オレは、誰なんだ。どこで、どうやって生きてきた。

 フォルテ君はまた、記憶の海に意識を潜らせます。
 無意識のうちに、フォルテくんの足は、そばを流れるモルダウの流れへと向かって行きました。
 まるでその川の中に知りたい答えがあるかのように。

――やめて。

 後ろで少女が制止の声を上げます。でも、もうフォルテ君にはそれも届きません。
 フォルテ君は川の淵に立ち、その水面を覗き込みます。

――母さん。

 フォルテ君は、その水の底から抱きしめるようにフォルテ君に伸ばされる白い腕を幻視しました。
 そして、引き込まれるように、その川の中に身をゆだねてしまいます。

――目の前に広がっていたのは白い峰と丈の低い緑の草。その先端に咲く、白い小さな花。

 そして、その中に佇む、一軒の家。家の中では、お母さんがスープを火にかけて、子供の帰りを待っています。

――そうだ、ここだ。オレはここにいたんだ。母さんと一緒に、あの子と一緒に。

 白い花畑で、黒い波打つ髪を風に遊ばせて、少女は花の冠を編んでいます。その後ろから、少女を呼びます。

――お姉ちゃん。

 少女が振り返ります。その顔は、その顔は――。

 ゴボ、と音を立てて、フォルテ君の口から大きな空気の塊が吐き出され、代わりに入ってきた大量の水にむせ返る感覚に、フォルテ君はようやく我に返りました。
 気が付けば周りは、濁流の中です。自分は溺れているんだと認識するより先に、フォルテ君はがむしゃらに水を掻き出します。
 とにかく上へ、酸素のあるところへ。
 しかしそんな必死のフォルテ君を笑うかのように、水は大いなる力でフォルテ君をさらに深いところへ押し流そうとします。

――ダメだ、もう、息が。

 その時でした。

「やめて」

 水の中にいるフォルテ君の耳にも、はっきりとその声が届きました。
 フォルテ君だけではありません。おそらくフォルテ君を取り巻いている水にも、この川そのものにも、その声は届いたのです。
 まるで聖人がなす奇跡のように、その言葉とともに一斉に川の水はフォルテ君の周りから引いて、フォルテ君は水から解放されました。
 ふと辺りを見ると、川の流れが大きく割れて、フォルテ君と少女を結ぶ線の形に水が壁を造っています。
 少女は川の淵でフォルテ君に手を差し伸べました。
 フォルテ君は大慌てで川底を蹴って、その手を取って川からあがります。
 フォルテ君が川から上がると、水はまた元のように、裂け目を埋めて、流れ去っていきます。
 不思議なことに、フォルテ君の体は水が引いた瞬間に、全く濡れることなく、溺れてなどいないかのように乾いていました。
 それはきっと、この川が水の流れる川ではなく、過去の流れる川だからなのでしょう。水のように見えても、それは水ではないのです。

「はぁ、はぁ、ありがとう、お姉ちゃん」

 肩で息をしながら、フォルテ君は少女に言いました。
 少女はフォルテ君の目を一度見て、すぐに逸らします。
 傍らに赤毛の司祭が寄ってきました。

「見てはいけないといったはずだ。あの川の流れも、そしてエコーの瞳も、見入ってはいけない。君は生きている人間なのだから。過去に旅をしてはいけないのだ。いくら君とエコーが繋がっているとはいえ、君が今その事実を忘れているなら、それは忘れていなければならないこと。それを思い出すということは、エコーと同じものになるということだ。君にとっては、死に等しい。死にたいのか、君は」

「まさか! オレはただ、自分が忘れてることを、思い出したいだけです。自分が誰なのか、ちゃんと知りたいだけです」

「それが罪なのだよ。君が望んで忘れてしまったことを、君は再び望んで思い出そうとしている。思い出せば君はきっとまた忘れたいと思うに違いない。そうやって思い出しては忘れ、忘れては思い出す。そんな繰り返しのたびに、エコーはずっと、君を支えてやらなければならなくなる。それは死者に拷問を課すようなものだ」

「そんな、こと……」

 おそらく、その通りなのでしょう。フォルテ君は今、自分が忘れていることを思い出したいと思っています。
 しかし、なぜそのことを忘れてしまったのかといえば、きっとそれはフォルテ君がそのことを忘れたいと思ったからに違いないのです。
 あるいは忘れなければ辛すぎることだったのかもしれません。
 どちらにせよ、忘れたままでフォルテ君はこれまでずっと、旅を続けていたことに違いなく、それで困ったこともなかったのです。

 だとすれば、それはもしかしたら、本当に忘れていたほうがいいことなのかもしれません。
 思い出そうとすれば苦しみ、思い出してしまえばさらに苦しくなることかもしれません。
 フォルテ君は司祭の顔をうかがうと、司祭は目を伏せて、首を横に振りました。長い赤毛がさらりと揺れます。

「……ここにいる人たちの思いは、何処に向かうの?」

「どこにも向かわない。この川は永遠に川のままだ。海へも続いていないし、終わりがあるわけでもない。過去に始まりはあっても終わりは無い。過去の川は世界を二つに割って丸い世界を永遠に流れ続ける。ありとあらゆる過去は全て、この川へと流れ着き、そしてこの川に流れ着いたものは、ここからどこへも向かうことはない。どこかへ向かう必要もない。過去はただ過去としてそこにあれば良いのだ。それを憂うこともない。それなのに人は、しばしば過去に縛られたがる。本当はそんなものは現在と、そして未来になんの関わりもないことなのに。今の君のように、そしてエコーのように」

 司祭は少女をその赤銅の瞳で見つめました。少女はただ、元の静寂に戻った川を、その淵に立って眺めています。

「彼女にとっては君が。君にとっては彼女が。お互いを過去につなぎとめている。それは井戸の釣瓶のようだ。どちらか片方が上にあるためには、もう片方は過去のそこに沈んでいなければならない。エコーは君が未来にいるためにここにいたのだ。その君がここに来たということは、あるいはエコーが再び未来に戻る日がやってきたということかもしれない」

「それって……」

 それはフォルテ君が、この谷底でずっととどまり続けなければならないという意味ではないでしょうか。
 そしてその代わりに、少女がこの谷を出ていくという。
 フォルテ君を引換にして、彼女が掬い上げられる、そういう意味に聞こえました。

「ところで君は珍しいものを持っているね」

 司祭が顎をかきます。

「なかなか罪深い者と知り合いのようだ。恐れ多くもこの過去の川から、過去になったものをすくい上げようと試みる不届きな命綱だ。実に罪深い」

 それから自然な動きで、フォルテ君のポケットから封筒を抜きます。
 あまりの手際の良さに追いはぎをしていたフォルテ君でさえ、警戒すらできませんでした。
 それはアンダンテさんから預かっていた、遺書でした。
 取り返そうかと思いかけて、やめました。自分で読める自信がなかったのです。

 司祭は封筒を開き、中を見て一つ頷いて笑います。
 それは司祭が初めて見せた表情らしい表情でした。
 喜びや嬉しさなどから出る笑顔ではなく、ひたすら冷笑的で、どこか冷めて、呆れたような顔をしていました。

「おめでとう。君は嵌められている」

 司祭は中に入っていた紙の束をフォルテ君に差し出しました。
 入っていたのは数枚の白紙の五線譜と、短く言葉が添えられた一枚の紙。
 そこには確かにフォルテ君に読める文字で、言葉が書かれていました。

――すまない。

 余りにもわかりやすく、簡潔な一言。そして、その言葉の意味するところは、フォルテ君にもすぐに理解できました。
 アンダンテさんは、フォルテ君が谷底に落ちることを知っていたのです。いいえ、最初からフォルテ君を、落とすつもりだったのかもしれません。
 フォルテくんの耳に、吹きすさぶ冬の風の音がこだまします。

――いかないで。


とりあえず四パートを終わらせました。下書きが自動更新で消えてしまってお待たせしていてすみません。
さらにお待たせすることになりますが、これから五の冒頭に入ります。らくだ様にはもうしばらくお待ちいただければ幸いです。
№122 №123
»»  2015.02.28.


 一方でアンダンテさんたちは、既にリタルダンド渓谷を抜け、その先にある街にたどり着いていました。
 既に日はとっぷりと暮れ、夜になっていました。二人とも、崩落以降一言も口を聞いていませんでした。
 あえて話すこともなかったからです。
 馬車がなくなった以上その場にとどまっていることはできませんでしたし、アンダンテさんとプレスト君の二人だけで、フォルテ君を助け出すことは不可能だと、二人とも分かっていたのです。
 いいえ、これが二人だろうと、何人がかりだろうと、リタルダンドの底に落ちてしまったものを掬い上げることはできません。
 フォルテ君のことは、諦めるしかないのです。言葉にはしませんでしたが、少なくともプレスト君はそのことを確信していました。

 リタルダンド崩落の旨は既にこの街にも届いており、隧道復旧のための工作隊は明日にでも出発するようでした。
 しかし、アンダンテさんは彼らにも、自分の連れの子供が谷底に落ちたということを、伝えてはいませんでした。
 その二人がようやく口をきいたのは、その街のリタルダンド渓谷にほど近い宿屋、金の鶏亭の酒場の席でした。
 プレスト君は重い音を立てて酒瓶を乱暴に置きました。テーブルが揺れ、置かれたワインが杯から数滴こぼれます。
 プレスト君は卓を叩いて、目は鋭くアンダンテさんを睨みます。

「わざとだな?」

 アンダンテさんは素知らぬ顔でパイプを燻らせていました。何も語りません。

「坊主が落ちた時、お前どんな顔をした? 何て言った? 謝ったな? すまないだと? ふざけんな!」

「怒鳴るのじゃないよ、まあ君の馬車については悪いことをしたと思っているがね」

「馬車のことなんざどうでもいい! あの小僧はお前の許しのための、免罪譜を得るための道具じゃねえ! どういうつもりだ!」

 アンダンテさんは生気の欠片もない目で、ようやくプレスト君のそれと合わせます。

「この町にある『亡者の罪』と呼ばれる底なしの井戸を知っているかね?」

 プレスト君は眉根を寄せます。知らない名です。

「そもそも君は、リタルダンドの谷底がどういうものだか知っているかね」

「俺はあんたから地理の講義を受けるつもりはないぞ。回りくどい話より、目的をはっきりさせろ」

 プレスト君はハンチングの下で、その深紅の瞳を歪ませます。アンダンテさんはため息を一つつくと、目を伏せて話し始めました。

「いいから聞きたまえ。リタルダンドには、この世界のありとあらゆる過去が偏在している。今はもうなくなってしまった物、亡くなってしまった人、滅びてしまった街そのものが、あの谷底には一緒くたに同居しているのだ。しかし、だからといってリタルダンドから、過去になってしまったものを引きずり出すことなど、普通はできない。しかし、件の井戸は、それを可能にする。何かを引換に谷底に落とすことで、何かを過去の谷から引き戻すことができる。私はフォルテ君に、あるものをあそこから持ち帰って欲しいのだよ」

「あるもの?」

 プレスト君は怪訝そうに眉をひそめます。

「――免罪譜か? 確かに免罪譜は今や散逸して、現存しないとされている。なら、それがリタルダンドにあってもおかしくはない。そこからあの小僧にヴィヴァルディの免罪譜を探させるつもりなのか?」

「君がそう思うのならば、そういうことでも構わない」

「はぐらかすな。仮にあの谷底に免罪譜があるっていうのはいいが、それを小僧が見つけたとして、あいつはどうやってあの谷から帰ってくるんだ? 助けになんていけないんだぞ。いや、そもそも今生きてるかどうかすら、わからない」

「生きているさ」

 アンダンテさんは確信に満ちた言い方で言いました。プレスト君には、なぜそこまで自信を持てるのかは今ひとつわかりません。

「生きていて、今頃ヴィヴァルディに会っているだろう。そして、彼の方でもそろそろ私が預けたものを見て――まあ、悲嘆に暮れてはいるかもしれないね」

 遺書のことか、とプレスト君は尋ねます。アンダンテさんは髭をなでつつ、その通りと答えました。

「何を書いたんだ」

「懺悔だよ。フォルテ君が戻ってくるための舞台は既に整っている。あとは役者が立つだけだ」

 舞台、とプレスト君は憎々しげにアンダンテさんの言葉を繰り返します。

「その舞台が、この町の井戸ってことかよ」

「ご明察」

「亡者の罪だと?」

「そう。あとはフォルテ君が持って来てくれるのを待つばかりだ」

 アンダンテさんがそう言った瞬間、プレスト君は机の上に乗っていた酒瓶を横に殴りつけ、吹き飛ばしました。
 酒瓶はものすごい音を立てて壁にぶつかり、辺りに中身を撒き散らします。

「ふざけんじゃねえ!」

 プレスト君はアンダンテさんの襟首を掴んでそのまま立ち上がります。その赤い目はそのまま怒りの炎に染まっています。

「あんたは、自分が免罪譜を手に入れたいだけじゃねえか! そのために何も知らないあの小僧を、引き換えにするためにリタルダンドに落としたっていうのか! 自分の罪が許されるなら、そんな恥知らずな真似をしても、知ったこっちゃないってか! そんなの俺が許さねぇ! 許されるわけもない!」

「やめたまえよプレスト君、人が見ているじゃないか」

 アンダンテさんはその黒い瞳を歪めることもなく、涼しそうな顔で静かに言います。
 プレスト君は自分の怒りが濡れ手に粟だと知ると、悔しそうに吐き捨てて、アンダンテさんを離しました。

「俺はあんたのそういうところが大嫌いだ。自分がやっていることの罪深さを自覚していて、自覚していることで許されると思ってる。自分の罪の重さを知らないのはそれ自体が確かに罪だ。だが、あんたのしてることは、罪の重さを自覚しているからって許されることじゃない! いや、罪の重さを充分に分かっているなら、やめるべきなんだ。なのにあんたはいつだってその罪を犯す。許されないとわかっていながら」

「我ながら、不器用なことだと思うよ。許してくれともわかってくれとも言わないがね。口出しするなとは言わせてもらうよ。この話は私たちの話であって、君は巻き込まれた第三者に過ぎないのだからね。馬車の件といい、負債に巻き込んでしまってはいるが、それでも君に口を出す権利はないのだ。お金なら、あるだけ持っていくといい」

「冗談じゃねえ。あんたの顔は見たくねえが、あの小僧はせめて後一目見ておかないと、このままじゃ腹の虫が収まらねえ。せいぜい、あんたの舞台ってやつを幕切れまで見させてもらうぜ。陳腐な脚本だと笑ってやる」

 そう言ってプレスト君は席を立ちました。そのまま階段を登って二階の自室に戻っていきます。
 アンダンテさんはしばらく一人残って、ただ、机の上に灯るろうそくの火を、じっと眺めていました。

「――我ながら、不器用なことだと思うよ」

 プレスト君はそのままふて寝するように部屋の鍵をかけて、アンダンテさんが入りたくても入れないようにして、ベッドに潜ってしまいました。
 アンダンテさんはその晩部屋に戻ってくる気配はありませんでした。

 プレスト君の目が覚めたのは、深夜のことでした。こんな時間に目が覚めてしまうなんて、少しお酒を飲みすぎたのでしょうか。
 軽い頭痛がする頭を抱えて、プレスト君は厠へ行こうと、部屋を出ました。

 一階に降りると、流石に酒場も既にしまっており、明かりは全て落ちていました。
 しかし、その中のテーブルの一つに、カンテラが灯っています。プレスト君はそれを見て隠れるように階段の影に潜みました。
 そこはさっきアンダンテさんと一緒に飲んでいた席であり、そこに座っていたのはやはりアンダンテさんだったからです。

 そして、その席の前にはもう一人客人がいました。
 客人といっても、それは人間の形ではありませんでした。
 全身を覆うのは濡れ羽色の調った短い毛。その瞳は不思議な金色をしており、瞳はこの時間だというのに縦に裂けています。

「またお前は罪に走るのだね。アドルフ」

 相手は――黒い猫でした。猫がしゃべったのです。
 酒場の主人が見たら怒鳴って箒を持って追い払いそうな光景です。酒場の机の上に、猫が乗っているのですから。
 極めつけにその猫が人語を話すなど、普通の神経をしていたら到底耐えられません。

 しかし、ここに酒場の主人はおらず、今ここにアンダンテさんとあの黒猫がいる事を知っているのも、プレスト君だけでした。
 そして、プレスト君は数少ない猫がしゃべることがある事実を知っている人間でした。
 プレスト君は、息をこらえて、二人の会話に耳をすませます。

「いささか見境を無くしすぎているのじゃないかね。お前の望むものが、あの谷底にあるという保証はないのではないかね」

「ないね、だが、だからといって素通りしてしまうには魅力的な場所すぎる。世界きっての霊場には違いない。そうだろう、伯爵」

 アンダンテさんは、そう言って黒い猫の方を、同じ色をしたその瞳で見つめました。猫は試すような眼差しでその瞳を見つめ返します。

「リタルダンドかね。なるほど、世界の過去はあの谷にある。過去になったものたちも、古になった街も、かの谷底には溢れかえっているかもしれない。だが、だからといってそれが、お前の弟子をそこに落としていい理由になるのかね」

「もちろん、救い出すつもりではいるよ」

「つもり、ね。もちろんお前はそのつもりだろう。だが、お前のつもりの通りにいつも事態は動いたかね。いつだってお前は見込み違いをして、その度にお前の見込みを上回る現実を前に、償いきれない罪を追い続けてきたのではないかね」

 その言葉に、アンダンテさんは目を伏せ、傍らの窓の方に目をやりました。
 既に真っ暗の部屋の中では、映るのは鏡のようになった部屋の中の光景ばかりで、外の景色など少しも見えません。

「私を売った時もそうだ。お前はあの銀貨三十枚で、助けるつもりだったのではないのかね。お前の娘を」

 アンダンテさんは答えません。

「旅人を見つけて、密告せよ。密告者にはその旅人の階級に応じて、報奨金を出す――。教会は当時、私の首に銀貨三十枚という値札を掛けていた。そしてお前は金が必要だった。お前の娘を不治の病から治す薬を買うために。お前は自身も旅人であるにも関わらず、私を売った。それで、お前は娘を救えたのかね。答えたまえよアドルフ。私の不肖の弟子よ。師を、恩人を売って、その見返りにお前は、欲しいものを手に入れることができたかね」

 アンダンテさんは深いため息をついて、小さく言いました。

「娘は、助からなかったよ。病を恐れる村人に川に捨てられて、死体さえ残らなかった」

「そうだろうとも」

「だからこそ、私には免罪譜が必要なのだ。あの子の弔いをするためにも」

「あの子のためかね」

「そうだよ」

 アンダンテさんがそう言うと、伯爵はくつくつと喉を鳴らして笑いました。

「笑わせるのじゃないよ、アドルフ。あの子のためだって。そんなのは、あの子が生きているうちにやらなければ何の意味もない。あの子は死んで、その死体さえ失われた今になって、あの子のためだって?」

 アンダンテさんは、感情のこもらない瞳で、ただ笑う伯爵の姿を眺めています。

「お前の娘は、いつまでもお前のことを待っていたよ。病の床に伏せっても、お前が帰ってくるのを、お前がそばにいてくれる日を、いつだって待っていた。それなのにお前はあの子のために何をしてあげたと言うんだね。何もしていない。あの子が生きているうちに、お前はあの子の願いを一つだって聞いてあげたかね。あの子の望みを、一つだって叶えてやったかね。いいや、お前はあの子が何を願い、何を望んでいるか、知ろうともしなかった。あの子が黙って耐えているのをいいことに、お前は自分の旅人としての役目ばかりを追った。身勝手なほどに」

 アンダンテさんは、ただ項垂れるばかりです。
 プレスト君はその経緯を全く知らないわけでもありませんでした。
 プレスト君もアンダンテさんと同じ旅人の一派の一人でした。
 アンダンテさんの娘のことも、そしてアンダンテさんが伯爵を、プレスト君たちの師匠を教会に密告したことも知っていました。

「お前は、アドルフ、お前の娘のことを、愛してなどいなかったよ。お前はそんなことはないと言うだろうが、そんなのは関係ないんだ。お前があの子にどう接していたか。お前がリタルダンドの谷よりも深い愛情を持って、あの子を放置していたんだとしても、それは結局行いとして、子供を捨てる親と何ら変わりないよ。お前はあの子のことを見殺しにして、それで平然としていられたんだ。そして、死んだ今頃になって、あの子に報いようとしている。それは全然順番が違うよ。愛というのはね、生きている間に示さなければなんの意味もないものなのだ。死んだあとに、立派な墓を作ったところで、愛していたことの証明にはならんよ」

「そうかもしれない。いや、伯爵、あなたの言うとおりだろう。だが、私にはこんなことしかできない。これさえもできないとしたら、私にはなすべきことなど何もない」

 アンダンテさんがそう答えると、伯爵は冷淡にそうだとも、と言いました。

「そうだよ、アドルフ。お前にはするべきことなど、この世界に何もないのだ。だってお前は私に助けられたあの日に、本当は死んでいるべきだったのだからね。そのあとに続くお前の人生の道程は、言ってしまえば何もかも蛇足だ。するべきことではない。しなくてはならなかったことではない。お前がいなければ誰かが代わりにそれを務めただろうし、それが果たされなかったとしても、誰も困らなかっただろう。お前は死に損なった人間だからね。世界には、お前のために用意された領分なんかは少しもないのだよ」

「だから、旅を続けているのだ。居場所がないなら、人は旅をするしかない」

「旅? 迷子の間違いだろう。帰り道も忘れて、あてどなくさまよい続ける罪深い私のアドルフ。お前に帰り着く場所などありはしないよ」

 伯爵は立ち上がって、机の上で伸びをします。

「お休みアドルフ。お前には安らかな夜など訪れないよ。眠れぬ夜を幾夜も抱えて、険しい道を行くがいい。また会おう」

 そう言って伯爵はテーブルを降り、机の下の暗闇の中に紛れてしまいました。
 後にはただ、消沈した様子のアンダンテさんが、カンテラの火を見つめているばかりです。
 プレスト君は厠に行こうとしていたことも忘れて、嫌なものを見てしまったと思いつつ、部屋に戻ろうと階段を上がろうとしました。

「やあ、カルファゲーテ」

 階段の上の窓から差し込む、月明かりを浴びて、プレスト君の目の先の段に、黒い猫が座っていました。
 プレスト君はぎょっとして息を呑みます。

「そんな驚いた顔をするものじゃない。久しいね、お前の顔を見るのは。相変わらず泣きはらした子供と同じ色の目をしている」

 月の光の下でその黒い体に金の瞳を輝かせて、黒い猫はプレスト君の紅い瞳を覗き込みます。
 プレスト君は思わず目をそらします。そして、後ろの酒場にいるアンダンテさんを気にしました。
 それを見てとったのか、伯爵は、アドルフはしばらくはあそこに居るよ、と付け加えるように言いました。

「カルファゲーテなんて、捨てた名前だ」

「捨てたところで名は変わらぬよ。私にとってお前はカルファゲーテさ。盗み聞きとは、いかにもお前らしい姑息な真似だね」

「お褒めに預かり恐縮です。とでも言えば満足か、伯爵」

「お前に満たしてもらおうなどとは思っていないよ。お前もそうだろう?」

 何のことか、と問おうとして、プレスト君は口を噤みます。伯爵は喉を鳴らして笑います。

「アドルフの弟子のことだよ。お前には関わりのないことなのに、随分と気にかけるのだね」

「俺は子供にはそれなりに優しいんだ」

「子供だから、かね?」

「何が言いたい」

「また、見捨てるのかね。お前は」

 その言葉にプレスト君は背筋がぞわりと粟立つのを感じました。口が乾いて、唾を飲み込むことができないほどです。

「お前は見捨てて逃げることを、いつも選択肢の中に取っておく人間だからね。だからこそお前は傍観者たり得るのだし、それゆえにアドルフもお前をそばにいさせるのだ。アドルフはお前に彼と彼の弟子にまつわる物語の見物人になってもらおうとしているのだ。分かっているのだろう」

 それは、プレスト君自身、改めて意識するまでもなく、心に決めていることでした。
 あくまでアンダンテさんたちには深く関わらず、引き返せないところにたどり着く前に、自分は身を引く存在なのだと。
 そして、その範囲内において、アンダンテさんたちにまつわる物語を見届ける役を負わされているのだと。
 そのことは、わかっているはずでした。
 そして、今がその身を引く機会の一つであることも、ひしひしとわかっていました。

「見捨てるのかね。お前の恋人と友人の諍いを見捨てたように。ガブリエルとヴォルフガングを見捨てたように」

 ガブリエルはプレスト君の漆黒のギターの名前。ヴォルフガングはプレスト君の愛馬の名前。
 そしてその二つの名は、ともにプレスト君の忘れがたい大切な友人たちからとった名前でした。
 どちらも、今はもう死んでしまった人でした。
 その二人の死が、プレスト君が旅人となるきっかけになったのです。

「ガブリエルはヴォルフガングを愛していた。だが、ヴォルフガングはガブリエルがお前を愛していると思っていた。ヴォルフガングはお前の良き友人だったが、いつも、お前より劣っていると思いこんでいた。実際お前は優秀だったからね。男としても、馬乗りとしても」

「やめろ」

 プレスト君はかすれた声でいいます。しかし伯爵の言葉は止まりません。

「そして、お前自身、ガブリエルを愛していた。ガブリエルが誠心誠意愛してやまなかったのはヴォルフガングだったが、そんなことはお前たちには関係なかった。お前と、ヴォルフガングには」

 プレスト君の脳裏によぎるのは、金髪に空色の目をした天使のような女性でした。その彼女の、眠るような死に顔。

「お前たちは勝手な男たちだ。ガブリエルの気持ちなど考えもせず、どちらがガブリエルにふさわしいのかとくだらないことで争った。その果にヴォルフガングは狂気に憑かれた」

「やめろ!」

 プレスト君は怒鳴って階段の壁を殴りつけました。
 凄い音がしましたが、しかしそれでもアンダンテさんがやってくる気配も、宿の人が騒がしいと見に来る気配もありませんでした。

「ガブリエルの腹には子供がいた。もちろんヴォルフガングの子供だ。でも、ヴォルフガングはそれを信じられなかった。そしてお前は、ガブリエルの妊娠を知って、いわれのない因縁を付けられるかもしれないと思って、二人の前から姿をくらました。その結果、ヴォルフガングはお前がガブリエルを孕ませて、それで逃げたんだと完全に誤解し、ガブリエルを殺して、自らの命も絶った。お前が見捨てたから、二人とも死んでしまった。お前が逃げてしまったから、二人は殺し合わなければならなかった」

「もうやめてくれ……」

 頼む、とプレスト君は搾り出すように言います。
 それはプレスト君が心の墓に埋めてきた記憶でした。
 埋めても埋めても、何度でも土から出てきては、プレスト君の心を苦しめる、忌まわしい記憶でした。

「カルファゲーテ、見捨てる時を誤ってはいけないよ」

 伯爵の言葉にプレスト君はそちらを見ます。伯爵は月の光を浴びて、神々しいほどでした。

「ガブリエルとヴォルフガングの時、お前は二人の前から姿を消すのが遅すぎた。もっとずっと前でお前が身を引いていれば、二人の仲はそこまで深刻にならずに済んだのだ。あそこまでこじれてしまったら、もうお前は最後まで付き合うしかなかったのに、お前は最悪の時に身を引くことを選んでしまった。いいね、カルファゲーテ。今度は間違えてはいけないよ。お前はいつかこの劇を見捨てる時が来る。少なくともそのつもりでいるのだから、ならば身の引き時は、ちゃんと心得ていなければならない。くだらない思いに捕らわれて、ズルズルと居座ると、また悲劇を生むのだからね」

 それは、つまり、アンダンテさんたちを見限るなら、今だ、と言っているように聞こえました。

「わかってるよ、伯爵」

「そう、お前はいつだってわかってはいる。それなのに機を間違えてしまうのだ。お前は最速なのに、踏切だけはいつも遅い。それがお前の罪だ。心得ておきたまえ。お休み、カルファゲーテ」

 そう言って、伯爵は階段を下り、プレスト君の横を通り抜け、暗闇の中に消えて行きました。

 アンダンテさんは、やってくる気配を見せません。

 プレスト君は素知らぬ顔で部屋に戻り、夜が明けないうちに、愛馬のヴォルフガングを連れて、町を出ました。
 朝になって、アンダンテさんが部屋に戻ると、宿代の半分だけ置かれて、部屋は整理されていました。
 それを見てアンダンテさんは静かにベッドの脇に腰を下ろして、一つ息をつきます。

「それでいい、カルファゲーテ。君はそうするべきなのだ」

 これでまた、少し寂しくなるな、とアンダンテさんは思い、バカバカしいと、それを笑いました。
№126、127
»»  2015.03.10.
http://enkikaferoid.blog137.fc2.com/blog-entry-352.html

ようやく五まで完了です。見れない時は上のリンクを参照下さい。
さて、当初の予定とちょっと異なってプレスト君が一時離脱になりました。これは一応プレスト君側としては物語の終盤に戻ってきて馬車を用立てているという事情があったりもするわけなんですが、実際ここからの流れにはプレスト君の目線でなくてもいいというのもあったりします。そんなこんなで少々プロットも変わったりするわけですが、一応以下に変更版プロットを載せておきますので、六あたりから書き始めていただけると助かります。

六:フォルテくんはとりあえずは助けを待つことに。その傍らでアンダンテさんに託された遺書(アンダンテさんのメッセージ、すまないと白紙の五線譜の束)を見たヴィヴァルディは猛烈な勢いで五線譜に万年筆で作曲を始め、フォルテ君が何をしてるんですかと聞くと、君たちが欲しがるものだよとかって答えて、調和の霊感の楽譜を書き上げているとか。作曲家というのは度し難いものでね、こんなものは何にもならないとわかっていながら、白紙の五線譜を見せられると手が止まらない、とかって言ってひたすらに楽譜を綴ったり。その間にフォルテ君に調和の霊感(免罪譜)について、本当はこんなものを作るべきではなかったのだ、とかって言って、調和の霊感にまつわる自らの罪を懺悔するとか。いわく、調和の霊感が出来てしまったせいで、人はそれによる免罪を望むようになり、免罪譜さえあれば、どれほど罪深いことでも許されると考えるようになり、罪そのものの罪深さから目を背け、安易に手に入れられる許しを求めるようになってしまったとか。あまつさえその免罪譜が神格化され、それを手に入れるために、各地で騒乱の種にさえなったことも、やはり免罪譜を作った自分の罪だと懺悔するみたいな。で、それでも免罪譜を書くんですかとかってフォルテくんに言われて、ほかにできることがないとかって答えるとか。で、フォルテくんはその傍らでエーデルと一緒に助けを待っている間に、過去にもこんなことがあったようなことを思い出して、子供だった頃に、アッチェレランド病に苦しんで、それでもアンダンテさんに会いたいとなくエーデルを慰めながら、ここで待っていればもうすぐにアンダンテさん(アドルフ)が来ると言い聞かせて待っていたことを思い出したり。それで記憶に確かにエーデルの顔が残っているのにその名前が思い出せないでいながら、赤毛の司祭に君はやはりこの子を知っているようだねとか言われたりして。それで、待っていても助けは来ないよ、この奈落には生きているものは入れないのだからねとか言われて、待っていても仕方ない、と崖を登ろうとするんですが、すぐに崩れてダメで、そのうちにヴィヴァルディが楽譜を書き終わって、あとはこれを届けるだけだといって、そこから亡者の罪を目指して川をひたすら上流に目指して歩き出すみたいな。

とりあえず六のプロットを少し改変しました。これを下に六の執筆をお願いしたいのですが。
№128
»»  2015.03.18.
No.29の内容です。

名前:シオン・テトラ
性別:男
年齢:十二歳
国籍:
種族:人間
容姿:伸びきっていない茶色い髪の毛を後ろ側結べるだけ集めて中途半端な長さで結んでいる(カイに憧れて真似をしている)。目の色は薄い青。子供っぽいあどけない顔立ちで感情豊富。背はこの年の子供の中でも低い方(140センチくらい。成人男性170平均みたいな)。体つきも貧相で痩せていて筋肉もあまりない。
社会的地位:平民(不明、奴隷でないのは確かだとは思います)
性格:泣き虫だが我慢強い。というより、大抵のことは我慢しようとこらえているが、いつもこらえきれずに涙が出てしまう。泣くものの文句を言ったり八つ当たりはせずに、歯を食いしばりながら泣きつつ我慢する感じ。罵倒少女の罵倒も耐え切れずにすぐ泣いてしまうが基本言い返すことはできない。泣き虫だが、感情表現は豊富で驚いたり笑ったり、やや年齢よりも幼い感じで怒りや悲しみなどマイナス方向ではない感情は素直に表現する。また嘘や隠し事が非常に下手くそで、仕草にすぐ出るタイプ(目が泳ぐ、唇を噛む等)。カイのことを実の兄のように慕っていて真似をしたがる。
癖:砂いじり(暇なときなど、すぐに座り込んで砂に絵を描いたり砂粒を拾い集めたりする)
ポリシー:泣かない男になる(肉体的な苦痛より悪口を言われたり心理的苦痛があるとすぐに泣いてしまう)
長所:粘り強い性格。諦めないしぶとさ。
短所:精神的幼さ。純粋で馬鹿なところ。考えの浅さ。恐怖や緊張に対する弱さ。
知性:知的好奇心は豊富。ただし発想は別に豊富でもない。頭の回転がいい方でもない。この世界には珍しくなく字の読み書きはできない。計算は指で九九が処理できる程度。記憶力はいい方(一度言われたことがいいことにせよ悪いことにせよずっと覚えて引きずっていたりする)
健康:すこぶる健康。ただし体力はない方。旅に支障はないが肉体的な強さはない。
趣味:戦士ごっこ。魔法使いごっこ。科学者ごっこ。砂に絵を描く。大人の話を聞く。歌を歌う(文字文明が滅びてしまったこの世界では過去のことは歌にして語り継がれているとか。で、シオンはそういう歌が割と上手くてたくさん知っているみたいな)
特技:歌。物まね(よく人の言い方とか仕草をふざけて真似する)
トラウマ:幼い頃に両親が死んでおり、カイの家で育てられた。実の親には虐待されていたりして(食事を与えない、面倒を見ない、罵倒を浴びせる等。肉体的な虐待より心理的虐待及びネグレクト(育児放棄)の虐待が多かった)、無視されたり、悪口を言われると普通以上に傷ついて泣き出す。ただし正常な判断力は備えているので大声で泣き喚いたり、駄々をこねたりはしない。本人にもどうしようもなく涙が溢れてしまう。
家族:両親とも死別。現在はカイの家(ベルナクス家)で、カイの弟みたいな立場で育てられている。ベルナクス家の人々は基本シオンにも好意的。
武器:短剣。
魔法:蘇生‐死んだものを一度だけなら生き返らせることができる魔法。肉体が生前の姿で残っていないと発動できない(死体が失われている人を生き返らせたりはできない)(本人は自分にこの魔法があることを知らない)
好きなもの:カイ、ベルナクス家の人たち。パーティのメンバー。歌。絵。戦士。英雄の伝説。暖かくて緑が豊かな場所。
嫌いなもの:泣く人(自分を含め)。無視。寒くて乾いた場所。ご飯抜き。病気。悪口。

名前:カイ・ベルナクス
性別:男
年齢:17歳
国籍:
種族:人間
容姿:170センチくらい。中肉中背の割と筋骨がしっかりしたがっしりした青年。肩までの黒い髪の毛を前髪は残し後ろで一括りにしている。目の色は薄い茶色で、眉毛が凛々しい。頬に切り傷の跡が有り、体には戦士の修行で付けられた生傷が多い。肌はやや日に焼けていて浅黒い。
社会的地位:平民(未定)
性格:明るくあっけらかんとした性格。深く物事を考えたりするのは苦手で大切なのは悩むよりも実践することだと思っている。考えるより先に体を動かすタイプ。力は弱いものが強いものに挑むのは許されるが強いものが弱いものに対し力を振るうのは暴力だと考えていて、自分より弱いと思っている相手に力に訴えることは基本的にしない(女は殴らない、子供は殴らない等等。罵倒少女もあまりの口の悪さに殴りそうになって思わず自制するシーンとか欲しいと思ったり)。嘘や隠し事が苦手。
癖:石ころを手の中で握る(握力の鍛錬)(くるみは素手で割る程度の握力)
ポリシー:思い立ったが吉日。習うより慣れろ、案ずるより産むが易し。とにかく考えるよりひとつでも多くやる主義。女子供は殴らない。暴力をふるっていいのは自分より強い相手だけ。
長所:戦士としての強さ(シオンたちの村でも割と強い方みたいな)。おおらかで優しい性格。
短所:とにもかくにも思いつきから行動まで障害がないので、考えなしにやったことが大惨事を招くことを予期できなかったりする。
知性:読み書き計算はできない(特に計算は九九ができないのでシオンより下)。ただ直感力はあり勘は鋭く、本能的に正解にたどり着いたりする。
健康:すこぶる健康。肉体的にも非常に強い。持病とかもない。
趣味:剣の練習。戦士としての鍛錬。畑仕事。
特技:剣技。投げナイフ。弓。散髪(シオンや自分のを含め、自分のきょうだいたちの髪の毛を切る)
トラウマ:ベルナクス家の長男でこれまでに弟や妹を数人失っている。旅の途中で腐村の村に立ち寄ったりして子どもが死んでいるとやりきれない気持ちになる。また弱い者への暴力を禁じているが、これに反してつい感情に任せて暴力をふるってしまったりすると自己嫌悪に駆られる。
家族:父、母、祖母、下に弟妹が複数(三人くらいでしょうか)、シオン(居候)
武器:長剣。投げナイフ。あれば弓。また落とし穴をほったり罠を仕掛けたりもする。
魔法:肉体活性‐もともと身体的に優れているが精霊の加護によって家一階分ジャンプしたり、馬と同じくらいの速さで走ったりできる。活性させる内容によって柔軟性を上げたり持久力を上げたりできる。また感覚を鋭敏化させることで視力を上げたり聴力を上げたりできる。
好きなもの:ご馳走。子供。年頃の女性。戦士の師匠。家族。過去の英雄。
嫌いなもの:空腹。自分の弱さ。口の悪い人物。言うだけで何もしない人物。努力しない人物。根性なし。嘘つき。

というわけでシオンとカイを作ってみました。
人物像についてはとりわけ特殊な感じをイメージしているわけではなさそうなので平均的な感じにしました(日本人基準)。
単位についてですが、一応メートル法における一メートルというのは地球の大きさ(地球の円周)の四万分の一というのが最初期の定義なので、名称を置き換えるにせよ何にせよ、異世界が地球でない以上は基本的に代わりの単位を考えないといけないわけですが、だからって世界の大きさの何万分の一かが地球上の一メートルとほぼ同じ、みたいなのは強引なわけで。というわけで参照して欲しいのが人間の体の部位の大きさが基準単位になっている世界です。ヤード・ポンド法とか尺貫法とかも元はそのへんなんですがこういうのを身体尺というのですが、例えば一フィートはおよそ30センチですが、これは欧米人にとって足ひとつ分の大きさがこれくらいだったことに由来します。そうやって考えていくと、一年の日数も365日はおかしいですし、一日が二十四時間で一時間が六十分に分かれる根拠もなかったりするんですが、このへんはおいおい考えていくということで(例えばですが、聖石が隕石として過去に飛来して、生命の泉を吸い尽くしてからした世界の中に地球があったりして、そこから知識が輸入されたとか考えようと思えばそれらしい理由はあるのですが)。

聖石の解釈は多分そんな感じで合っていると思います。で、移動手段ですが、基本的には寄生というより、その世界の知性を持つ生物の思考を誘導して、時が来たら自分たちを宇宙に発射させる装置を作らせる、みたいな感じでいいと思ったり。で、この世界でそのために選ばれたのがノアみたいな。

で、精霊はこの世界の生命の泉を守護する存在とかでいいんじゃないかと思ったり。だから聖石がこの世界に来る前からこの世界に存在していて、原始的な生命を育んでいたとか(深い海に満たされた世界でそこで嫌気性の原子生命を育んでいたとか)。そこに聖石の飛来があって、生命に知性が与えられ急速な進化が促されて(酸素の供給による生命の進化、陸上進出)、その結果強い意志を持つ知性体を生み出すことになったので、その点では精霊は聖石に好意的なんですが、それはあくまで聖石の目的がこの世界から生命の泉を搾り取ることだと知らないからみたいな。そのことが判明すると主人公たちと聖石VS生命の泉を守る精霊たちみたいな構図になってきて、聖石側が言うことを聞かないと聖石による酸素の供給を中断するとか脅しをかけてきて主人公たちは脅される人々と精霊の意志との間で板挟みみたいな。もともと酸素の供給は聖石と生命の泉が反応することでしか得られないわけで、かと言って聖石の言うとおりにしていては世界ごと枯らされてしまうわけで。そのへんは物語の落としどころとして神人たちのやることが鍵でしょうかね。

そんなこんなでまたもやいろいろ提案させていただきました。行き違い等々ありましたらご了承ください。

No.34の内容です。

私もらくだ様と同じようなイメージでした。
で、世界のどこかに超巨大な聖石の本体があって、それぞれの町にあるのはその破片みたいな。

そして巡礼に持っていく巡礼石は、街の聖石から切り出した小さな持ち運びできるサイズのものみたいなイメージだったんですが、現在聖石が生物説があるので、一旦分離して、巡礼者が戻ってきたあと巡礼石を元の聖石にくっつけておくとそのまま吸収して元の一つの聖石になるみたいな性質があってもいいかなと思ったり。で、現在隕石説があって、かつて隕石としてこの舞台となる世界に飛来した岩石生命体が聖石みたいな提案があって、その聖石はこの世界から湧き出す生命の泉を糧として生きる生命体で、この世界から生命の泉を奪い尽くして、再び別の世界へと宇宙を旅して、次々に世界を枯らしていく世界に規制する生物みたいなことを提案しているんですが、それに則っていくと、世界に衝突した際と、一度この世界から飛び立とうとして失敗した時(バベルの塔崩壊時)の二度のショックで世界中に飛散した自分の破片たちを元の一つの個体に戻そうとしていて、各地でこの村にある聖石が強奪されるという事件が相次いでいるとか。で、この聖石泥棒たちを裏で操っているのが、聖石に魅入られて、聖石がこの世界から生命の泉を搾り取って宇宙へと離脱するのを手伝う人間の一族であるノアの一族とか。

で、現在宇宙からやってきた聖石と、この星に本来いる精霊で対立構造みたいのが出来てますけど、そうすると神人はどこのポジションに当たるのかなと思ったり。人類消滅側、かつ神の使者ですからどう考えても聖石側なんですが、だとするとノアのことを知らないのはおかしいんですよね。

というわけで、神人はあくまで聖石の意志によって生み出される存在で、人類の滅亡(聖石のこの世界からの離陸)を推進している側でいいと思うんですが、ノアがその想定を超えて裏で画策しているという構図にしてみようと思ったり。つまり、ノアの目的は聖石がこの世界から離脱することではなくて、もっと裏をかいてこの聖石の力を自分たちの一族のためだけに利用しようとしているみたいな陰謀とか。

具体的に言うなら、聖石の意思(あくまでも隕石説前提で話してますけど)では、この世界にある生命の泉をすべて絞り尽くして、各地に飛散した生きている聖石をすべて原石に吸収して、宇宙飛行中の聖石を守る存在としてノアの一族も従えて、神人も連れて、この世界を放棄し、新しい生命の泉が溢れる世界へと飛び立とうとしているわけですが、ノアの目的はもっと利己的なもので、聖石を利用しようと思っているとか。

つまり、ノアは、聖石が離陸するための計画に協力しているように見えて、実際にはその計画を意図的に遅延させていて、目的は自分の一族以外の人類を滅ぼし、滅んだ後の世界で自分の一族が反映することで、聖石が目指す別の世界とかに付き合う気は毛頭なくて、ただ、聖石の力と生命の泉の量からして、全ての人類がこの世界のとどまることはできないと考えていて、そのために人類を自分の一族だけにする必要があったとか。で、そうして人類を減らした上で、聖石はこの世界から旅立たせず、ノアの一族のためにその力を使っていればいいみたいな策略があって、もっぱらそのために行動しているとか。

で、聖石は計画通りに神人を使って人類滅亡の合議を開くわけですがそこにノアの一族の企みを気取った新人の一人が怪しく思って罵倒少女を使って自体の真実を明らかにしようとしているとか。

で、だとすると、結局は最終的にはみんな共存みたいなところに落としたいわけですが、そうすると生命の泉が枯渇しないみたいな設定がいるわけですが、そこにシオンの再生の力を持つ精霊の存在が大きく関わってくるとか。つまり、最終的にこの精霊がこの世界に働きかけることで、生命の泉を再生し続けるみたいなことになって聖石と精霊は共存を選択し、結果としてノアの陰謀であるこの世界から聖石を飛び立たせず、ノアの一族も滅びない(かつほかの人類も生き残る)が達成されつつも万事めでたしめでたしになるみたいな。そんな感じのを思いついたりしました。

というわけでブルーツ・リー様よろしくお願いします。フィルタかかってるみたいですけどこの投稿は見れますでしょうか。
フィルタかかってる投稿のナンバーを教えていただいたらその投稿が見れるように私のブログの方に内容を載せたりするんですが。
アカウント取得していただくのが一番手っ取り早いんですけれどもね。らくだ様も初期の頃アカウントなくてフィルタ対策にいろいろした頃のことを思い出します。何はともあれよろしくお願いします。
らくだ様合作のフィルタ分
»»  2016.03.04.
トリミング・シオン
名前:シオン・テトラ
性別:男
年齢:十二歳
国籍:
種族:人間
容姿:伸びきっていない茶色い髪の毛を後ろ側結べるだけ集めて中途半端な長さで結んでいる(カイに憧れて真似をしている)。目の色は薄い青。子供っぽいあどけない顔立ちで感情豊富。背はこの年の子供の中でも低い方(140センチくらい。成人男性170平均みたいな)。体つきも貧相で痩せていて筋肉もあまりない。
社会的地位:平民(不明、奴隷でないのは確かだとは思います)
性格:泣き虫だが我慢強い。というより、大抵のことは我慢しようとこらえているが、いつもこらえきれずに涙が出てしまう。泣くものの文句を言ったり八つ当たりはせずに、歯を食いしばりながら泣きつつ我慢する感じ。罵倒少女の罵倒も耐え切れずにすぐ泣いてしまうが基本言い返すことはできない。泣き虫だが、感情表現は豊富で驚いたり笑ったり、やや年齢よりも幼い感じで怒りや悲しみなどマイナス方向ではない感情は素直に表現する。また嘘や隠し事が非常に下手くそで、仕草にすぐ出るタイプ(目が泳ぐ、唇を噛む等)。カイのことを実の兄のように慕っていて真似をしたがる。
癖:砂いじり(暇なときなど、すぐに座り込んで砂に絵を描いたり砂粒を拾い集めたりする)
ポリシー:泣かない男になる(肉体的な苦痛より悪口を言われたり心理的苦痛があるとすぐに泣いてしまう)
長所:粘り強い性格。諦めないしぶとさ。
短所:精神的幼さ。純粋で馬鹿なところ。考えの浅さ。恐怖や緊張に対する弱さ。
知性:知的好奇心は豊富。ただし発想は別に豊富でもない。頭の回転がいい方でもない。この世界には珍しくなく字の読み書きはできない。計算は指で九九が処理できる程度。記憶力はいい方(一度言われたことがいいことにせよ悪いことにせよずっと覚えて引きずっていたりする)
健康:すこぶる健康。ただし体力はない方。旅に支障はないが肉体的な強さはない。
趣味:戦士ごっこ。魔法使いごっこ。科学者ごっこ。砂に絵を描く。大人の話を聞く。歌を歌う(文字文明が滅びてしまったこの世界では過去のことは歌にして語り継がれているとか。で、シオンはそういう歌が割と上手くてたくさん知っているみたいな)
特技:歌。物まね(よく人の言い方とか仕草をふざけて真似する)
トラウマ:幼い頃に両親が死んでおり、カイの家で育てられた。実の親には虐待されていたりして(食事を与えない、面倒を見ない、罵倒を浴びせる等。肉体的な虐待より心理的虐待及びネグレクト(育児放棄)の虐待が多かった)、無視されたり、悪口を言われると普通以上に傷ついて泣き出す。ただし正常な判断力は備えているので大声で泣き喚いたり、駄々をこねたりはしない。本人にもどうしようもなく涙が溢れてしまう。
家族:両親とも死別。現在はカイの家(ベルナクス家)で、カイの弟みたいな立場で育てられている。ベルナクス家の人々は基本シオンにも好意的。
武器:短剣。
魔法:蘇生‐死んだものを一度だけなら生き返らせることができる魔法。肉体が生前の姿で残っていないと発動できない(死体が失われている人を生き返らせたりはできない)(本人は自分にこの魔法があることを知らない)
好きなもの:カイ、ベルナクス家の人たち。パーティのメンバー。歌。絵。戦士。英雄の伝説。暖かくて緑が豊かな場所。
嫌いなもの:泣く人(自分を含め)。無視。寒くて乾いた場所。ご飯抜き。病気。悪口。
シオン・テトラ
»»  2016.03.09.
トリミング・カイ
名前:カイ・ベルナクス
性別:男
年齢:17歳
国籍:
種族:人間
容姿:170センチくらい。中肉中背の割と筋骨がしっかりしたがっしりした青年。肩までの黒い髪の毛を前髪は残し後ろで一括りにしている。目の色は薄い茶色で、眉毛が凛々しい。頬に切り傷の跡が有り、体には戦士の修行で付けられた生傷が多い。肌はやや日に焼けていて浅黒い。
社会的地位:平民(未定)
性格:明るくあっけらかんとした性格。深く物事を考えたりするのは苦手で大切なのは悩むよりも実践することだと思っている。考えるより先に体を動かすタイプ。力は弱いものが強いものに挑むのは許されるが強いものが弱いものに対し力を振るうのは暴力だと考えていて、自分より弱いと思っている相手に力に訴えることは基本的にしない(女は殴らない、子供は殴らない等等。罵倒少女もあまりの口の悪さに殴りそうになって思わず自制するシーンとか欲しいと思ったり)。嘘や隠し事が苦手。
癖:石ころを手の中で握る(握力の鍛錬)(くるみは素手で割る程度の握力)
ポリシー:思い立ったが吉日。習うより慣れろ、案ずるより産むが易し。とにかく考えるよりひとつでも多くやる主義。女子供は殴らない。暴力をふるっていいのは自分より強い相手だけ。
長所:戦士としての強さ(シオンたちの村でも割と強い方みたいな)。おおらかで優しい性格。
短所:とにもかくにも思いつきから行動まで障害がないので、考えなしにやったことが大惨事を招くことを予期できなかったりする。
知性:読み書き計算はできない(特に計算は九九ができないのでシオンより下)。ただ直感力はあり勘は鋭く、本能的に正解にたどり着いたりする。
健康:すこぶる健康。肉体的にも非常に強い。持病とかもない。
趣味:剣の練習。戦士としての鍛錬。畑仕事。
特技:剣技。投げナイフ。弓。散髪(シオンや自分のを含め、自分のきょうだいたちの髪の毛を切る)
トラウマ:ベルナクス家の長男でこれまでに弟や妹を数人失っている。旅の途中で腐村の村に立ち寄ったりして子どもが死んでいるとやりきれない気持ちになる。また弱い者への暴力を禁じているが、これに反してつい感情に任せて暴力をふるってしまったりすると自己嫌悪に駆られる。
家族:父、母、祖母、下に弟妹が複数(三人くらいでしょうか)、シオン(居候)
武器:長剣。投げナイフ。あれば弓。また落とし穴をほったり罠を仕掛けたりもする。
魔法:肉体活性‐もともと身体的に優れているが精霊の加護によって家一階分ジャンプしたり、馬と同じくらいの速さで走ったりできる。活性させる内容によって柔軟性を上げたり持久力を上げたりできる。また感覚を鋭敏化させることで視力を上げたり聴力を上げたりできる。
好きなもの:ご馳走。子供。年頃の女性。戦士の師匠。家族。過去の英雄。
嫌いなもの:空腹。自分の弱さ。口の悪い人物。言うだけで何もしない人物。努力しない人物。根性なし。嘘つき。
カイ・ベルナクス
»»  2016.03.09.
ピルグリム世界

スメタナ大陸:西にある大陸。教会の総本山。

ドヴォルザーク大陸:別名新大陸。ピルグリムの信仰が残っている。教会の迫害を逃れたピルグリムが行く場所でもある。

クレッシェンド山:五百年前に海底から隆起した火山島。現在は噴火はないが、しばしば地震が起こる。

川:スメタナ大陸の中心にある湖から、東に向かって流れる川と、ドヴォルザーク大陸の中心にある湖から西に向かって流れる川が、クレッシェンド山を深くえぐって深い谷間を作り、火口部付近でついに滝となって混じり合っており、そこからクレッシェンド山を真っ二つに侵食して、断崖を作っており、この渓谷をリタルダンド渓谷とよぶ。北の一角でかろうじてつながっており、そこにトンネルが掘られて、行き来できるようになっている(忘却の子守唄編)。

とりあえず整合性だけはとってみました。余計に分からなくなったとかあったら申し訳ないです。
ピルグリム世界
»»  2016.10.02.

大幅に遅れてじゃじゃじゃじゃーんです。申し訳ありません。働きながら長編執筆するの結構厳しいものがあります。

ちょっとプロフィールもいじりますね。

ゲストヒロイン
(一応一話につき毎回こういうゲストヒロインがいます)
(一話のときはフィーネちゃんがそのポジションでした)
(次の話ではフォルテ君の母、ピエタがそのポジションになる予定です)

名前:エーデル
年齢:享年12歳(フォルテ君5歳のころ)。以後をリタルダンド渓谷の谷底で幽霊として過ごしており、フォルテ君がエーデルの死を忘れ、お姉ちゃんというイメージを持っているために、フォルテ君から見て少し大人びた15歳程度の少女の姿になっている。
性別:女
性格:純真無垢で素直な泣き虫。アッチェレランド病を発症し、繰り返す発作の中で、いつも父親であるアドルフ(アンダンテさん)に会いたいと泣いていた。自分の気持ちを伝えるのが苦手で、すぐにだんまりを決め込んで泣いてしまう。リタルダンドの幽霊と化してからは名前を奪われエコー(こだま)と呼ばれる存在になっており、相手が言った言葉の中から自分の言いたい言葉を繰り返すことしかできない(思考能力は普通にあるし、しゃべる以外の意思伝達は行える)。
容姿:母親ゆずりの黒い巻き毛をふんわりと結び後ろで一括りにしている。白い肌。目は父方の祖母と同じく、くすんだ緑。背はややフォルテ君より高く、フォルテ君がお姉さんと思える程度には体つきは少し発達している。
背景:霊感が強く、死者と話せる。アドルフ(アンダンテさん)の娘でありメトロノーム伯爵の一派にあっては幼子のフォルテ君と年が近く本当の兄弟のように仲よくしていた。母親の死因であるアッチェレランド病を発症し、それが原因で死んでしまう。アドルフはその治療薬を求めるための金を用意するために伯爵を売りエーデルを助けようとしたが、アドルフが駆けつけた時におりしもフォルテ君がエーデルを連れ出し、アドルフに会いに行こうとしている道中で遭難し、そこで発作を起こして死んでしまって途方に暮れているところを近隣の村人に見つかり保護されるも、アッチェレランド病を恐れる村人にエーデルの遺骸は川に打ち捨てられてしまい、アドルフは彼女の死を確かめることもできなかった。
エーデルの死体は川を流れてリタルダンドの底を流れるモルダウ河にたどり着いており、そこで停留した結果、リタルダンド渓谷にエコー(エーデル)として顕現した。同じく人に忘れ去られて過去に停留している赤毛の司祭とともに、リタルダンド渓谷の番人を務めている。

赤毛の司祭
名前:アントニオ・ヴィヴァルディ
年齢:見た目アンダンテさんと同じくらいの中年
性別:男
性格:哲学者のような感じで、言っていることはあまりに観念的すぎてよくわからないことが多い。一の質問に対して十くらいの思索を並べ立てて、全然関係ないことをたくさん言って相手が辟易した辺りで相手が目当ての答えが返って来たりする。免罪譜の原本を全て所有しており、持っているヴァイオリンで譜面が無くとも奏でることができる。生死間についてももうすでに死んでから百年近く経っているために非常に達観している。リタルダンドに留まっていることについては、免罪譜を求めるものがいる限り、自分はこの谷底から出ることを許されないと悟っている。
容姿:炎と見まごうほどの深紅の巻毛をふんわりと後ろで一括りにして、それを肩に流している(エーデルと同じ髪型)(というよりエーデルの髪をヴィヴァルディが結ってあげている感じ)。目の色はとび色で天使のような微笑を浮かべている割と美男。どこか遠い目をしている。
背景:百年前に『調和の霊感』という免罪譜と呼ばれる楽譜による免罪符を発行し、それを演奏した人はもちろん、聞いた人間の罪さえ許されるという救いの音楽を作り上げた。免罪譜は既に散逸しており、教会はその保護を呼び掛けているが、現存するものはないと言われている。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3 モチーフはこの人なので詳しいことはこの辺を見てください。あまり詳しく余生に言及する人でもないのでふんわりとこんな人がいたのねというニュアンスで結構です。

メイン

フォルテ君
名前:クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(本名フォルクローレ・ディ・メルツェル)(メトロノーム伯爵の名字もメルツェルです。その息子です)
年齢:およそ12歳前後(本人が幼少期にいろいろありすぎて誕生日その他諸々を覚えていないため)
性別:男
性格:天真爛漫、純真無垢、誰かが泣いているのを見過ごせない正義感のある少年(その割にヴェクサシオン時代には生きていくために追いはぎをやっていた過去もある)。とにかく元気。十二歳前後だがまともな教育を受けていないため、文盲であり、字はようやく名前が書ける程度。計算も苦手で足し算引き算も繰り上がりがあると指を使う。掛け算割り算はわからない。また、幼少期の過酷な経験(エーデル関係、ピエタ関係)などから、自分の過去についてよく覚えていないが、あまりそういうことを深く考えたこともなかった。今はアンダンテさんとともに旅人として世界を巡ることだけを考えている。旅人になりたいかどうかはよくわかっていない。
容姿:日焼けした褐色の肌、コーヒー色の茶色の強い髪の毛、やや癖毛で外に跳ねる。目の色は明るい緑色。服装はぶかぶかの大人用のワイシャツを袖まくりしてきており、擦り切れてつるつるになった半ズボンをサスペンダーで留めている。上から黄色いフードつきのマントを着ている。
背景:メトロノーム一門の首魁である、メトロノーム伯爵、メルツェルの長男として生まれるも、最後の弟子アドルフの密告によりメルツェルは処刑され、一門もピエタの開いた晩餐会により、アドルフ、プレストを残し全員が死亡している。その後ピエタが館を燃やした火事が延焼して町全体を覆いこみ、廃墟となったウィーンの街はヴェクサシオンと呼ばれるスラムになり、以後そこで追いはぎをしながら通りかかる人の荷物を持つ振りをしてそれを盗んでは生計を立てていた。そんな折にアンダンテさんがそこを通りがかりヴァイオリンを盗んだことで警邏に捕まり捕縛されるも、アンダンテさんがそのヴァイオリンは彼にあげたもので、彼は私の弟子なんですよ、みたいなことを言ってフォルテ君を救う。以後そのままなあなあで旅人の弟子としてアンダンテさんと共に旅をしている。

アンダンテさん
名前:アドルフ・アイヒマン(アンダンテは旅人としての名前)
年齢:不詳(エーデルくらいの年の娘がいる程度には中年)
性別:男
性格:自称紳士であり、女性と見れば見境なく挨拶のように口説く(曰く紳士のたしなみ)。独特のユーモアと多彩な知識を持っていて、旅人でありながらも、上流階級の人間(この前のブラームス家の人々なんかもそうです)とも社交できる教養をもつ。昔の職業は医者であり、特に外科的な処置については詳しい。また自らが犯した罪をすすぐためには免罪譜を手に入れるしかないとかたくなに信じている節があり、そのためならやや非道な手段や結果がどうなるかとか考えずに行動してしまう困った面もある。人使いは結構荒い。実際過去に犯してきた罪については堪えがたい懊悩を感じており、それを思い出すために、夜な夜なランプに火をつけて伯爵を呼び出している。
容姿:血色のない白い肌に黒い髪をひっつめにして後ろで一括りにしている。何といっても口髭がトレードマーク。目の色は黒。話していても相手と目を合わせることは少なく、特にフォルテ君の方を見て何か言うことは少ない(客として接する相手はちゃんと目を合わせる)。襟を立てて上からスカーフできつく巻いており、自殺した際に残る首の縄の痕を誰にも見られないようにしている。
背景:アッチェレランド病を発症した妻を救えなかった苦しみから、娘さえ放り出して自殺しようとしたところをメルツェル伯爵(メトロノーム伯爵)に救われ、メトロノーム一門に入門した最後の弟子。外科医としての能力を生かし、死者の遺体を整えるエンバーミングを行うことができ、悲惨な死に肩に納得できない人たちの最期を見送る旅人。その後娘のエーデルもアッチェレランド病を発症し、治療法を探している所を詐欺師に付け込まれ、銀貨三十で薬を売ってやると言われ、その銀貨三十を用意するために伯爵を教会に密告し、その褒賞金で薬を買おうとした。結果伯爵は当時盛んだった旅人の異端審問により処刑され、エーデルもフォルテ君の色々で助からなかった。失意に暮れる一門を何とか立て直そうと伯爵の妻であったピエタはアドルフとともに隠遁生活を送るも、やがて罪に耐えきれず事情をピエタに告白すると、ピエタは絶望し、一門全員と晩餐会を開き、そこで毒入りのぶどう酒を配って一門とともに自らも死のうとした。アドルフとプレストだけ助かるも、その後に起こした火事によりウィーンの街は全焼し、スラムとなる。以後各地を転々としていたが、ある日立ち寄ったヴェクサシオン(元ウィーンの街)で、成長したフォルテ君にヴァイオリンを盗まれ、それを機に彼を弟子見習いにし、旅人として免罪符を探す旅を始める。

プレスト君
名前:プリースト・カルファゲーテ(プレストは旅人としての名前)
年齢:少なくとも二十代以上。アンダンテさんよりはずっと年下。
性別:男
性格:せっかちで短気で割と粗暴。フォルテ君のことは少なくとも今のところ一度もフォルテと呼んだことはない(第一話でも小僧とか坊主とかチビとか呼んでます)。アンダンテさんの過去を明確に知る数少ない人物の一人。本人自身も旅人をやっている以上何かしらの罪に対する意識があるはずだがあまり本編とは関わってこない。巻き込まれ役。グリッサンドの一件からアンダンテさんの旅に加わる。
容姿:長身で逞しい男性。髪の毛は白く眼の色は赤。ベージュのハンチング帽と灰色のマフラーをして、いつも漆黒の乗馬服に身を包んでいる。
背景:特に決まっていない。少なくともアンダンテさんより若く、かつメトロノーム一門に入門した時期が早い存在ではある。フォルテ君やエーデルとも面識があるはずだが本人たちはあまり覚えていない。世界最速のクシコスポスト(郵便馬車)であり、旅人としての力を使いあの世とこの世で手紙のやり取りをする冥府の渡し守。基本愛馬、ヴォルフガングとともにいけない場所はない。

とりあえずキャラクタープロフィールまとめです。基本今回の話はこの五人+伯爵で進めていこうと思っています。
お待たせしていて申し訳ありません。

合作カンタータ №72

2015.01.25.[Edit]
大幅に遅れてじゃじゃじゃじゃーんです。申し訳ありません。働きながら長編執筆するの結構厳しいものがあります。ちょっとプロフィールもいじりますね。ゲストヒロイン(一応一話につき毎回こういうゲストヒロインがいます)(一話のときはフィーネちゃんがそのポジションでした)(次の話ではフォルテ君の母、ピエタがそのポジションになる予定です)名前:エーデル年齢:享年12歳(フォルテ君5歳のころ)。以後をリタルダンド渓谷の谷底...

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大まかなプロットを立てましたのでざっとでいいので目を通してくださいませませ。質問提案はご自由に。

ピルグリムの唄 ~忘却の子守唄~

道歌:らくだ様に考えていただいた碑文を採用します。

覚えていない思い出:エーデルがフォルテくんの前で死に、その目の前でアッチェレランド病を恐る村人に川に捨てられるシーンの村人たちのセリフ。

プロローグ:リタルダンド渓谷の概要。世界の裂け目とさえ言われる奈落の底で、すべての過去が滞留し、リタルダンド(だんだん遅く)している時間の溝であることなどの説明。よく崩落することも添えて、このへんの地理的なこととともに。

一:グリッサンドからアンダンテさんたちが馬車を出すシーン。普通は旅団を組んで渡るこの渓谷なんですが、アンダンテさんたちは単身で行きます。で、この谷を渡るしきたりみたいのがあって、決して誰かが落ちても助けようとは思ってはいけない、振り返らずとどまることなく、ゆっくりでも前だけを見て進まなければいけないみたいのがあって、そこでフォルテくんとアンダンテさんはお互い遺書を交換し合うみたいな。仮に自分が死んでも、どちらかが生き残って果たして欲しい約束を交換し合うみたいな。で、フォルテくんは自分の持ち物からアンダンテさんに残しておきたいものをひっくり返すんですがこれといったものは特になくて、お母さんの遺骨は何が何でも手放すことはできないとかで、ずた袋(フォルテくんの持ち物)を探して、その奥の方に一つの押し花にした栞を見つけて、それはエーデルワイスの白い花の栞で、掠れた字で――への贈り物と書かれていて(名前のところが読めなくなっているんですが、実際にはえーデルへの贈り物と書かれています)、それを見たアンダンテさんはなにか深刻な顔をして、それを預かろうとかって言って、フォルテくんは特に気にもとめずにアンダンテさんにそれをあずけて、それで遺書の交換とするみたいな(この時アンダンテさんが渡すフォルテくんへの遺書にはリタルダンドに落ちた時に川に沿って進み、罪の釣瓶を目指せと書かれていたり)。

二:そしてアンダンテさん、フォルテくん、プレストくんで道中を進むわけですが、その間にフォルテ君は暇なので鼻歌なんか歌ったりして、それがエーデルワイスの歌で、アンダンテさんはその曲をどこで知ったのかねとかって聴いたりして、フォルテ君はどこで聞いたんでしょうねみたいになって、そこからフォルテくんとアンダンテさんの出会いの話になって、ちょうどヴェクサシオンで追い剥ぎをしていて、立ち寄ったアンダンテさんの荷物を持つふりをして、そのままバイオリンをくすねようとして結局アンダンテさんに捕まった話なんかを笑い話みたいに話しながら、では、その前のことを覚えているかね、みたいな話になって、フォルテ君はその前のことなんて少しも覚えていないんですが、君は突然木の股から生まれたわけではないのだから、ちゃんと父親がいて、母親がいて、育てられていた時期があるはずだよとかって言われて、でも全然そんなの覚えてなくて、きっと捨てられたんだろう程度に思っているわけなんですが、徐々に昔のことがフラッシュバックしていくみたいな。

三:リタルダンド渓谷崩落。馬車に乗っていたフォルテ君たちは即座に逃げて無事でしたが馬車は崩落に巻き込まれて落下(ヴォルフガングはプレストくんが即座に馬車から離して無事です)。馬車は途中の岩場に引っかかって止まりますが、フォルテくんはそれを見て、馬車の中につい荷物(というか母親の遺骨)を残してきてしまったことを思い出し、アンダンテさんやプレストくんの制止も構わず岩場に向かって降りてしまい、馬車に潜って遺骨を抱き抱えて脱出しようとしたその時にまた崩落が起き、フォルテ君はそのまま谷底へ。

四:フォルテ君が目を覚ますとそこは見たこともない薄暗い谷底で目の前には一人の女の子と赤毛の男性がいて、フォルテ君は赤毛の男性からここがリタルダンド渓谷の谷底であることを聞き、そしてその赤毛の男性が、アンダンテさんが探してやまない免罪譜〈調和の霊感〉の作者たる赤毛の司祭、アントニオ・ヴィヴァルディであることに気づきびっくりし、彼から女の子の事を聞いて、こちらが言った言葉からしか返事ができないこと、唯一言えるのは行かないでだけで、名前さえわからないこと、しかしもしかしたら君は彼女のことを知っているのではないかみたいなことを言われて怪訝に思いながらも、とりあえずは助けを待つことに。

五:アンダンテさんたちの動き。とりあえずフォルテ君を助けたりはせず、谷を越えた先の街についていてそこからどうしようかという話に。しかしプレストくんはアンダンテさんが目論み合ってフォルテ君をあえて谷に落としたことを気づいていてアンダンテさんには超ブチギレみたいな。もしかして赤毛の司祭を谷底から引きずり出して、免罪譜を得ようとしているのではないかとアンダンテさんを糾弾。で、アンダンテさんはこの町にある底のない井戸罪の釣瓶がリタルダンドにつながっていることを知っていて、そこからフォルテ君を救い出すといい、君はこのまま見捨てて次の町に行くかねと言われ、渋々ながら付き合うことに。夜になり、アンダンテさんは例のごとく伯爵を呼び出し、そこで伯爵からも責められる。曰くお前はお前の娘のことなど愛してはいなかったと言われて、そのくせに彼女が死んだ今になって大切にしてあげようとしている、そんなことをするくらいならどうして生きているうちにあの子の願いを聞いてあげなかったんだ、お前はお前の娘が生きている時に、あの子の願いをたったひとつでも聞いてあげたかね、とかって言われたりして、それでも私はだからこそ贖わなければならないとかって話をしたり。で、横からそれを見ていたプレスト君のところにも伯爵がいたりして、伯爵はプレストくんの罪も責めるんですが、プレスト君はそれをほとんど無視して俺は許されたいなんて思ってないし、免罪譜も求めてない、罪を負って生きる覚悟をしてるみたいな事を言って、それを聞いた伯爵はお前は逃げているだけだろうとかって言いながら闇に消えていくみたいな。

六:フォルテくんはとりあえずは助けを待つことに。で、エーデルと一緒に助けを待っている間に、過去にもこんなことがあったようなことを思い出して、子供だった頃に、アッチェレランド病に苦しんで、それでもアンダンテさんに会いたいとなくエーデルを慰めながら、ここで待っていればもうすぐにアンダンテさん(アドルフ)が来ると言い聞かせて待っていたことを思い出したり。それで記憶に確かにエーデルの顔が残っているのにその名前が思い出せないでいながら、赤毛の司祭に君はやはりこの子を知っているようだねとか言われたりして。それで、待っていても助けは来ないよ、この奈落には生きているものは入れないのだからねとか言われて、待っていても仕方ない、と崖を登ろうとするんですが、すぐに崩れてダメで、そういえばアンダンテさんは遺書に何を書いたんだろうとか思って開けると、そこにはフォルテくんがようやく読める文字で、川に沿って進め、行き止まりの井戸を上れと書いてあって、フォルテ君は赤毛の司祭とエーデルとともにモルダウの流れに沿ってリタルダンドを歩いていきます。

七:そうして歩いていくうちにどんどん思い出されていくフォルテ君自身の記憶。かつてこうして川に沿って病気のエーデルを連れてアドルフに会いにそりを引いて五歳のフォルテ君は街を目指したみたいな。で、その時にも、エーデルがずっとお父さんに会いたい、とつぶやいていたことを思い出して、そうだ、あの日もこんな風に、みたいになっているうちにだんだん記憶が怪しくなっていって、思い出そうとすることが怖くなっていったり。あの時一緒にいたあの子はどうなったんだっけ、オレは今生きているけど、ならどうなったんだっけとか考え出していくうちにもどうしてもそこから先が思い出せなくてみたいな。

八:再びアンダンテさんサイド、アンダンテさんは次の街にたどり着き、そこで底のない井戸を見つけ、延々と組み上げても組み上げても果てのない釣瓶をひたすらに引き上げることを始めたり。プレスト君はそれをそばで見ながら、そんなになってまで免罪譜が欲しいのかよとかって言って、アンダンテさんはそれがなければ私はアンダンテとして生きていくことができなのだとか言いながら、肩も上がらなくなるほどになりながらもひたすらに釣瓶を汲み上げ続けるみたいな。

九:フォルテ君たちは、そして行き止まりの釣瓶の井戸にたどり着いて、赤毛の司祭がこの釣瓶は罪の釣瓶というもので、片方により重い罪を載せることで、片方をすくい上げるものだとフォルテ君にいい、フォルテ君はエーデルを釣瓶に載せれば自分は助かるとか言われたり。エーデルはもとより死んでいるのだから、ここで彼女を忘却の河、モルダウの底に沈めたとして、それはフォルテ君の罪ではないし、気に病むことでもない、むしろこの谷底にずっと縛られ続けるより、忘却の河に飲まれて忘れ去られたほうが彼女のためになるとか言われて、フォルテ君はそれでも自分は助かりたいのも事実で、それを見ていたエーデルは自分から釣瓶に乗って、フォルテ君に反対の瓶に乗るように示して、フォルテ君は渋々ながらも乗って、そして釣瓶は上がり始めるみたいな。

十一:アンダンテさんの方は井戸に捧げられるものを次々に投げ打って井戸から何かを組み上げようとしていたり。そのうちに楽器であるヴァイオリンのエーデルにまで手をかけて、プレスト君はそれは捨てちゃなんねえものだろうがとかって止めるんですが、アンダンテさんは免罪譜のためならば惜しくもないとかって言ってヴァイオリンを底に落とすとか。それを見てプレストくんはアンダンテさんを殴ったり。でもアンダンテさんは無言で釣瓶を組み上げ続けるとか。

十二:で、フォルテ君は釣瓶の井戸の下から聴こえてくるエーデルの歌を聴きながら、やっぱりダメだと思って、縄をつかみ、エーデルを自分の瓶に乗せて、エーデルと自分のふたり分の重みを背負って、自らの力だけで釣瓶の井戸を引き上げ始めたり。で、渾身の力を振り絞って井戸を上げていくんですが、その間にエーデルと二人で家を出て、どうなったのかを思い出して、そうだ、あの時、そりが動けなくなって、エーデルが死にそうになって、お薬になるから、あの白い花を取りに行ったんだと思い出すとか。冒頭にあったエーデルワイスの栞は、その時にフォルテ君がエーデルの発作を癒すために取りに行った花で、その間にエーデルは村人に見つかって、フォルテ君が止めに行くまもなく川に捨てられてしまったとか。で、それを思い出してフォルテ君は、そうだ、あの時オレはエーデルを見捨てたんだ、とかって思い出して、だから、オレがエーデルをアンダンテさんに会わせてあげなくちゃいけないんだとかって泣きながら嗚咽して、こんなに頑張ったんだから、もうすぐ頂上だ、と思って上を見上げると、それは全然近づいていなくて、以前上の明かりはずっと遠くにあり、絶望と言えるほどの距離に、愕然とした時に、ふと上から、アンダンテさんのヴァイオリンが落ちてきて、それがも片方の釣瓶に落ち、大きくフォルテ君たちの釣瓶を上げていくとか。で、そうしていくうちにだんだん意識が遠くなり、目を覚ますとフォルテ君は宿の布団で寝ていたとか。

エピローグ:目を覚ましたフォルテ君はプレスト君にアンダンテさんの居場所を聞いて、街の墳墓の丘で墓を作っていると聞いて、行くとアンダンテさんは既に一つの墓を作り終えて帰るところだったとか。で、エーデルは、とかってフォルテくんが聞くと、エーデルは死んだよ、もうずっと前のことだ、とかって言って、君は崩落に巻き込まれた時に頭を打って今の今まで眠ったままだった、君が見たのはすべて夢だ、とかっていったり。じゃあ、その墓は、とフォルテ君が聞くと、さて、君が夢の中から持ち帰った、誰かの墓だよとかって言って、アンダンテさんはフォルテ君にフォルテ君から預かったエーデルワイスの栞を渡して、去っていくとか。で、去り際にありがとうフォルテ君、ようやく会えたよとかって言って、フォルテ君はそのエーデルワイスの栞を見つめてそっとその墓碑の前にそれを備えて、手を合わせ、ごめんね、エーデル。おかえりなさい。とかって言って、で、次の日、プレストくんは街で新しい馬車を買って、あんなにしてまで引き上げようとしてたのは免罪譜じゃなくて、エーデルの骨だったのかよとかってひとりごちりながらまた次の街(ヴェクサシオン)を目指すみたいな。

覚えていたい思い出:エーデルがフォルテ君にエーデルワイスを教えている会話。私のことを忘れても、この歌を覚えていれば、私はいつでもあなたのそばにいるからみたいな。

一応作ってみました。もちろん万事このまま行くとも限らないんですがこんな感じで進行しようと思います。

合作カンタータ №74

2015.01.25.[Edit]
大まかなプロットを立てましたのでざっとでいいので目を通してくださいませませ。質問提案はご自由に。ピルグリムの唄 ~忘却の子守唄~道歌:らくだ様に考えていただいた碑文を採用します。覚えていない思い出:エーデルがフォルテくんの前で死に、その目の前でアッチェレランド病を恐る村人に川に捨てられるシーンの村人たちのセリフ。プロローグ:リタルダンド渓谷の概要。世界の裂け目とさえ言われる奈落の底で、すべての過去...

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ちょっと教会と旅人はなんで対立してるのかみたいな構図も見えにくいのでこの際ですから書いておこうかなと思ったり。

まず旅人ですが、旅人の本義とは、社会通念上許されない罪を犯した人間が、自らの罪の重さを持って、死にゆく人の魂と自分の魂を秤にかけ、自らの罪の重さで死者を天上へと召し上げるような救済を行う人間であり、そのために音楽を用いて葬送を行うもののことです。
で、この旅人になるためには前提として罪を犯している必要があるわけですが、背後関係から言うなら、許されざる罪を犯した人間が、どうにかこうにか自らが許されるすべを探した結果編み出された役職が旅人というべきで、旅人になるために罪を犯すという本末が転倒したような人はいなかったはずなんですが、そのへんは時代が経つにつれ徐々に手段と目的のすり代わりが起こり始め、旅人という仕事があるのだから、どんな罪を犯しても、最終的に旅人になればオッケーと考えるような低俗かつ良識にかける旅人たちが台頭し始め、その人たちは割と刹那的で、終末を望むようなところもあったりして、旅人でダメならもう自分の首をくくって死ねばいいやとかって考える人たちだったとか。

で、そういう間違った旅人たちが台頭した時代に、世界の風紀を正すために自殺を禁じ、人が清く正しく生き、自らの罪を自分でにない、自分を報い、自分を救う自己救済を基盤とする教会の教えが出来、それが広まり、赤毛の司祭なんかも台頭して、結局旅人は少数派になり、世界に広く教会の教えが説かれるようになり、教会は旅人を堕落の象徴と断じ、厳しく弾圧した時代もあったとか。その末期がちょうどメトロノーム伯爵一派が崩壊するあたりだったり。

で、今はあらかためぼしい旅人集団もなくなって、教会も行き過ぎた弾圧だったと反省し、教会ができない土着信仰がある場所とか、人が少なすぎて協会を作れない場所とか、そういう場所に置いて葬儀を取り仕切る存在として、積極的に旅人との融和政策に転じ、現在に至っているとか。

そして教会は司法、行政の中枢でもあり、教会の定める法によって人の罪と罰は図られ、罪人を裁くことは教会が行っているみたいな。
その中で自殺はやっぱり強い禁忌として忌み嫌われており、自殺者には墓を造ることも葬儀を上げることもできないというのが罰みたいな。
そんな感じでかつての旅人の台頭、そこから生まれた旅人の堕落と、その中で生まれた教会とその趨勢、そして旅人との融和みたいのがあって今になってるみたいな。ちょっと思ったので書いてみました。何らかの参考までに。

合作カンタータ №83

2015.01.25.[Edit]
ちょっと教会と旅人はなんで対立してるのかみたいな構図も見えにくいのでこの際ですから書いておこうかなと思ったり。まず旅人ですが、旅人の本義とは、社会通念上許されない罪を犯した人間が、自らの罪の重さを持って、死にゆく人の魂と自分の魂を秤にかけ、自らの罪の重さで死者を天上へと召し上げるような救済を行う人間であり、そのために音楽を用いて葬送を行うもののことです。で、この旅人になるためには前提として罪を犯し...

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 一面真っ白なお花畑でした。
 昨日の夜に降った霧のような雨が、その白い花びらに雫となって、朝の光を受けて、まるで宝石のようにキラキラと輝いていました。

 男の子はその景色に目を奪われ、その花園にしゃがみこんで、足元を覆い尽くすその花を一つ、摘みました。
 掲げて空に並べてみれば、柔らかな綿毛に覆われた小さな白い花は、ふかふかの雲のようでした。
 雨粒をいっぱいに溜め込んだ花びらがくるりと倒れて、男の子の顔に雫が一つかかりました。
 雫はそのまま涙の通り道を通って、上を向いた男の子の首筋へと流れていきます。
 男の子は顔についた雫を袖で拭います。

――何を泣いているの。

 後ろから声がして、振り返ると、そこにはベッドの上で青い顔をして、悲しい目をした見慣れた顔がありました。
 お花畑はいつの間にか暗い部屋の中になっていました。
 ベッドに寝ている少女には、もはや陽の光さえ力を削ぐ毒になるので、カーテンはずっと下ろされたままで、わずかに灯るロウソクの灯りの下で、部屋の中にはいつもすすり泣きが響いていました。
 それでも少女は、本当は自分が一番心配されたいのに、男の子の顔を見ると、まずそう聞くのです。

 泣いてなんかいないよ、と男の子は答えます。
 泣いているのは、お姉ちゃんの方だ。

――お父さんは、今日も帰ってこないのね。

 もうじき帰ってくるよ。ほら、お花を摘んできたよ。
 ねえ、だから、泣かないで。

 泣かないで――。

 パチリ、と目を開くと、そこには初めて見る天井がありました。
 丸く木を彫って作られた天井。その真ん中はどうやら観音開きになっているようで、その開き戸の真ん中から、壁に沿ってはしごがつけられています。
 そしてフォルテ君は、ガタゴトと揺れるそこが馬車の中であること、自分が今まで眠って夢を見ていたことを思い出しました。
 どれくらい寝ていたのでしょうか。窓から見える太陽は、すっかり真昼の位置です。
 今日は日の出前に街を発つためにずっと早起きしたのと、馬車の揺れがあまりに心地よくて、ついうっかり寝入ってしまったのです。

 フォルテ君は寝かされていた座席から起き上がって、馬車の客車の中を見回します。
 まるで貴人を乗せるような立派な内装です。でも、中にはフォルテ君以外誰もいません。
 馬車が動いているからプレスト君は御者台にいるとしても、アンダンテさんの姿がないのはどうにもおかしい、とフォルテ君は思いました。
 アンダンテさんは女の人と一緒でないところで、呑気に景色を楽しんだり、旅の風情を味わうなんてことはしませんでした。

 アンダンテさんは、特に必要がなければ、一日中だって狭い部屋の中に閉じこもって、ひたすらにパイプを更かし続けるのです。
 そうして旅先でも、宿の狭い客室に煙を充満させて、よく宿の主に怒られて追い出されたりしました。
 一緒に旅をしていたフォルテ君は身をもってそのことをよく知っています。

 かと言って、御者台にいるということも考えられません。
 あのプレスト君が、アンダンテさんと並んで座るはずがありません。
 無理やりにアンダンテさんが横に座ろうとしたら、プレスト君の方が手綱を離して馬車から飛び降りてしまうでしょう。
 それくらいにあの二人は仲が悪いのです。

 とすれば、残っているのはこの馬車の中には一つしかありません。
 フォルテ君ははしごから続く天窓に目を向けます。まさか、あのアンダンテさんが、この上に?
 そんなことを思っていると、不意にバイオリンの音色がその天井から響いてきました。
 フォルテ君は信じられない思いで、はしごを昇って天窓から顔を覗かせました

「やあフォルテ君、眠りの森の王子様のお目覚めはいかがかな」

 バイオリンを肩に担いで、動く馬車の上に立って演奏していたアンダンテさんが振り返ります。
 フォルテ君はびっくりしてはしごを踏み外しそうになってしまいました。

「何を呆けた顔をしているのかね。紳士が涎の跡を残して、寝癖で乱れたそんな顔を人前にさらすものじゃないよ。もう少し君は身だしなみというものに気を遣いたまえ」

 飄々というアンダンテさんを見て、ああ、いつものアンダンテさんだ、と少しだけ安心します。
 そして、今一度、天窓から辺りをぐるりと見回しました。

 不思議な光景でした。トンネル、というのでしょうか。
 崖になっている地面に作られた片側だけ壁がない薄暗い道。
 幅はこの馬車が一台ようやく通れるほどしかありませんが、高さはその馬車の上に大人の男性であるアンダンテさんが立っても、全く危なげない程の余裕がありました。

 何より不思議なのはその壁のない片側から見える光景でした。
 ひたすらに開けた広大な谷。向こう側がほとんど見えないくらいに広がるリタルダンド渓谷。
 少し目を下に向ければ果てしない暗黒が広がっていて、見ているのも怖いほどなのに、少し上を向けば、そこには突き抜けるほどに青い空に、心配など一つもないかのように、白い雲が悠々とたなびいています。
 そして、その崖のトンネルをカーテンのように、白い蔦がまばらに覆っています。
 穏やかさと恐ろしさが同居している、なんとも言い難い景色でした。

「そんなところでキョロキョロしていないで、さっさと上がってきたまえ。それとも君は男に顔を踏まれる趣味でもあったのかね。まああってもおかしくないが」

「ありませんよそんな趣味は! 変な疑いをかけるのはよしてください」

「疑いでないとすると、事実ということかね」

「デタラメってことです! まったくもう、何なんですか!」

 フォルテ君が顔を赤くして大声で言うと、その言葉がまるで帯にでもなったかのように、トンネルの内側にうわんと響き渡ります。
 自分で言った言葉のあまりの大きさと響きに、フォルテ君は驚いて思わず口を閉じるのを忘れて、目を白黒させました。

「轟くだろう?」

「……はい、井戸の中みたいです」

「ふむ、いい喩えだ。正しくそのとおり。この細長い隧道は三方に音が跳ね返って響く。こういうところでの音色を楽しむのもたまにはいいと思ってね。ここのエコーはなかなか気持ちがいい」

「エコー?」

「この残響のことだ。さあ、いつまでそこにいるつもりなのかね。中に戻るなり出てくるなり、どちらかにしたまえ。邪魔でしょうがないよ」

 天井から頭だけ覗かせていたフォルテ君は、じゃあそこまで言うなら、とアンダンテさんの手を借りて天井に上り出ます。

「ったくどいつもこいつも、客でもねえのに人の新品の馬車の屋根に足跡をつけやがって」

 下から聞こえた声に、天蓋から顔を出すと、プレスト君が黒い馬の手綱を握って不満そうな顔を浮かべていました。

「感謝しているよ、プレスト君、だが、この馬車の代金の一部は、私が君に依頼した仕事の報酬から出ていた気がするが」

「俺があんたからもらった報酬で何買おうが、買ったものにあんたが口出しする権限があるわけないだろ」

「なるほど道理だ。では私たちも適正な値でこの馬車に乗っている以上は、客としてもてなされる権限を持つはずだがね。君は人を乗せるときにもそんなぶっきらぼうな態度を取るのかね」

 プレスト君は苦々しげに舌打ちをしましたが、それ以上はもう言い返しませんでした。
 アンダンテさんに言い負かされたというよりは、アンダンテさんの屁理屈に付き合う気が失せたということでしょう。
 何せ口が達者な自称紳士のアンダンテさんは、一緒に議論などしようものなら、理屈をこねくり回して煮詰めてシチューでも作っているかのように、詭弁を弄し、論点をすり替え、いつの間にか何について話していたかを忘れさせられ、煙に巻かれてしまうのです。
 長く付き合っているフォルテ君たちからすれば、まともに話をするのは時間と労力の骨折り損でしかありません。
 フォルテ君はそんな二人をよそに、横に広がる景色を眺めました。

 常闇の淵と、広大な蒼穹。
 特段変わるわけでもないのに、いいえ、だからこそでしょう。不思議と目がそちらから離れません。

「やめたまえ、フォルテ君。魅入られてしまうよ」

 アンダンテさんがフォルテ君の肩に手を置いたので、フォルテ君はようやくハッとしました。

「眺めるならこの道の方にしておきたまえ。谷を覗き込むと、招かれてしまうよ」

 アンダンテさんの方を向くと、その黒い目が、しっかりとフォルテ君を捉えていました。
 フォルテ君は思わずその両目から目を逸らしてしまいます。
 アンダンテさんの黒い目は、このリタルダンド渓谷の闇と同じ色をしているのです。
 深く、底なしの、空っぽの黒。
 それは恐れて遠ざけるものだと、心の深いところで何かが叫ぶ気がしました。

 フォルテ君は目のやり場をなくして、その薄暗いトンネルを見やります。
 壁の色は薄い橙色。この崖そのものの岩の色でした。
 レンガが貼られて舗装されているわけでもなく、ただ岸壁を掘り抜いて作られた道。そして、その壁面にはあちらこちらに亀裂が入っていました。

「ここ、崩れるんでしたっけ」

 フォルテ君が聞くと、アンダンテさんは崩れるよ、と当たり前のように答えます。

「言ったろう、大地はここから湧き上がって生まれるのだよ。世界の陸地というのは絶え間なく移動しているのだ。私たち人間が感じられないほど非常にゆっくりと、緩慢な速度でね。リタルダンド渓谷とはそういう意味だよ。それは神の速度だ。人間には止まっているようにしか感じられないが、確かに動いている」

「今も、ですか?」

「私は人間だよ、わかるわけなかろう。でも、動いているのだろうね。そうして歪を蓄えて、あるとき一気に崩壊する。その度にこの崖は崩れ、この道は塞がり、何人もの人が谷底に落ちていく。そうして崩れてはまた道を掘って、また崩れての繰り返しだ」

「どこか、別の道を探せばいいのに」

「探してないなどと誰が言ったのかね」

 アンダンテさんはその黒い髭をバイオリンの弓を持った手でつまみながらしれっと答えます。

「全ての道は遍く繋がっている。この谷を通らなくても、交易のための道はいくつでもあるだろう。だが、いくら道が通じていたところで、この谷を通らなければたどり着かない場所というものは存在するのだよ」

「この先の街ですか?」

 フォルテ君が問うと、アンダンテさんは短く、いや、と答えたきりで、その場所をそれ以上は言いませんでした。

「免罪譜に続いているのは、少なくともこの道しかない。君にとっても、私にとってもね」

 アンダンテさんは、何処か遠くの方を見て、おそらくフォルテ君に見るなといった、この谷の暗闇を見て、言いました。
 フォルテ君は、アンダンテさんの真意を図ろうとしますが、結局分かりません。

「そういえば、さっきからここに垂れ下がってるあの蔓みたいのはなんですか?」

 フォルテ君は隧道の開けている方向の崖の上から谷底に伸びていく白い蔦を指してアンダンテさんに聞きます。

「あれはツタウスユキソウの蔓だよ。このリタルダンドにしか自生しない花でね。白い花を咲かせるのだが、実はこれは上から垂れて伸びているのではなくて谷底から上に向かって伸びているのだ」

「え、谷底って、この下ですか?」

 フォルテ君は後ろに立つアンダンテさんを振り返って思わず訪ねます。

「唯一谷底から繋がるものだよ。これはね、リタルダンドに落ちた人間の妄念の花と言われているのだ。谷に落ちたものが、何とか谷から這い出たいという一心で草に身を窶し、崖をひたすらに昇って谷の上に咲かせる花だとね。実際その思いの丈に見合ってかどうかは知らないが、この蔓は非常に頑丈で、大人がぶら下がったくらいではびくともしない」

「じゃあ、もしこの谷に落っこちても、この蔓を昇れば戻ってこられるってことですね」

「さて、この谷に落ちて生きている人がいたとすれば、そういうことになるだろうがね。落ちればまず助かるまいよ」

 それもそうだ、とフォルテくんはちらりと谷の方を見て思います。何せ下に見えるものは何一つないのです。
 崖の壁すら、あっという間に影に飲まれて見えなくなっているのです。
 改めてその白い蔓を見ると、それは助けを求める手のようにも見えて、フォルテ君は何となく目を逸らしてしまいます。

 谷を見てもいけない、かと言って馬車の中ではすることもない、フォルテ君はどうやらすごく退屈な状態に自分がいることにようやく気づきました。
 そしてピンときました。
 アンダンテさんも退屈だったのです。
 だから珍しくお客さんもいないのにバイオリンなんて弾いていたのです。

 そして、それに気づくと、今度は無性に何か歌いたくなりました。
 見習いとは言えフォルテ君は旅人でした。

 旅人は音楽を用いて、あの世とこの世を繋ぐものです。
 一人前の旅人は何かしらの楽器を持っていて、それを弾くことで死者との別れを演出するのです。
 フォルテ君にはまだ自分の楽器はありませんでしたが、アンダンテさんのバイオリンに合わせていくつも歌を教えてもらっていました。

 フォルテ君は、不意にある旋律を口ずさみ始めました。

――真白な花よ。清く光る雪に咲く花。

 途中から歌詞を思い出して、言葉を載せます。
 ひどく懐かしい気がしました。ずっと昔に歌って、それ切り忘れていた歌を今思い出したようでした。

「その歌は――」

 アンダンテさんが、わずかに眉を上げてフォルテくんの方を見つめます。
 そして、何も言わずにバイオリンを歌に合わせて奏で始めました。
 フォルテ君はただ、トンネルの中に響いて残る、自分の声と重なるバイオリンの調べを聴いていました。
 長くこだまして聞こえる声は、何だかもう一人、一緒に誰かと歌っているような響きを持っていました。

――かおれ朝の風に。とわに咲けと。

 そこでフォルテ君の歌はぴたりと止まります。

「どうしたのかね。続きは」

「いや、歌詞を忘れちゃって。旋律はわかるんですよ。でも、言葉が出てこないんです。何でしたっけ、ここの歌詞」

 フォルテ君ははねた癖毛を後ろ手で掻きながら何となく恥ずかしい心持ちで、アンダンテさんに訪ねました。
 何気なく聞いただけなのに、アンダンテさんの顔はどうにも神妙でした。
 眉間には薄くシワが寄って、心なしか、口を少し曲げているようにも見えました。
 少し、近寄りがたい雰囲気です。フォルテ君は何だか心配になって、あの、と声をかけます。

「その歌を、どこで覚えたのだね」

「アンダンテさんが教えてくれた歌じゃなかったんでしたっけ」

「私はその歌は教えていないよ」

 じゃあ、自分はどこでこの歌を知ったんだろう、とフォルテ君は思いました。
 アンダンテさんに習ったのでなければ、他にフォルテ君に歌を教えてくれるような人はいなかったはずでした。

――高貴な白って意味なんだって。

 フォルテ君の頭の中にいきなり声が割り込んできます。途切れ途切れに、いくつもの風景が過ぎっていきます。
 フォルテ君が知らないはずの声で、知らないはずの光景が、流れるようにいくつも浮かび上がっては消えていきます。

――お父さんたちが帰ってくるまで一緒に遊んでましょう。

 誰かの声。知らないはずなのに、ずっと昔にその人を知っていたようなおかしな感覚。

――歌って、一緒に。

 白い花が咲く一面の花畑。その真ん中に、花で作った冠をかぶって誰かが座っています。
 長く緩く波打つ黒い髪。あの子は、あの子は――。

――お父さんは、帰ってこないのね。

 あのベッドの上で横たわる痩せこけた頬は。どこか虚ろなあの眼差しは。

――会いたい。お父さんに会いたい。

 そうやって、いつも泣いていたあの声が、あの泣き顔が。

――行かないで。

「どうしたんだね、フォルテ君」

 またぽんとアンダンテさんに肩を叩かれてフォルテ君はハッとしました。
 いつの間にかその視線は渓谷の闇を凝視していました。
 先ほどの剣呑な雰囲気はどこにもなく、心配するようなアンダンテさんを見て、妙な気分も消えていきます。

「見入ってはいけないと言っているだろう」

 ため息混じりに言うアンダンテさんに、フォルテ君ははい、と小さく答えます。

「その歌を教えてくれた人のことを、覚えているかね」

「いいえ、母さん、でもないと思うし。でも、アンダンテさんじゃないんですよね」

「君は、私と会った時のことを覚えているかね」

「オレはアンダンテさんのそのバイオリンを盗もうとしました」

 それははっきりと覚えていました。
 アンダンテさんと出会う前、フォルテ君は焼け落ちた街の片隅で、旅人狙いの追い剥ぎをやっていたのです。
 荷物を持つ代わりに手間賃をくれとせがんで、その荷物ごとくすねる小悪党でした。
 そうでもしなければ生きていけない、本当に何もない場所だったのです。
 フォルテ君はそこで、焼け残った母親の遺骨をひたすらに抱えて、その日その日の食べ物に困りながら、必死に生きていました。
 そこに通りかかったのがアンダンテさんで、そのアンダンテさんに目をつけてしまったのがフォルテ君の運の尽きでした。

「私も今でも覚えているよ。私の荷物はトランクとバイオリンだったが、君は迷わずバイオリンを持つといった」

「金目のものかと思ったんですよ。大切そうにしてましたから」

 強引な口車でほとんどひったくるようにしてアンダンテさんからバイオリンを奪ったフォルテ君はしばらく、従順に荷物持ちを演じ、アンダンテさんが目を離したすきにその場を立ち去って逃げようとしました。
 そこを巡回の警邏隊に捕縛されたのです。
 風紀の悪いその場所は、フォルテ君と同じような孤児や、貧しい人が犯す犯罪が後を立たなかったので、近くの街から治安を守るために役人が派遣されていたのです。
 その場で取り押さえられ、縄をかけられるフォルテ君の前にアンダンテさんがやってきて、そこでその縄を解くように、警邏にお願いしました。

――彼は私の弟子なのですよ。ちょうどバイオリンを持たせてあげているところでしてね。

 何を言っているんだろうこの男は、どんな魂胆があるんだろう、とフォルテ君は訝しみました。
 しかし重ねてアンダンテさんが、小金を握らせると、それで結局警邏は納得し、フォルテ君を開放してくれました。
 フォルテ君はすぐにアンダンテさんに問いただしました。

――言っただろう、君は私の弟子になるのだ。これから先はフォルテと名乗りたまえ。クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ。君の名前だ。

 呆気にとられるフォルテ君をよそに、アンダンテさんはパイプをふかしながら歩き出しました。

――キミのお母上にお墓を作ってあげよう。そのために君は旅人になるのだ。

 そう言って、アンダンテさんはフォルテ君をその荒地から連れ出しました。
 後の旅路は思い出すだに苦難の連続でした。
 それでもあの廃墟の街に残っているよりは断然ましだったことは間違いないのですが。

「では、私と会う以前のことを、一年前より昔のことを覚えているかね」

「え、っと、それは……」

 フォルテ君は必死に記憶を手繰ります。
 フォルテ君は人間の子供です。人間は親がいなければ生まれません。
 親がいて、家があって、そこに赤ちゃんとして子供は生まれるのです。
 だからフォルテ君があの焼け落ちた街で追い剥ぎをやっていたからといって、何もないところからいきなり追い剥ぎのフォルテ君がいたはずはなくて、そこに来るまでの過去があるはずでした。
 母親と、父親と一緒にいた記憶があるはずでした。

 でも、思い出そうと頭をひねっても、それに当てはまる思い出は何一つ出てきません。
 そうして、フォルテ君は自分が今大切に持っている母親の骨も、その顔も声も、何もかも覚えていないことに気づきます。
 そんな馬鹿な、という思いが溢れてきますが、実際フォルテ君は、母親のことを、その名前も思い出せないのです。
 確かなのは、自分にはすごく優しくしてくれた母親がいて、その人は今あの骨になっている、という思いだけでした。
 そのことだけは疑いなく真実だと信じられるのに、どうしてそう信じられるのか、その根拠が全くありません。
 フォルテ君は愕然としました。そのあまりにも大きくて深刻な、自分にまつわる記憶の溝に。

「アンダンテさん、オレ……」

「君は思い出さなければならない。何を引換にしたとしても」

――行かないで。

 また頭の中に声が過ぎります。
 泣いている女の子。多分、フォルテ君が思い出せないでいるアンダンテさんと会う前の過去にいる女の子。
 どうしてだか、フォルテ君には、もう二度とその子には会えないのだ、ということが間違いないことのように思えました。

――あの子はきっと、思い出の中にしかいない。

――でも、オレはそのことを思い出すことができないでいるんだ。

 ガタゴトと揺れる馬車の上で、アンダンテさんは適当にバイオリンを奏でます。
 フォルテくんはそれを聞き流しながら、続いていく隧道を見ていました。
 その道はまるで思い出の中に分け入っていく道のように思えました。

忘却の子守唄 本編下書き

2015.02.04.[Edit]
2 一面真っ白なお花畑でした。 昨日の夜に降った霧のような雨が、その白い花びらに雫となって、朝の光を受けて、まるで宝石のようにキラキラと輝いていました。 男の子はその景色に目を奪われ、その花園にしゃがみこんで、足元を覆い尽くすその花を一つ、摘みました。 掲げて空に並べてみれば、柔らかな綿毛に覆われた小さな白い花は、ふかふかの雲のようでした。 雨粒をいっぱいに溜め込んだ花びらがくるりと倒れて、男の子...

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そういう理由めいたものはある程度オリジナルで作っていただいても構わないんですが、イメージで答えさせて頂くと、谷底に落ちたフォルテ君が気が付くと、自分は無数の手に囲まれていて(リタルダンドの亡者)その中で声を上げるとエーデルと赤毛の司祭がやってきて、エーデルはとりあえずこの状態では離せないので、赤毛の司祭に話を聞くわけなんですがそこで普通にヴィヴァルディと答えると思うんですよね。で、ヴィヴァルディってあの、赤毛の司祭、みたいな発言をフォルテ君がして、ああ、そう呼ばれていたこともあった、みたいな感じですね。その辺の会話のやりとりはいくらでも作っていただいて構わないというか。

アンダンテさんの目論見がバレたことについては、特段アンダンテさん側としては隠しているわけでもないし、そもそもプレスト君はそういうことをしそうな相手としてアンダンテさんを見ているので、このリタルダンド越えについても何らかの意図があるものだろうと踏んでいるわけなんですが、その結果がフォルテくんが落ちて、アンダンテさんは何かを罪の釣瓶から引き出そうとしている→アンダンテさんが一番欲しているものは免罪譜→世界中の過去が偏在するリタルダンド渓谷にはヴィヴァルディも存在し、調和の霊感もある→アンダンテさんがフォルテ君を引換にヴィヴァルディを引きずり出そうとしているという推測がプレストくんの中で成立するので、プレスト君はアンダンテさんに激怒するわけです。実際にはアンダンテさんは免罪符ではなくエーデルの骨を回収しようとしているわけですが、それは一番最後に明らかになればいいことなので、落とされたフォルテくん自身遺書に書いてある内容に沿って、アンダンテさんは自分を落として免罪符を得ようとしてるんだ、みたいな思い込みで進行して構わない、というかそのへんは一種のミスリードを狙っていたりします。自分で言わされると恥ずかしい限りなんですが。

伯爵は黒い猫です。白い猫は多分もう出てきません。呼び出し方に決まりはないんですが、夜にカンテラを灯しているとその影の中から現れるというのが一応決まりではないんですがそういう場面で出したいですね。で、フォルテ君の前に姿を現すことはないです。

プレストくんの罪は >>80 の後半をご覧下さい(>>80の内容プレスト君の罪については実は未定なんですが、彼の楽器であるギターがガブリエルという名前なので、やっぱり救えなかった恋人のガブリエルみたいな人がいたんではないかなと思ったり。プレスト君は郵便屋で、ガブリエルといえば新約聖書でマリアに受胎告知をした天使ですから、プレスト君にはガブリエルという女友達と、ヴォルフガングという男友達がいて、三人は幼馴染で仲良く育ったんですが、いつの間にかガブリエルをめぐってプレスト君とヴォルフガングの中は険悪になって、そのうちにガブリエルのお腹に子供がいることが発覚したりして、プレスト君はガブリエルは好きだったけどそういう関係にはなってなくて、完全にその子はヴォルフガングの子供だったんですが、ヴォルフガングはガブリエルを信じきれず、プレスト君を疑って、最終的にはガブリエルを殺害して、自らの命も絶って、後にはヴォルフガングが乗っていた駿馬の黒馬だけが残り、失意にくれるところにメトロノーム伯爵が現れて、ヴォルフガングとガブリエルを弔ってくれて、それでプレスト君はガブリエルとヴォルフガングの喪に服し、その黒馬にヴォルフガングと名付け、ギターにガブリエルと名付け、旅人として生きることで、その二人と、ガブリエルに宿っていた子供三人分の罪への許しとして、旅人をやっているみたいな)

フォルテ君が逃げちゃう心理としては、フォルテ君自身はエーデルをアンダンテさんに引き合わせたい一心で病気のエーデルを無理やり外に出しているわけで、その結果エーデルは発作で死に、しかもその死体も近くの住民によって捨てられてしまうという顛末を迎えてしまったわけで、そこに帰ってくるアンダンテさんにどんな顔をしていいかわからないのはむしろ当然だと思うんですよ。流石にそれくらいはわかるでしょうし。でその取り返しのつかないことをしてしまったという後悔から逃げて、アンダンテさんはうちに帰ると誰もいなくて、ようやくほかの人に聞いた限りではどうやらフォルテ君とエーデルが出かけてそのまま帰らないでいるということ、さらに足取りをたどるとエーデルがアッチェレランド病の発作でしに、近くの住人がこれを川に捨てたということだけがわかって、フォルテ君の行方はわからないみたいな状況に。で、フォルテ君は母親であるピエタのいるところに行っていて、そこに事情を聞きにアンダンテさんがやってきたことで最後の晩餐(次の話です)の夜につながっていくみたいな。でもとりあえずこの話ではフォルテ君が取り返しのつかないことをして、それで逃げ出して帰らないフォルテ君をようやくアンダンテさんが迎えに来たで、ひとつハッピーな終わりということで決着をつけたいと思います。

割と散漫な話し方をしているのでわかりにくいかもしれません。ほかにもわからないことがあったらいくらでも聞いていただいて構いません。
続きもそんなに堅苦しく考えなくても大丈夫ですよ。

№110

2015.02.04.[Edit]
そういう理由めいたものはある程度オリジナルで作っていただいても構わないんですが、イメージで答えさせて頂くと、谷底に落ちたフォルテ君が気が付くと、自分は無数の手に囲まれていて(リタルダンドの亡者)その中で声を上げるとエーデルと赤毛の司祭がやってきて、エーデルはとりあえずこの状態では離せないので、赤毛の司祭に話を聞くわけなんですがそこで普通にヴィヴァルディと答えると思うんですよね。で、ヴィヴァルディって...

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ゴンさんへ

では、お言葉に甘えて少し肩の力を抜きます。


 ヴァイオリンの旋律は優雅で気品に満ちています。高く低く、トンネルに反響し、まるで幾千者の死者が唱和しているかのようです。
 白い手に似た亡者の花が、風に揺れ、そちらへ手招いている錯覚――そんな薄ら寒さがありました。
 ヴァイオリンの音色が、夜明けのごとく変わります。それは先ほどフォルテ君が歌った曲でした。
(アンダンテさんも知ってたんだ)
 フォルテ君は、アンダンテさんの過去を知りません。
 ただ、この歌のどこかに、彼の琴線に触れるものがあったことは、なんとなく察せられました。
「エーデルワイス エーデルワイス」

 ――お父さんに一緒に会おう。エーデル。

「エーデル―─」
 すうっとフォルテ君のほほに涙が伝います。かつての思い出に、もうすぐ出会える。
 そんな気がしました。
 ヴァイオリンが、突然止みます。
 聞こえるのは、風の声と馬車。
 怪訝に思うと、アンダンテさんと目線がぶつかりました。
 それから自分が何を呟いたかを……でも、思い出せません。
 アンダンテさんの瞳に、何かが灯ります。切望とも怒り、悲しみ──表情は虚ろとも言えるのに、目が荒れ狂っています。
 気圧されて恐々と視線を逸らした時、リズミカルだった馬車が大きく揺れました。
(車輪が外れた!?…………違う)
 地震です。
 崖の一部が崩れていくなか、混乱しかける思考を振り払って、馬車から飛び降ります。
 他の二人も無事に避難し、馬のヴォルフガングも咄嗟に手綱を外され、事なきを得ました。
 けれど……
「あっ!どうしようっ、母さん」
 母親の遺骨は落下して崖の途中にある、突き出た岩場にひっかかった馬車の中です。
 何を思ったか、フォルテ君は大胆にツタウスユキソウを足がかりに、降りてゆきます。プレスト君の制止も聞きません。
 必死に必死に下へ。なんとか辿り着きます。
 遺骨を拾い、今度は上を目指す途中、またもや崩落が起こりました。
 成す術もなく手が蔦から離れ、体が傾き、足は宙を踏み、目を見開いて落ちてゆきます。
 ――ああ、死ぬんだ。
 冷静にそう思いました。

 そして、暗転。

 目覚めた次の世界は、――異様でした。

 『おはよう』『攻撃』『大丈夫』『かなしい』『言葉』『知らない』『流れる』『過去』『おかえり』『忘れないで』『忘れないで』
 その全ての言葉の音源は、いちめんのツタウスユキソウです。
 この花々は心を持っている――フォルテ君は直感しました。
 『忘れないで』『忘れないで』『忘れないで』
 オレも
(この谷で忘れられるのか?いや、違う!)
 溢れる恐怖を必死に振り切って、それでも震える声で答えます。
 自分にはまだやりたい事があるのです。
「何を忘れて欲しくないんですか?」
「忘れて欲しくないんです」
 はっきりとした肉声に、驚きと安堵をフォルテ君は覚えます。
 そこには綺麗な女の子が立っていました。
 風がないのに揺れる黒い巻き毛。くすんだ緑色を持つ目。
「君は誰?」
と、言いつつ見覚えのある顔立ちだと思いました。



こん感じです。全力出しました。
書くって楽しいですね!

らくだ

合作カンタータ №113

2015.02.06.[Edit]
ゴンさんへでは、お言葉に甘えて少し肩の力を抜きます。 ヴァイオリンの旋律は優雅で気品に満ちています。高く低く、トンネルに反響し、まるで幾千者の死者が唱和しているかのようです。 白い手に似た亡者の花が、風に揺れ、そちらへ手招いている錯覚――そんな薄ら寒さがありました。 ヴァイオリンの音色が、夜明けのごとく変わります。それは先ほどフォルテ君が歌った曲でした。(アンダンテさんも知ってたんだ) フォルテ君は...

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今回すごく良かったです。直すところも最小限でした。ツタウスユキソウを伝って降りる場面なんかも考えていた通りで全体的に非常にいい文章でした。
ただ、ウスユキソウ達の言葉は少しカットさせていただきました。やっぱりこの谷ぞこで喋れるのはエーデルと、ヴィヴァルディだけにしたいなって言うのがあって。ただ、腕の群れ(ウスユキソウ)にも感情があって、それは手の仕草なんかで表現できればいいなと思います。

で、いかが水増し本文です。



 バイオリンの旋律は優雅で気品に満ちています。
 高く低く、トンネルに反響し、まるで幾千者の死者が唱和しているかのようです。
 白い手に似た亡者の花が、風に揺れ、そちらへ手招いている錯覚――そんな薄ら寒さがありました。
 バイオリンの音色が、夜明けのごとく変わります。それは先ほどフォルテ君が歌った曲でした。

 アンダンテさんも、この歌を知っていたのでしょうか。
 フォルテ君はそう不思議に思いましたが、すぐに思い直しました。
 なにせアンダンテさんはあれでも一人前の旅人なのです。
 一度聴いた曲をその場で弾きこなすことなど、それこそ造作もないことでした。

 でも、きっとそれだって、昔誰かに教えてもらいながら身につけた技術に違いないのです。
 今、こうしてアンダンテさんに弟子入りしているフォルテ君のように。

 フォルテ君は、アンダンテさんの過去を知りません。今の姿を見る限りでは、到底誰かに教えを請うようには見えないのですが。
 ただ、この歌がどこか、アンダンテさんの心の琴線に触れるものがあったことは、なんとなく察せられました。
 フォルテ君はアンダンテさんのバイオリンの旋律に、頭の中で言葉を載せます。

 真白な花よ。清く光る雪に咲く花。
 かおれ朝の風に。とわに咲けと。

 旋律は音楽の続きを紡ぎます。でも、フォルテ君はその続きの言葉を、どうしても思い出すことができません。
 代わりに思い出されるのは、やっぱりあの誰かの泣き顔でした。

――泣かないで。大丈夫だから。

 顔の全体はぼやけているのに、目だけ、口だけ、部分部分は鮮明に覚えています。
 そのおぼろげな記憶の中で、その女の子の目は、確かに涙に濡れていて、その口が小さくつぶやきます。

――行かないで。

 すうっとフォルテ君の頬に涙が伝います。
 フォルテ君自身びっくりして、思わず声を上げてしまいました。
 それをアンダンテさんはバイオリン越しにちらりと見て、少し眉を上げて、怪訝そうに言いました。

「どうしたんだね、何を泣いているんだね」

――何を泣いているの。

 アンダンテさんの言葉に、あの夢が重なります。

 泣いてなんかいないよ。泣いているのは、泣いていたのは――。

「泣いてなんていませんよ。あくびをしたら、涙が出ただけです」

 フォルテ君は折って捲ったワイシャツの袖で、ゴシゴシと顔を拭いました。
 アンダンテさんは、さして興味もなさそうに、そうかね、とだけ言って、バイオリンを肩から下ろします。

「あれ、おしまいですか?」

「おしまいだよ。もう十分に堪能した。昼もとっくに回っているし、プレスト君、止めて昼食にしないかね。ヴォルフガングもそろそろ休ませないと気の毒だよ。まだこの馬車に、慣れてもいないのだろう?」

 アンダンテさんは馬車の天井から、御者台にいるプレスト君にも聞こえるように少し声を張り上げて言います。
 プレスト君は答える代わりに馬車を止めました。

「一時すぎか、だいたい中間点までは来ているようだ」

 止まった馬車の上で、胸から銀の懐中時計を出してアンダンテさんは時間を確認しました。
 そして天窓を開けて客車のドアから馬車を降ります。

「見たまえ、ひと月前に崩落した跡が未だに残っている」

 アンダンテさんは、続いてドアから出てきたフォルテ君に前の方を指差して言います。
 フォルテ君は言葉もありませんでした。
 隧道は途切れている、ということはありませんでしたが、その部分は岩が崩れたのがはっきりとわかります。
 辺りの壁面も地面も、そして天井も、いくつもの大きなひび割れが走っていて、これまで来た道と比べると、明らかにデコボコしていました。
 道の脇はいびつに削れており、その部分だけ極端に狭くなっているのを、板を打って橋を渡して補強してあります。
 プレスト君は御者台から降りると、つかつかと歩み寄って、その板張りの部分をみしりと踏みつけます。

「通れないってことはなさそうだな。割としっかりした補強になってる」

「それは誠に重畳。しかし、ひとまずは腹ごしらえと行こうじゃないか。何よりも、ここまで我々を運んでくれたヴォルフガングのために」

 アンダンテさんは漆黒の馬を見ながら髭をなでます。
 プレスト君は吐き捨てるように舌打ちをします。

「自分が休みたいだけのことに、俺の馬をだしに使うんじゃねえ」

 しかし、言いながらプレスト君は、ヴォルフガングと馬車をつないでいる鞍を手際よく外していきます。
 そして、ヴォルフガングを動けるようにすると、馬車の荷台に積んであった干し草と水瓶を抱えて、その首の下に下ろします。
 ヴォルフガングが水を飲み始めると、プレスト君はその鬣を優しく撫でました。

「さあ、我々も食事にしよう」

 アンダンテさんが言いました。
 食事といっても、旅人の旅の途中のご飯というのは乏しいものです。
 歯が抜けそうになるほど固いパンと、これまた一度歯を入れたら二度と抜けなくなるんじゃないかと思うほどにカチカチの干し肉。
 出発する前に、街でスープを買えたのがまだ救いでしょうか。
 冷めているとは言え、パンを浸せばそれでもいくらか固さも和らぐというものです。

 フォルテ君は停めてある馬車の客車から伸びる階段に、腰を下ろしてパンをスープに浸しながらちぎって食べます。
 目の前に広がるのは代わり映えのしない何もない淵と、果てしない空ばかり。
 それでもフォルテ君はなるべく上の方を向いて、暗い深淵を視界に入れないようにしながら食事を続けます。
 聞こえるのは、風の声。隧道を吹き抜けていく風は、港の街で聞こえるようなボー、という音を上げて響きます。
 もうここでは鳥のさえずる声さえしません。時折、カラカラと崖の淵を医師が転がる音がするばかりです。
 フォルテ君は冷たいスープを一口すすって、パンを一欠片ぱくりと食べます。
 固くてやたらとぼそぼそしたパンは、やや塩気の強いスープの美味しさと水分を吸い取って有り余るほどに美味しくありません。

「うへぇ、相変わらずまずいですね、このパン」

 フォルテ君が舌を出して言うと、アンダンテさんはくすりと頬を緩ませます。

「まずいものがまずいとわかるのは、一つ幸せなことだよ。美味しいものを食べたことがある証拠だ」

「前の街で少し贅沢しすぎたな。これが旅人の旅の味だ。思い出したか」

 アンダンテさんの言葉に重ねるようにプレスト君が吐き捨て、林檎を齧ってその芯を谷底へ投げ捨てます。
 捨てられた林檎の芯はあっという間に暗闇に飲まれ、後には落ちた音一つ残しません。
 フォルテ君は何の返事もよこさない谷に、改めて恐ろしさを覚えました。
 本当に底なしなのです。少なくとも底に落ちたものの音が聞こえないほどに。

 地鳴りのような音が聞こえたのはその時でした。
 フォルテ君はその時、大地が本当に波のように振動を伝えるその様を見ました。
 三人が進んで来たその道の彼方から、地面の揺れがガタガタとあたりを震わせてどんどん広がり、こちらに迫って来るのです。

――地震だ。

「伏せたまえ!」

「違う、ここはやばい! 走れ!」

 アンダンテさんとプレスト君がほぼ同時に言い放ちます。
 呆然として何も出来ないでいるフォルテ君を、プレスト君は乱暴に襟首を掴んで走り出しました。
 そして、ヴォルフガングの手綱を掴んで走らせながらその鞍にフォルテ君を抱えたまま飛び乗ります。
 余りにも鮮やかなとっさの動きにフォルテ君は自分がどうなったのかわからないほどでした。

「アドルフ、乗れ!」

 プレスト君は後ろを振り返って、走るアンダンテさんに手を差し伸べて叫びます。

「言われなくても」

 アンダンテさんはやや慌てた声で答えて飛ぶようにしてその手を掴みます。
 そしてプレストは信じられないような腕力で、そのままアンダンテさんをヴォルフガングの背に引き上げると、腹を蹴って駿馬を走り抜けさせます。
 迫ってくる振動が三人のいるところにたどり着くほんの一瞬の間の出来事でした。

 地震の波はその三人がいた、ひと月前の崩落下部分にたどり着くやいなや、一気にその隧道を再び崩落させました。
 天井が崩れ落ち、壁面が割れ、大きな音を立てて、道がガラガラと壊れ落ちていきます。
 プレスト君が買ったばかりのあの素敵な馬車も、岩に飲まれて崖下に落ちていきます。

「馬車が!」

 まるでおもちゃのように、崖をゴロゴロと転がる馬車は途中にせり出した岩場にぶち当たって止まりました。
 もうドアも外れ、車軸も歪み、外れた車輪が岩場からさらに下へと落ちていきます。
 プレスト君は手綱を引いてヴォルフガングを止めました。いつの間にか、揺れは収まっていました。

「気をつけろ、まだ揺れるかも知れないからな。でもあんたは降りろ、気色悪い」

 プレスト君は自分の腰に手を回して、しっかりとその背にしがみついているアンダンテさんの方を振り返って言いました。
 フォルテ君は緩んだプレスト君の腕をかいくぐって地面に降り、崩れた道を改めて眺めました。

「やれやれ、礼を言うべきかな。全く君には助けられてばかりだね」

「礼なんていらねえよ、見ろ! あの馬車の無残な姿! 俺の財産の半分あれに使ったんだからな! 買ってからまだ三日だ! 一つも街を越えられずに壊れるなんて!」

 プレスト君は天を仰ぐように上を向いて、憎々しげにハンチングを握り締めて顔を覆います。
 冬枯れした木の幹のような灰色をした髪がはらりと額に落ちます。
 プレスト君はしばらく帽子に顔をうずめたままでした。
 あんまりにも長いので、もしかして本当に泣いているのかしら、とフォルテ君はびっくりして不安になってしまいました。

「プレスト兄ちゃん、泣いてるの?」

「泣いてねえよバカ。泣きたいけど」

――泣いてるの。

――泣いてなんかいないよ。

 フォルテ君の頭にまたあの景色が繰り返されます。
 フォルテ君は頭を振ってその光景を頭から追い出します。今は、とにかくそんなことに浸っている場合ではないのです。
 フォルテ君は自分の体を確かめます。
 プレスト君に掴まれた首や、抱えられていた胸はジンジンと痛みましたが、跡が付いているくらいで怪我はしていません。
 そして、アンダンテさんも、プレスト君も、そして馬のヴォルフガングも、一応は無事のようです。
 アンダンテさんはバイオリンを手元に置いていましたし、プレスト君は必要最低限のものは、馬車には載せず、ヴォルフガングの鞍に結びつけていましたから、何もかも全てなくしてしまったということはありませんでした。
 ということは、無事では済まなかったのは、あの馬車だけだったようです。あの馬車と、あの馬車に乗っていた荷物。

「あっ!」

 フォルテ君はそれに思い至った瞬間、大声を上げてしまいました。

「母さんが!」

 フォルテ君は叫んで、崖の縁に身をかがめて、岩場で留まっている馬車の残骸を覗き込みました。
 そうです。あの中にはフォルテ君の麻袋がそのまま置いてあったのです。
 食事に使ったものは手元にありましたが、下着や着替え、日記帳や万年筆は、中に置きっ放しになっていました。
 ――もちろん、その一番下に入っていた、母親の遺骨も。

「やめたまえ、もう間に合わない」

「諦めろ、この谷に落ちたものは、お前が失わなければならないものなんだよ。俺の馬車もな。そういう運命なんだ」

 アンダンテさんとプレスト君は、あたふたするフォルテ君を見ながら冷静な口調で言い聞かせます。
 もうプレスト君は馬車のことを割り切った様子でした。
 その二人を見て、フォルテ君はもう一度、岩場に落ちた馬車を見ました。

――落ちたものは捨てていきなさい。
――それは忘れなければならないもの。

 頭をこの谷のしきたりの碑文がかすめます。
 確かに今、フォルテ君の母親の遺骨は谷に落ちてしまっています。
 しかし、それはまだ完全には落ちていません。
 捨てて忘れてしまうことが運命で、それでこの地震が起きたというのなら。

 ああやってまだフォルテ君が少し頑張れば、手の届く位置に踏みとどまっているということは、それは自分がそれでもなおそれを拾って、きちんと弔わなければならない運命を示しているように思えました。

――これは、試練だ。母さんが、忘れちゃダメだって言ってるんだ。

 フォルテ君はそれを確信して、ギュッと歯を食いしばると、側に垂れ下がるツタウスユキソウを足がかりに、リタルダンドの崖を降り始めました。

「やめろバカ! 何やってる!」

 プレスト君が慌てた声を出します。しかし、もう身を乗り出してしまったフォルテ君を止めることはできません。
 下手に触れば、蔦が切れてしまうかもしれないからです。
 フォルテ君は答えることもせずに、恐る恐る、崖を降りていきます。蔦を縄のように伝いながら。

――へっちゃらさ、こんなの。慣れっこだよ。昔も、こうして。

 こうして。

 またです。また何か、いつか見たことがあるような風景が、音が頭に広がっていきます。

――ダメだ、集中しないと。だって、こんなところで。

 そして、うっかり下を見て、その無限に広がる暗黒に、フォルテ君はくらりとしそうになります。
 へっちゃらな訳ありません。大丈夫であるはずがないのです。
 だってこんなにもぱっくりと割れた奈落の底に、今自分がしがみついている蔦は、命綱というには余りにも心もとないものでした。
 ふとした拍子に、何かの弾みで、一瞬で切れ落ちて、それでもうおしまいです。
 あの岩場の足場さえ、リタルダンドの底の前では秋の終わりの薄い氷よりなおあっけないものに思えました。

 それでもなんとか必死に必死に下へ。フォルテ君はようやく岩場に降り立ちました。
 横倒しになった馬車によじ登って、その中に入ります。
 立派だった馬車の内装はめちゃくちゃでした。
 ガラス張りの窓は割れ、割れたガラスが革張りの座席を割いて中の綿が見えていました。
 丸かった天蓋はいびつに歪んでひび割れてしまっています。
 そして、そのめちゃくちゃの客車の中に、フォルテ君の麻袋は、転がっていました。

 フォルテ君は直ぐにそれに駆け寄り、中を確かめます。
 きちんと紐で縛ることができる黒い布袋の中に、フォルテくんの母親の遺骨は、確かに無事にありました。
 フォルテ君は、ホッと胸をなでおろします。
 そして、麻袋の口を縛る紐を腕にくくりつけて、袋を肩に担いで、馬車を出ようとしたその時。

 またもや地鳴りの音が遠くから響いてきて、あっという間に馬車はまたも揺れに巻き込まれました。
 ガラリ、と音がしました。その音とともに、世界は大きく傾いでいきます。
 フォルテくんの内蔵が、ふわりと浮き上がる感触がしました。
 馬車が岩場から落ちたか、岩場そのものが崩れたのでしょう。

 フォルテ君は転がる馬車の中を一緒にゴロゴロと転がります。
 ただ胸に、皮脂と麻袋を抱きしめて。母親の骨を抱きしめて。
 足は宙を踏み、目は外につながるドアを見ていました。
 転がる世界の端に、アンダンテさんとプレスト君の姿が見えます。
 二人もやはり揺れに巻き込まれていて、さっきと同じくその場を立ち去るところでした。
 その遠くなる後ろ姿を見て、フォルテ君は思いました。

――行かないで。

 ずん、と音がして、頭にガツンと衝撃が走って、フォルテ君はそのまま暗闇に飲まれていきました。

 川の音がしました。ひんやりとした感触が、首筋を撫でます。
 優しい手つきでした。まるで、小さい頃に寝かしつけてくれた、母親のような。
 もう少し眠っていよう。
 そんな事を思うフォルテ君は、さらに足に当たる冷たい感触に身を震わせます。
 足の次は、腕、腕の次は脇腹。ひんやりとした感触は、体を触る手はどんどん増えていきます。
 フォルテ君は恐ろしくなって目を見開きます。
 そして、その目の前に広がっていたものを見て、大きな叫び声をあげました。

 それは、手の群れでした。
 薄暗い影の中のような川の岸辺で、不気味なほど白い、無数の腕。腕しかないのです。
 仰げば遥か上に線のように青い空が広がっています。そこからずっと伸びて他にぞこまで腕がつながっているのです。

 あの空を細くする崖の壁はリタルダンド渓谷の淵でしょう。上で見たときは対岸とあんなに離れているように見えたのに。
 それだけここが深いということなのか、上から見た時には見えなかった幅の狭い谷が下に広がっていたのか、それはわかりません。
 いずれにしても、谷の出口は到底登れるような高さではありませんでした。
 そして、そんな遥か高みから、白い腕は真っ直ぐに伸びて、いま、フォルテ君の体にまとわりついています。

「うわあ! 何だこれ!」

 うわあ、なんだこれ。

 フォルテ君の叫び声は、そのまま反響し、暗い谷に幾重にも重なって響き、そして消えていきます。
 手の群れは、フォルテ君の声に驚いたように、ビクッと震え、動かなくなります。
 フォルテ君は自分の腕を掴む白い腕を振り払いました。
 すると腕は一斉に、まるで起こったかのように今度は力強く、フォルテ君の体に掴みかかってきました。

「やだ、やめて! 離して!」

 やだ、やめて。離して。

 フォルテ君の声は、虚しい残響だけを残して、消えていきます。

「やめて」

 その消えていくこだまの奥から、凛とした声が響きました。
 女の子の声です。
 そして、足音が二つ、フォルテ君の方に近づいて来るのが聞こえました。

――助けが来たんだ。

 フォルテ君は安堵して、ため息が出そうになりました。

「離して」

 また女の子の声がしました。その声に反応して、手は一斉にフォルテ君の体から離れていきます。
 腕の群れから解放されたフォルテ君は、しばらく自分の周りを囲む手の群れを警戒して睨んでいました。
 しかし、どうやらもう襲って来ることがないと安心すると、その声の方に目を向けます。

 そこには綺麗な女の子が立っていました。
 黒く緩やかに波打つ長い髪。目の色は不思議な緑色をしていました。
 光が少ないせいか色の薄さが際立って青白く光っているように、浮いて見えます。
 そして、その側にカンテラを持つ男性がいます。歳はアンダンテさんと同じくらいでしょうか。
 しかし見事なのはその燃えるような赤い髪の毛です。手に持つカンテラに灯る炎と同じ朱色をした長い髪を背中で一括りにしています。

「君は、いや、あなたたちは?」

 女の子はフォルテ君より少し上くらいでしょうか。少女と言える年齢です。
 二人はただフォルテ君のことをじっと眺めるばかりで、答えようとしません。

「た、助けてくれて、ありがとう。え、えっと、君たちは、助けに来てくれた人、なのかな。それとも、オレと同じように、さっきの崖崩れに巻き込まれた人かな」

 少女と男性は答える気配すらありません。

「お、オレは、フォルテって言うんだ。君、名前は?」

 やっぱり二人とも答えません。もしかして、喋れないのかな、とフォルテ君は考え始めます。
 しかし、さっき少女はフォルテ君を助けるために声を出していました。
 ならば何かしらの決まりがあって、フォルテ君とは口がきけないのかもしれません。
 フォルテ君はアンダンテさんとの旅で、そういう奇妙な風習を持つ村や町をいくつか知っていました。

「あの、気を悪くするかも知れないんだけど、もしかして喋れないのかな、何か、決まりごとがあるとか」

「喋れない」

 少女は即座に今度は答えました。やはり、何か決まり事があるのでしょうか。
 フォルテ君は困り果てて、女の子の顔を眺めました。ふと、なにかの記憶が頭をかすめます。
 フォルテ君は少女の顔にどこか見覚えがありました。

「あの、君、もしかして、どこかで会ってる?」

「会ってる」

 少女はまたもフォルテ君の言葉を繰り返すように答えました。
 もしかして、こっちが言ったことを繰り返さなくちゃいけないのかな、とフォルテ君は考えました。

「はい、か、いいえで答えて。君たちは、オレを助けに来てくれた人?」

「いいえ」

 フォルテ君は確信しました。この少女はこちらが言った言葉しか返事できないのです。
 しかし、それはただ繰り返すだけではなく、ちゃんとこちらの言っていることは通じているようです。
 それが分かってやった、と思う反面、助けではないこともはっきりして、落ち込む気持ちもありました。

「じゃあ、この谷に落ちたの?」

「いいえ」

「じゃあ、どうして?」

 少女は答えません。はいかいいえで答えられる質問ではなくなったからです。
 フォルテ君は自分で意味のない質問をしたと、頭をガリガリと掻きむしりました。
 そして、頭を振り、質問を変えることにしました。
 そういえば、さっき、フォルテ君と少女が会っているというのは、どういうことでしょう。

「君は、オレのことを知ってるの?」

「はい」

「昔に会ってる?」

「はい」

 少女の答えに、フォルテ君はまじまじとその顔を見つめます。
 それは多分、事実なのでしょう。実際フォルテ君自身にも、少女の顔には見覚えがありました。
 でも、それがどこで会っているのか、誰なのかがさっぱり思い出せません。

「まあいいや、そんなのはここから出たあとで考えればいいんだ。ねえ、君、出口を知ってるんでしょう?」

「いいえ」

 少女の答えは簡潔でした。
 そして、その言葉にフォルテ君は薄ら寒いものが心臓に広がっていく感覚を覚えました。

「えっと、この谷に、出口は、ある、よね」

「いいえ」

 心に生えた霜柱が、心臓を裂く音が聞こえた気がしました。

「じゃあ、君たちはどこから来たの?」

 少女は何も答えません。男性はただフォルテ君の方を見つめるばかりです。
 その周りで、垂れ下がる手の群れは、落ち着きなくヒソヒソと蠢くだけでした。



これで三終了です。らくだ様は急がず焦らず四からお書きください。と思いましたがよくよく考えればここからヴィヴァルディのターンなので、初見で書くのは大変かもしれませんからちょっと私が書きますね。しばらくお待ちください。

№114 №115

2015.02.06.[Edit]
今回すごく良かったです。直すところも最小限でした。ツタウスユキソウを伝って降りる場面なんかも考えていた通りで全体的に非常にいい文章でした。ただ、ウスユキソウ達の言葉は少しカットさせていただきました。やっぱりこの谷ぞこで喋れるのはエーデルと、ヴィヴァルディだけにしたいなって言うのがあって。ただ、腕の群れ(ウスユキソウ)にも感情があって、それは手の仕草なんかで表現できればいいなと思います。で、いかが水増...

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 フォルテ君は考え込んでしまいました。
 今、自分がいるのはおそらくはリタルダンド渓谷の谷底です。何とかしてここから脱出しなければなりません。
 しかし、辺りを見回しても、どうやら上に続いているのはあの何本もの白い腕だけで、薄暗い渓谷の底はただ、轟々と音を立てて川が流れているばかりです。

 他には何もありません。

 待っていれば助けが来るでしょうか。
 フォルテ君とすればそれを期待したいところでしたが、助けは来ない予感がしていました。
 まず、フォルテ君は地震による谷の崩落に巻き込まれました。あの隧道もきっともう通れなくなっているでしょう。
 アンダンテさんとプレスト君はあの時には無事だったように見えました。
 しかし、あの後再び地震に巻き込まれ、既に亡くなっているかもしれない、ということはあるかないかで言えば、十分にありえることでした。
 考えたくないことでしたが、もし二人が無事でなければ、助けなど来るはずもありません。

 そして万が一無事であったとしても、やはり助けは来ないのではないか、とフォルテ君は思います。
 崖崩れが広い範囲に渡っているなら、それを掘り返すだけでも相当な時間がかかるでしょうし、何より気がかりなのはあのしきたりの碑文でした。

――落ちたものは捨てていきなさい。
――それは忘れなければならないもの。

 この碑文の指すことが、そのままの意味なら。
 谷底に落ちたフォルテ君は、最初から助からないものとして、アンダンテさんたちはそのままフォルテ君をここに残して先に進んでしまうのではないか。
 大体アンダンテさんたちからすれば、ここでフォルテ君が生きているかどうか、わかるわけがないのです。
 フォルテ君自身、どうして助かったのか不思議なくらいです。

 遥か高みを見上げれば、細い線の形に切り取られる空は遥か遠くにあります。
 あんな場所から転がり落ちて、よく助かったな、とフォルテ君はそれを安心していいものか、それとも厄介なことになったと不安に駆られればいいのか、気持ちを持て余していました。

 フォルテ君は川の岸辺で白い手たちとまるでおしゃべりをするように、その手を撫でたり握ったりする少女を振り返りました。
 白い手たちはなにか乱暴をすることもなく、どちらかといえば、嬉しそうに、その触れ合いを楽しんでいるように見えました。
 それは、今、あるいは昨日今日、ここに来た人の動きではありません。
 明らかに少女はその手とのふれあいに慣れていましたし、手たちも、それを受け入れています。
 つまり、それはそれだけ長い時間を、あの少女はここで過ごしていることを示していました。

「ううん」

 フォルテ君は一つ唸って、川の岸辺に座り込み、その水面をじっと見つめました。
 流れる川は、不思議な色をしています。川底が見えないくらいに水量は多く、激しく流れています。
 その流れをぼんやりと眺めていると、その奥に何かが浮かび上がってきました。
 なんだろうと思って、フォルテ君は目を凝らします。

――こんにちは、あなたの名前は?

 おぼろげな輪郭が、水面に像を結んでいきます。黒い髪の、かすれた緑色の目をした女の子。

――私のことは、お姉ちゃんって呼んで。私もあなたのこと、本当の弟だと思うから。

――仲良くしましょうね。

――お互い、お父さんたちが帰ってくるまで。

 女の子は笑い、こちらに手招きをします。

――ほら、素敵なお家でしょう? 見て、あの花畑。真っ白な花が咲いてて、すごく綺麗でしょ。

――エーデルワイスって言うんだよ。

――気高い白っていう意味なの。

「やめなさい」

 肩を叩かれてフォルテ君はハッとします。
 振り返ると、あの少女の側にいた赤毛の男性がフォルテ君の隣に立っていました。
 この薄暗い谷底の中でも、眩しいほどに明るい赤毛。肌は白く、鼻筋の通った整った顔は、まるで人形のようでした。

「この川はモルダウという川だ。すべての世界の記憶、過去、思念、思い出、そういうものが一緒くたにここを流れ去っていく。未来の水源から、忘却の海を目指して真っ直ぐに流れていく懐かしき川。見入ると、招かれてしまう。そして一度この川に入ってしまえば、出るのは容易なことではない」

 抑揚に乏しく、しかし流暢に喋る男性に、フォルテ君はびっくりして口をパクパクさせてしまいます。

「しゃ、喋れるんですか?」

「喋る? それが言葉を発したものの発言の内容とその意図を慮り、しかるべく応答のために口からものを言う、その言葉の応酬ができるか、という意味なら、もちろん私は喋ることができる。できないと誰かが言ったか。私が喋ることができないと推論する論拠が何かあったか」

 赤毛の男性は無機質な言い方で一息に言います。
 フォルテ君にはやや難しい言葉が多く、言っていることを理解するのに、少し時間がかかってしまいます。

「でも、あの子は」

「あの子?」

「あの……」

 赤毛の男性が怪訝そうにするので、フォルテ君は手と戯れる少女を指さします。

「ああ、彼女はこだまだ。やまびこだ。こちらの言った言葉の中で、返答に使える音しか返すことができない。私はもっぱらエコーと呼んでいるが、それは彼女の本当の名前ではない」

「エコー……。あなたは?」

 あなたの名前は、という意味だったのですが、赤毛の男性は意図を組めないようで、首を傾げます。
 どうにも奇妙な間がお互いに空いてしまいます。
 フォルテ君には、この男性の言うことは少し難しすぎ、フォルテ君の言うことは、赤毛の男性にはいささか言葉が足りないようでした。

「あなたは、何ていう名前なんですか」

「私の名前、今更そんなことに意味があるとも思えないし、私の名前は時代の変遷とともに増えていく一方で、何を自分の名前とすればいいのか、明確にこれが正解とわかるものはない。アルディヴィーヴァ・リカンテ、インセグナンテ・ディ・オスピダーレ・デッラ・ピエタ、バンビーノ・ディ・ベネチア、バスタルド・エレティコ、あるいは、イル・プレーテ・ロッソ、アントニオ・ヴィヴァルディ……」

 さらにブツブツと呟き続ける赤毛の男性の言葉に、フォルテ君は何か聞き逃せない言葉が紛れていた気がしました。

「ん、あれ、今……、アントニオ・ヴィヴァルディって言いました?」

「言ったかどうか、それはもはや過去になってしまったことだ。言葉は発したその瞬間から、中空に消え、音声はエコーを残してどこかへ去ってしまう。音はどこに消えていくのか。それを留めておく方法はないのか。それが歌であり、楽譜の意義だ」

 また別の話に展開していく男性をフォルテ君は慌てて止めます。

「ちょっと待って! あの、本当に、少しいいですか、あなた、あの、『赤毛の司祭(イル・プレーテ・ロッソ)』のアントニオ・ヴィヴァルディなんですか?」

 すると男性は、ちらりとだけその赤銅の瞳でフォルテ君を見ました。

「そう呼ばれていた過去も、確かに存在する」

「そんなわけ無い! だって、アントニオ・ヴィヴァルディは確か、五百年前に死んでるはず!」

「死んでいるものがいてはおかしいだろうか。そんなことはない。なぜならここは忘却の谷間で、流れているのは過去の川なのだから。ここには全ての忘れ去られた存在が等しくある。私も既に人々にとっては忘却の淵から思い出される存在になっている。だからここにいる。ここにしかいられない」

 赤毛の司祭は静かに答えました。
 その言い方は余りにも平坦で棒のような言い方でしたが、少しだけ、寂しそうでもありました。
 フォルテ君は興奮と混乱で頭の中がこんがらがってしまいそうでした。
 自分はもしかしたらこれでこのまま死んでしまうかもしれないのに、今目の前にいるのは、あのアンダンテさんが追い求めてやまない免罪譜の作者なのです。

――この人を連れ帰れば、免罪譜はいくらでも手に入る。いや、でも、そもそも帰る方法があるだろうか。大体この人たちは一体、どうやって暮らしているんだろう。暮らしてきたんだろうか。

 そして、その時、フォルテ君はある当然の疑惑に行き着きました。

「あの、もしかしてここって、死後の世界とかですか? オレ、実は死んでて、だから五百年前に死んだ司祭様がここにいらっしゃるんですか?」

 むしろこれまで自分が助かったと考えるより、余程ここの光景は、その死後の世界にふさわしいものでした。
 冥府の入口には川が流れているというし、上から垂れ下がる手の群れも、地獄の亡者というには相応でした。

「いいえ」

 後ろから声がしました。
 少女がいつの間にかこちらにやってきて、ブンブンと首を横に振っています。それだけはないのだ、と強く主張するように。

「あなた、は、死んで、ない」

 少女はとぎれとぎれに言います。おそらくは、フォルテ君がさっきまで話していた言葉の中から、自分が使いたい言葉を繋げて。
 それはぎこちない言い方でしたが、それだけに必死さが伝わって、信用できるものに思えました。

「オレは、生きてるの?」

「はい」

 フォルテ君の言葉に、少女は力強く頷きます。
 それを見て、フォルテ君はホッと胸をなで下ろしました。
 それから弾かれたように顔を上げ、少女の方を見つめます。

「君たちは――」

 生きているの、と言いかけて、フォルテ君はそのまま続きを言えませんでした。
 少女はそれを見て、その淡い緑の瞳をふ、と緩ませて、困ったように笑い、首を横に振りました。
 フォルテ君はごめん、と俯いて答えます。すると、少女はフォルテ君の焦げ茶色の癖毛を優しく撫でました。
 頭に触れてくる感触は、雪と同じ冷たさをしていました。
 それは紛れもなく、少女の命が既にないものだということを、何よりも雄弁に語っていました。


続きです。もうちょっと四の内容を盛り込んで文章を増やしてとりあえず待ってみようとフォルテくんが思うところまで持っていきたいんですがひとまず続きをらくだ様にお願いしたいです。

そして今後のことというか、ラストの話ですが、虹とかっていう庵もあったんですが、エーデルワイスの花が咲くっていうのもいいなと思いました。そもそもツタウスユキソウは一応架空の植物なので、何年かに一度いっせいに咲いて綿毛を飛ばして種をまくとかでもいいと思ったり。で、腕たちはフォルテ君たちが罪の釣瓶を登るのを手伝ったことで自らの因果を果たして昇天するわけなんですが、エーデルの埋葬とともに、隧道を覆うツタウスユキソウが一斉に開花して、その綿毛がリタルダンドの谷間をわたっていくエンドとかもありだなと思ったりしました。とりあえず思いつきついでに。

№119

2015.02.17.[Edit]
四 フォルテ君は考え込んでしまいました。 今、自分がいるのはおそらくはリタルダンド渓谷の谷底です。何とかしてここから脱出しなければなりません。 しかし、辺りを見回しても、どうやら上に続いているのはあの何本もの白い腕だけで、薄暗い渓谷の底はただ、轟々と音を立てて川が流れているばかりです。 他には何もありません。 待っていれば助けが来るでしょうか。 フォルテ君とすればそれを期待したいところでしたが、助...

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 フォルテ君は考え込んでしまいました。
 今、自分がいるのはおそらくはリタルダンド渓谷の谷底です。何とかしてここから脱出しなければなりません。
 しかし、辺りを見回しても、どうやら上に続いているのはあの何本もの白い腕だけで、薄暗い渓谷の底はただ、轟々と音を立てて川が流れているばかりです。

 他には何もありません。
 待っていれば助けが来るでしょうか。
 助けは来る、とは思いたいところでしたが、考えてみれば、考えてみるほど、助けは来ないような気がしてなりませんでした。

 まず、フォルテ君は地震による谷の崩落に巻き込まれました。フォルテ君の目の前であの隧道もろともに崩れてしまったのです。
 それは、誰かが助けに来るにしても、まずあの崩落を掘り起こさなければならないことを意味します。
 つまり、今すぐに、というわけには行かないことは間違いありません。

 また、アンダンテさんとプレスト君はあの時には無事だったように見えました。
 しかし、あの後再び地震に巻き込まれ、既に亡くなっているかもしれない、ということはあるかないかで言えば、十分にありえることでした。
 考えたくないことでしたが、もし二人が無事でなければ、助けなど来るはずもありません。

 そして万が一、二人が無事であったとしても、二人は助けには来ないのではないか、という漠然とした、それでいて確信めいた思いがフォルテ君の中にありました。
 それは決して、フォルテ君があの二人に不信を抱いている、ということではありません。
 何より気がかりなのはあのしきたりの碑文でした。

――落ちたものは捨てていきなさい。
――それは忘れなければならないもの。

 この碑文の指すことが、そのままの意味なら。
 谷底に落ちたフォルテ君は、最初から助からないものとして、アンダンテさんたちはそのままフォルテ君をここに残して先に進んでしまうのではないか。
 大体アンダンテさんたちからすれば、ここでフォルテ君が生きているかどうか、わかるわけがないのです。
 フォルテ君自身、どうして助かったのか不思議なくらいです。

 遥か高みを見上げれば、細い線の形に切り取られる空は遥か遠くにあります。
 あんな場所から転がり落ちて、よく助かったな、とフォルテ君はそれを安心していいものか、それとも厄介なことになったと不安に駆られればいいのか、気持ちを持て余していました。

 フォルテ君は川の岸辺で白い手たちとまるでおしゃべりをするように、その手を撫でたり握ったりする少女を振り返りました。
 白い手たちはなにか乱暴をすることもなく、どちらかといえば、嬉しそうに、その触れ合いを楽しんでいるように見えました。
 それは、今、あるいは昨日今日、ここに来た人の動きではありません。
 明らかに少女はその手とのふれあいに慣れていましたし、手たちも、それを受け入れています。
 つまり、それはそれだけ長い時間を、あの少女はここで過ごしていることを示していました。

「ううん」

 フォルテ君は一つ唸って、川の岸辺に座り込み、その水面をじっと見つめました。
 流れる川は、不思議な色をしています。川底が見えないくらいに水量は多く、激しく流れています。
 その流れをぼんやりと眺めていると、その奥に何かが浮かび上がってきました。
 なんだろうと思って、フォルテ君は目を凝らします。

――こんにちは、あなたの名前は?

 おぼろげな輪郭が、水面に像を結んでいきます。黒い髪の、かすれた緑色の目をした女の子。

――私のことは、お姉ちゃんって呼んで。私もあなたのこと、本当の弟だと思うから。

――仲良くしましょうね。

――お互い、お父さんたちが帰ってくるまで。

 女の子は笑い、こちらに手招きをします。

――ほら、素敵なお家でしょう? 見て、あの花畑。真っ白な花が咲いてて、すごく綺麗でしょ。

――エーデルワイスって言うんだよ。

――気高い白っていう意味なの。

「やめなさい」

 肩を叩かれてフォルテ君はハッとします。
 振り返ると、あの少女の側にいた赤毛の男性がフォルテ君の隣に立っていました。
 この薄暗い谷底の中でも、眩しいほどに明るい赤毛。肌は白く、鼻筋の通った整った顔は、まるで人形のようでした。

「この川はモルダウという川だ。すべての世界の記憶、過去、思念、思い出、そういうものが一緒くたにここを流れ去っていく。始まりはあれど終わりは無い悠久の大河。全ての人の過去に存在する懐かしき川。見入ると、招かれてしまう。そして一度この川に入ってしまえば、出るのは容易なことではない」
 抑揚に乏しく、しかし流暢に喋る男性に、フォルテ君はびっくりして口をパクパクさせてしまいます。

「しゃ、喋れるんですか?」

「喋る? それが言葉を発したものの発言の内容とその意図を慮り、しかるべく応答のために口からものを言う、その言葉の応酬ができるか、という意味なら、もちろん私は喋ることができる。できないと誰かが言ったか。私が喋ることができないと推論する論拠が何かあったか」

 赤毛の男性は無機質な言い方で言います。

「ここはどこですか? あなたたちはどうしてここにいるんです? どうやったらここから出られますか? オレ、帰らないといけないんです!」

 話が通じる人がいたという事実にフォルテ君は興奮気味に一息に赤毛の男性に詰め寄ります。男性は冷ややかな目でただフォルテ君を見つめ、一つため息をついてから、フォルテ君の胸を押し返すようにして、少し離れます。

「ここはリタルダンドの谷底。東と西の境、過去と未来の境、男と女の境、大人と子供の境、君と私の境。ありとあらゆる背反する二律のその狭間。決して相容れぬ深い溝。その奈落だ。ここには過去になったものだけが滞留している。私もそうだ。もうシからは随分と長い月日が経つが、私はこの谷底で永遠にとどまり続けるだろう」

「でも、あの子は」

「あの子?」

「あの……」

 赤毛の男性が怪訝そうにするので、フォルテ君は手と戯れる少女を指さします。

「ああ、彼女はこだまだ。やまびこだ。こちらの言った言葉の中で、返答に使える音しか返すことができない。私はもっぱらエコーと呼んでいるが、それは彼女の本当の名前ではない」

「エコー……。あなたは?」

 あなたの名前は、という意味だったのですが、赤毛の男性は意図を組めないようで、首を傾げます。
 どうにも奇妙な間がお互いに空いてしまいます。
 フォルテ君には、この男性の言うことは少し難しすぎ、フォルテ君の言うことは、赤毛の男性にはいささか言葉が足りないようでした。

「あなたは、何ていう名前なんですか」

「私の名前、今更そんなことに意味があるとも思えないし、私の名前は時代の変遷とともに増えていく一方で、何を自分の名前とすればいいのか、明確にこれが正解とわかるものはない。アルディヴィーヴァ・リカンテ、インセグナンテ・ディ・オスピダーレ・デッラ・ピエタ、バンビーノ・ディ・ベネチア、バスタルド・エレティコ、あるいは、イル・プレーテ・ロッソ、アントニオ・ヴィヴァルディ……」

 さらにブツブツと呟き続ける赤毛の男性の言葉に、フォルテ君は何か聞き逃せない言葉が紛れていた気がしました。

「ん、あれ、今……、アントニオ・ヴィヴァルディって言いました?」

「言ったかどうか、それはもはや過去になってしまったことだ。言葉は発したその瞬間から、中空に消え、音声はエコーを残してどこかへ去ってしまう。音はどこに消えていくのか。それを留めておく方法はないのか。それが歌であり、楽譜の意義だ」

 また別の話に展開していく男性をフォルテ君は慌てて止めます。

「ちょっと待って! あの、本当に、少しいいですか、あなた、あの、『赤毛の司祭(イル・プレーテ・ロッソ)』のアントニオ・ヴィヴァルディなんですか? 免罪譜の、『調和の霊感』の作者の!」

 すると男性は、ちらりとだけその赤銅の瞳でフォルテ君を見ました。

「そう呼ばれていた過去も、確かに存在する」

「そんなわけ無い! だって、アントニオ・ヴィヴァルディは確か、五百年前に死んでるはず!」

「死んでいるものがいてはおかしいだろうか。そんなことはない。なぜならここは忘却の谷間で、流れているのは過去の川なのだから。ここには全ての忘れ去られた存在が等しくある。私も既に人々にとっては忘却の淵から思い出される存在になっている。だからここにいる。ここにしかいられない」

 赤毛の司祭は静かに答えました。
 その言い方は余りにも平坦で棒のような言い方でしたが、少しだけ、寂しそうでもありました。
 フォルテ君は興奮と混乱で頭の中がこんがらがってしまいそうでした。
 自分はもしかしたらこれでこのまま死んでしまうかもしれないのに、今目の前にいるのは、あのアンダンテさんが追い求めてやまない免罪譜の作者なのです。

――この人を連れ帰れば、免罪譜はいくらでも手に入る。いや、でも、そもそも帰る方法があるだろうか。大体この人たちは一体、どうやって暮らしているんだろう。暮らしてきたんだろうか。

 そして、その時、フォルテ君はある当然の疑惑に行き着きました。

「あの、もしかしてここって、死後の世界とかですか? オレ、実は死んでて、だから五百年前に死んだ司祭様がここにいらっしゃるんですか?」

 むしろこれまで自分が助かったと考えるより、余程ここの光景は、その死後の世界にふさわしいものでした。
 冥府の入口には川が流れているというし、上から垂れ下がる手の群れも、地獄の亡者というには相応でした。

「いいえ」

 後ろから声がしました。
 少女がいつの間にかこちらにやってきて、ふるふると首を横に振っています。それだけはないのだ、と強く主張するように。

「あなた、は、死んで、ない」

 少女はとぎれとぎれに言います。おそらくは、フォルテ君がさっきまで話していた言葉の中から、自分が使いたい言葉を繋げて。
 それはぎこちない言い方でしたが、それだけに必死さが伝わって、信用できるものに思えました。

「オレは、生きてるの?」

「はい」

 フォルテ君の言葉に、少女は力強く頷きます。
 それを見て、フォルテ君はホッと胸をなで下ろしました。
 それから弾かれたように顔を上げ、少女の方を見つめます。

「君たちは――」

 生きているの、と言いかけて、フォルテ君はそのまま続きを言えませんでした。
 少女はそれを見て、その淡い緑の瞳をふ、と緩ませて、困ったように笑い、首を横に振りました。
 フォルテ君はごめん、と俯いて答えます。すると、少女はフォルテ君の焦げ茶色の癖毛を優しく撫でました。
 頭に触れてくる感触は、雪と同じ冷たさをしていました。
 それは紛れもなく、少女の命が既にないものだということを、何よりも雄弁に語っていました。
 フォルテ君は自分の髪をなでるその手を、そっと握ります。

――小さな手だな。

 自分の荒れた手と比べ、そんなことを思いました。
 白くて、冷たくて、サラサラとして、本当に雪のように、気が付けば溶けてなくなっているのではないか、そんな儚さを感じさせます。
 それから老若男女の白い手の野原を見渡します。皺だらけの手、子供の手。
 爪に色をつけた綺麗な手、ゴツゴツと節くれだった強そうな手。一つとして同じ手はありません。
 そして、そのどれもが既に亡くなった人たちのその手なのです。

 谷に落ちて忘れられていった、その数。
 忘れられていった、その因果の数。

 自分もずっとここにいたら、あの腕のようになってしまうに違いない。
 なんとなく慄然とするものに背筋を震わせていると、手を握られたままの少女が、恥らうようにフォルテ君の手を見て、頬を染めまているのに気づきました。

「ご、ごめん!」

 慌てて手を引っ込めようとしたフォルテ君ですが、何故か彼女は手を離しません。

「どうしたの?」

 すがるような瞳が、だんだんに潤んでいきます。
 その口は、何かを言いかけて、結局言葉にはできないままに、少女は口をつぐんでしまいます。
 はっきりと感じる、既視感。
 そうだ、そうだった。あの子はいつも、こうしていた。
 フォルテ君の頭の中にいる少女も、いつもそうやって、何かを言いたそうにしては、結局言えないままに、悲しそうに口をつぐんでいたのです。
5分前 No.122 
投稿しました。
( 3907文字 / 獲得金貨 6枚 金貨 )
ゴン @gorurugonn ★yRn10TRCWH_VrM

――この子は、あの子なんだ。

 フォルテ君が忘れている誰か。忘れているまま、思い出せないでいる誰か。
 思い出さなくちゃいけない、ちゃんと思い出さなくちゃいけないんだ、とフォルテ君は自分の頭の中のページを猛然とまくり出しました。
 見つめる少女の淡い緑の瞳の奥から、フォルテ君のこれまでの記憶が溢れてくるようでした。
 フォルテ君はその目に魅入られるように自分の記憶を過去へ、過去へとさかのぼります。

 アンダンテさんと旅してきた町々、出会ってきた人々。通ってきた道々、祈ってきた旅路。アンダンテさんと出会ったあの焼け落ちた街。
 自分が追い剥ぎをしてきた燃えかすの荒野。アンダンテさんのバイオリンに手をかけたあの日。その前のこと――。

――思い出せない。思い出せない。

 フォルテ君の記憶の旅路は、そこから先に進むことができません。
 なぜ自分はあの廃墟にいたのか。どうして一人であそこにいたのか。何一つ、覚えていないのです。

 フォルテ君は、最初から母親の遺骨とともにあって、それを埋めてやりたいのにそれができないという思いだけ残ったまま、そこにいたのです。
 どうしてそこにいたのか、そもそも母親の遺骨と思っているけれど、本当はそれさえ確かなことではないのです。
 間違いなくこれはフォルテ君の母親の遺骨なのだ、という確信はありました。でもフォルテ君は、その母親の顔さえ、思い出せないのです。

――何だ、これは。

 フォルテ君は自らの記憶の欠落に愕然としました。フォルテ君は、実は自分が誰なのか、ということさえ分かっていないのです。
 分かっていないままに、ずっと旅を続けていました。そのことを疑問に思うことさえありませんでした。
 それがどれほど恐ろしいことか、フォルテ君はこの時初めて知りました。

――オレは、誰なんだ。どこで、どうやって生きてきた。

 フォルテ君はまた、記憶の海に意識を潜らせます。
 無意識のうちに、フォルテくんの足は、そばを流れるモルダウの流れへと向かって行きました。
 まるでその川の中に知りたい答えがあるかのように。

――やめて。

 後ろで少女が制止の声を上げます。でも、もうフォルテ君にはそれも届きません。
 フォルテ君は川の淵に立ち、その水面を覗き込みます。

――母さん。

 フォルテ君は、その水の底から抱きしめるようにフォルテ君に伸ばされる白い腕を幻視しました。
 そして、引き込まれるように、その川の中に身をゆだねてしまいます。

――目の前に広がっていたのは白い峰と丈の低い緑の草。その先端に咲く、白い小さな花。

 そして、その中に佇む、一軒の家。家の中では、お母さんがスープを火にかけて、子供の帰りを待っています。

――そうだ、ここだ。オレはここにいたんだ。母さんと一緒に、あの子と一緒に。

 白い花畑で、黒い波打つ髪を風に遊ばせて、少女は花の冠を編んでいます。その後ろから、少女を呼びます。

――お姉ちゃん。

 少女が振り返ります。その顔は、その顔は――。

 ゴボ、と音を立てて、フォルテ君の口から大きな空気の塊が吐き出され、代わりに入ってきた大量の水にむせ返る感覚に、フォルテ君はようやく我に返りました。
 気が付けば周りは、濁流の中です。自分は溺れているんだと認識するより先に、フォルテ君はがむしゃらに水を掻き出します。
 とにかく上へ、酸素のあるところへ。
 しかしそんな必死のフォルテ君を笑うかのように、水は大いなる力でフォルテ君をさらに深いところへ押し流そうとします。

――ダメだ、もう、息が。

 その時でした。

「やめて」

 水の中にいるフォルテ君の耳にも、はっきりとその声が届きました。
 フォルテ君だけではありません。おそらくフォルテ君を取り巻いている水にも、この川そのものにも、その声は届いたのです。
 まるで聖人がなす奇跡のように、その言葉とともに一斉に川の水はフォルテ君の周りから引いて、フォルテ君は水から解放されました。
 ふと辺りを見ると、川の流れが大きく割れて、フォルテ君と少女を結ぶ線の形に水が壁を造っています。
 少女は川の淵でフォルテ君に手を差し伸べました。
 フォルテ君は大慌てで川底を蹴って、その手を取って川からあがります。
 フォルテ君が川から上がると、水はまた元のように、裂け目を埋めて、流れ去っていきます。
 不思議なことに、フォルテ君の体は水が引いた瞬間に、全く濡れることなく、溺れてなどいないかのように乾いていました。
 それはきっと、この川が水の流れる川ではなく、過去の流れる川だからなのでしょう。水のように見えても、それは水ではないのです。

「はぁ、はぁ、ありがとう、お姉ちゃん」

 肩で息をしながら、フォルテ君は少女に言いました。
 少女はフォルテ君の目を一度見て、すぐに逸らします。
 傍らに赤毛の司祭が寄ってきました。

「見てはいけないといったはずだ。あの川の流れも、そしてエコーの瞳も、見入ってはいけない。君は生きている人間なのだから。過去に旅をしてはいけないのだ。いくら君とエコーが繋がっているとはいえ、君が今その事実を忘れているなら、それは忘れていなければならないこと。それを思い出すということは、エコーと同じものになるということだ。君にとっては、死に等しい。死にたいのか、君は」

「まさか! オレはただ、自分が忘れてることを、思い出したいだけです。自分が誰なのか、ちゃんと知りたいだけです」

「それが罪なのだよ。君が望んで忘れてしまったことを、君は再び望んで思い出そうとしている。思い出せば君はきっとまた忘れたいと思うに違いない。そうやって思い出しては忘れ、忘れては思い出す。そんな繰り返しのたびに、エコーはずっと、君を支えてやらなければならなくなる。それは死者に拷問を課すようなものだ」

「そんな、こと……」

 おそらく、その通りなのでしょう。フォルテ君は今、自分が忘れていることを思い出したいと思っています。
 しかし、なぜそのことを忘れてしまったのかといえば、きっとそれはフォルテ君がそのことを忘れたいと思ったからに違いないのです。
 あるいは忘れなければ辛すぎることだったのかもしれません。
 どちらにせよ、忘れたままでフォルテ君はこれまでずっと、旅を続けていたことに違いなく、それで困ったこともなかったのです。

 だとすれば、それはもしかしたら、本当に忘れていたほうがいいことなのかもしれません。
 思い出そうとすれば苦しみ、思い出してしまえばさらに苦しくなることかもしれません。
 フォルテ君は司祭の顔をうかがうと、司祭は目を伏せて、首を横に振りました。長い赤毛がさらりと揺れます。

「……ここにいる人たちの思いは、何処に向かうの?」

「どこにも向かわない。この川は永遠に川のままだ。海へも続いていないし、終わりがあるわけでもない。過去に始まりはあっても終わりは無い。過去の川は世界を二つに割って丸い世界を永遠に流れ続ける。ありとあらゆる過去は全て、この川へと流れ着き、そしてこの川に流れ着いたものは、ここからどこへも向かうことはない。どこかへ向かう必要もない。過去はただ過去としてそこにあれば良いのだ。それを憂うこともない。それなのに人は、しばしば過去に縛られたがる。本当はそんなものは現在と、そして未来になんの関わりもないことなのに。今の君のように、そしてエコーのように」

 司祭は少女をその赤銅の瞳で見つめました。少女はただ、元の静寂に戻った川を、その淵に立って眺めています。

「彼女にとっては君が。君にとっては彼女が。お互いを過去につなぎとめている。それは井戸の釣瓶のようだ。どちらか片方が上にあるためには、もう片方は過去のそこに沈んでいなければならない。エコーは君が未来にいるためにここにいたのだ。その君がここに来たということは、あるいはエコーが再び未来に戻る日がやってきたということかもしれない」

「それって……」

 それはフォルテ君が、この谷底でずっととどまり続けなければならないという意味ではないでしょうか。
 そしてその代わりに、少女がこの谷を出ていくという。
 フォルテ君を引換にして、彼女が掬い上げられる、そういう意味に聞こえました。

「ところで君は珍しいものを持っているね」

 司祭が顎をかきます。

「なかなか罪深い者と知り合いのようだ。恐れ多くもこの過去の川から、過去になったものをすくい上げようと試みる不届きな命綱だ。実に罪深い」

 それから自然な動きで、フォルテ君のポケットから封筒を抜きます。
 あまりの手際の良さに追いはぎをしていたフォルテ君でさえ、警戒すらできませんでした。
 それはアンダンテさんから預かっていた、遺書でした。
 取り返そうかと思いかけて、やめました。自分で読める自信がなかったのです。

 司祭は封筒を開き、中を見て一つ頷いて笑います。
 それは司祭が初めて見せた表情らしい表情でした。
 喜びや嬉しさなどから出る笑顔ではなく、ひたすら冷笑的で、どこか冷めて、呆れたような顔をしていました。

「おめでとう。君は嵌められている」

 司祭は中に入っていた紙の束をフォルテ君に差し出しました。
 入っていたのは数枚の白紙の五線譜と、短く言葉が添えられた一枚の紙。
 そこには確かにフォルテ君に読める文字で、言葉が書かれていました。

――すまない。

 余りにもわかりやすく、簡潔な一言。そして、その言葉の意味するところは、フォルテ君にもすぐに理解できました。
 アンダンテさんは、フォルテ君が谷底に落ちることを知っていたのです。いいえ、最初からフォルテ君を、落とすつもりだったのかもしれません。
 フォルテくんの耳に、吹きすさぶ冬の風の音がこだまします。

――いかないで。


とりあえず四パートを終わらせました。下書きが自動更新で消えてしまってお待たせしていてすみません。
さらにお待たせすることになりますが、これから五の冒頭に入ります。らくだ様にはもうしばらくお待ちいただければ幸いです。

№122 №123

2015.02.28.[Edit]
四 フォルテ君は考え込んでしまいました。 今、自分がいるのはおそらくはリタルダンド渓谷の谷底です。何とかしてここから脱出しなければなりません。 しかし、辺りを見回しても、どうやら上に続いているのはあの何本もの白い腕だけで、薄暗い渓谷の底はただ、轟々と音を立てて川が流れているばかりです。 他には何もありません。 待っていれば助けが来るでしょうか。 助けは来る、とは思いたいところでしたが、考えてみれば...

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 一方でアンダンテさんたちは、既にリタルダンド渓谷を抜け、その先にある街にたどり着いていました。
 既に日はとっぷりと暮れ、夜になっていました。二人とも、崩落以降一言も口を聞いていませんでした。
 あえて話すこともなかったからです。
 馬車がなくなった以上その場にとどまっていることはできませんでしたし、アンダンテさんとプレスト君の二人だけで、フォルテ君を助け出すことは不可能だと、二人とも分かっていたのです。
 いいえ、これが二人だろうと、何人がかりだろうと、リタルダンドの底に落ちてしまったものを掬い上げることはできません。
 フォルテ君のことは、諦めるしかないのです。言葉にはしませんでしたが、少なくともプレスト君はそのことを確信していました。

 リタルダンド崩落の旨は既にこの街にも届いており、隧道復旧のための工作隊は明日にでも出発するようでした。
 しかし、アンダンテさんは彼らにも、自分の連れの子供が谷底に落ちたということを、伝えてはいませんでした。
 その二人がようやく口をきいたのは、その街のリタルダンド渓谷にほど近い宿屋、金の鶏亭の酒場の席でした。
 プレスト君は重い音を立てて酒瓶を乱暴に置きました。テーブルが揺れ、置かれたワインが杯から数滴こぼれます。
 プレスト君は卓を叩いて、目は鋭くアンダンテさんを睨みます。

「わざとだな?」

 アンダンテさんは素知らぬ顔でパイプを燻らせていました。何も語りません。

「坊主が落ちた時、お前どんな顔をした? 何て言った? 謝ったな? すまないだと? ふざけんな!」

「怒鳴るのじゃないよ、まあ君の馬車については悪いことをしたと思っているがね」

「馬車のことなんざどうでもいい! あの小僧はお前の許しのための、免罪譜を得るための道具じゃねえ! どういうつもりだ!」

 アンダンテさんは生気の欠片もない目で、ようやくプレスト君のそれと合わせます。

「この町にある『亡者の罪』と呼ばれる底なしの井戸を知っているかね?」

 プレスト君は眉根を寄せます。知らない名です。

「そもそも君は、リタルダンドの谷底がどういうものだか知っているかね」

「俺はあんたから地理の講義を受けるつもりはないぞ。回りくどい話より、目的をはっきりさせろ」

 プレスト君はハンチングの下で、その深紅の瞳を歪ませます。アンダンテさんはため息を一つつくと、目を伏せて話し始めました。

「いいから聞きたまえ。リタルダンドには、この世界のありとあらゆる過去が偏在している。今はもうなくなってしまった物、亡くなってしまった人、滅びてしまった街そのものが、あの谷底には一緒くたに同居しているのだ。しかし、だからといってリタルダンドから、過去になってしまったものを引きずり出すことなど、普通はできない。しかし、件の井戸は、それを可能にする。何かを引換に谷底に落とすことで、何かを過去の谷から引き戻すことができる。私はフォルテ君に、あるものをあそこから持ち帰って欲しいのだよ」

「あるもの?」

 プレスト君は怪訝そうに眉をひそめます。

「――免罪譜か? 確かに免罪譜は今や散逸して、現存しないとされている。なら、それがリタルダンドにあってもおかしくはない。そこからあの小僧にヴィヴァルディの免罪譜を探させるつもりなのか?」

「君がそう思うのならば、そういうことでも構わない」

「はぐらかすな。仮にあの谷底に免罪譜があるっていうのはいいが、それを小僧が見つけたとして、あいつはどうやってあの谷から帰ってくるんだ? 助けになんていけないんだぞ。いや、そもそも今生きてるかどうかすら、わからない」

「生きているさ」

 アンダンテさんは確信に満ちた言い方で言いました。プレスト君には、なぜそこまで自信を持てるのかは今ひとつわかりません。

「生きていて、今頃ヴィヴァルディに会っているだろう。そして、彼の方でもそろそろ私が預けたものを見て――まあ、悲嘆に暮れてはいるかもしれないね」

 遺書のことか、とプレスト君は尋ねます。アンダンテさんは髭をなでつつ、その通りと答えました。

「何を書いたんだ」

「懺悔だよ。フォルテ君が戻ってくるための舞台は既に整っている。あとは役者が立つだけだ」

 舞台、とプレスト君は憎々しげにアンダンテさんの言葉を繰り返します。

「その舞台が、この町の井戸ってことかよ」

「ご明察」

「亡者の罪だと?」

「そう。あとはフォルテ君が持って来てくれるのを待つばかりだ」

 アンダンテさんがそう言った瞬間、プレスト君は机の上に乗っていた酒瓶を横に殴りつけ、吹き飛ばしました。
 酒瓶はものすごい音を立てて壁にぶつかり、辺りに中身を撒き散らします。

「ふざけんじゃねえ!」

 プレスト君はアンダンテさんの襟首を掴んでそのまま立ち上がります。その赤い目はそのまま怒りの炎に染まっています。

「あんたは、自分が免罪譜を手に入れたいだけじゃねえか! そのために何も知らないあの小僧を、引き換えにするためにリタルダンドに落としたっていうのか! 自分の罪が許されるなら、そんな恥知らずな真似をしても、知ったこっちゃないってか! そんなの俺が許さねぇ! 許されるわけもない!」

「やめたまえよプレスト君、人が見ているじゃないか」

 アンダンテさんはその黒い瞳を歪めることもなく、涼しそうな顔で静かに言います。
 プレスト君は自分の怒りが濡れ手に粟だと知ると、悔しそうに吐き捨てて、アンダンテさんを離しました。

「俺はあんたのそういうところが大嫌いだ。自分がやっていることの罪深さを自覚していて、自覚していることで許されると思ってる。自分の罪の重さを知らないのはそれ自体が確かに罪だ。だが、あんたのしてることは、罪の重さを自覚しているからって許されることじゃない! いや、罪の重さを充分に分かっているなら、やめるべきなんだ。なのにあんたはいつだってその罪を犯す。許されないとわかっていながら」

「我ながら、不器用なことだと思うよ。許してくれともわかってくれとも言わないがね。口出しするなとは言わせてもらうよ。この話は私たちの話であって、君は巻き込まれた第三者に過ぎないのだからね。馬車の件といい、負債に巻き込んでしまってはいるが、それでも君に口を出す権利はないのだ。お金なら、あるだけ持っていくといい」

「冗談じゃねえ。あんたの顔は見たくねえが、あの小僧はせめて後一目見ておかないと、このままじゃ腹の虫が収まらねえ。せいぜい、あんたの舞台ってやつを幕切れまで見させてもらうぜ。陳腐な脚本だと笑ってやる」

 そう言ってプレスト君は席を立ちました。そのまま階段を登って二階の自室に戻っていきます。
 アンダンテさんはしばらく一人残って、ただ、机の上に灯るろうそくの火を、じっと眺めていました。

「――我ながら、不器用なことだと思うよ」

 プレスト君はそのままふて寝するように部屋の鍵をかけて、アンダンテさんが入りたくても入れないようにして、ベッドに潜ってしまいました。
 アンダンテさんはその晩部屋に戻ってくる気配はありませんでした。

 プレスト君の目が覚めたのは、深夜のことでした。こんな時間に目が覚めてしまうなんて、少しお酒を飲みすぎたのでしょうか。
 軽い頭痛がする頭を抱えて、プレスト君は厠へ行こうと、部屋を出ました。

 一階に降りると、流石に酒場も既にしまっており、明かりは全て落ちていました。
 しかし、その中のテーブルの一つに、カンテラが灯っています。プレスト君はそれを見て隠れるように階段の影に潜みました。
 そこはさっきアンダンテさんと一緒に飲んでいた席であり、そこに座っていたのはやはりアンダンテさんだったからです。

 そして、その席の前にはもう一人客人がいました。
 客人といっても、それは人間の形ではありませんでした。
 全身を覆うのは濡れ羽色の調った短い毛。その瞳は不思議な金色をしており、瞳はこの時間だというのに縦に裂けています。

「またお前は罪に走るのだね。アドルフ」

 相手は――黒い猫でした。猫がしゃべったのです。
 酒場の主人が見たら怒鳴って箒を持って追い払いそうな光景です。酒場の机の上に、猫が乗っているのですから。
 極めつけにその猫が人語を話すなど、普通の神経をしていたら到底耐えられません。

 しかし、ここに酒場の主人はおらず、今ここにアンダンテさんとあの黒猫がいる事を知っているのも、プレスト君だけでした。
 そして、プレスト君は数少ない猫がしゃべることがある事実を知っている人間でした。
 プレスト君は、息をこらえて、二人の会話に耳をすませます。

「いささか見境を無くしすぎているのじゃないかね。お前の望むものが、あの谷底にあるという保証はないのではないかね」

「ないね、だが、だからといって素通りしてしまうには魅力的な場所すぎる。世界きっての霊場には違いない。そうだろう、伯爵」

 アンダンテさんは、そう言って黒い猫の方を、同じ色をしたその瞳で見つめました。猫は試すような眼差しでその瞳を見つめ返します。

「リタルダンドかね。なるほど、世界の過去はあの谷にある。過去になったものたちも、古になった街も、かの谷底には溢れかえっているかもしれない。だが、だからといってそれが、お前の弟子をそこに落としていい理由になるのかね」

「もちろん、救い出すつもりではいるよ」

「つもり、ね。もちろんお前はそのつもりだろう。だが、お前のつもりの通りにいつも事態は動いたかね。いつだってお前は見込み違いをして、その度にお前の見込みを上回る現実を前に、償いきれない罪を追い続けてきたのではないかね」

 その言葉に、アンダンテさんは目を伏せ、傍らの窓の方に目をやりました。
 既に真っ暗の部屋の中では、映るのは鏡のようになった部屋の中の光景ばかりで、外の景色など少しも見えません。

「私を売った時もそうだ。お前はあの銀貨三十枚で、助けるつもりだったのではないのかね。お前の娘を」

 アンダンテさんは答えません。

「旅人を見つけて、密告せよ。密告者にはその旅人の階級に応じて、報奨金を出す――。教会は当時、私の首に銀貨三十枚という値札を掛けていた。そしてお前は金が必要だった。お前の娘を不治の病から治す薬を買うために。お前は自身も旅人であるにも関わらず、私を売った。それで、お前は娘を救えたのかね。答えたまえよアドルフ。私の不肖の弟子よ。師を、恩人を売って、その見返りにお前は、欲しいものを手に入れることができたかね」

 アンダンテさんは深いため息をついて、小さく言いました。

「娘は、助からなかったよ。病を恐れる村人に川に捨てられて、死体さえ残らなかった」

「そうだろうとも」

「だからこそ、私には免罪譜が必要なのだ。あの子の弔いをするためにも」

「あの子のためかね」

「そうだよ」

 アンダンテさんがそう言うと、伯爵はくつくつと喉を鳴らして笑いました。

「笑わせるのじゃないよ、アドルフ。あの子のためだって。そんなのは、あの子が生きているうちにやらなければ何の意味もない。あの子は死んで、その死体さえ失われた今になって、あの子のためだって?」

 アンダンテさんは、感情のこもらない瞳で、ただ笑う伯爵の姿を眺めています。

「お前の娘は、いつまでもお前のことを待っていたよ。病の床に伏せっても、お前が帰ってくるのを、お前がそばにいてくれる日を、いつだって待っていた。それなのにお前はあの子のために何をしてあげたと言うんだね。何もしていない。あの子が生きているうちに、お前はあの子の願いを一つだって聞いてあげたかね。あの子の望みを、一つだって叶えてやったかね。いいや、お前はあの子が何を願い、何を望んでいるか、知ろうともしなかった。あの子が黙って耐えているのをいいことに、お前は自分の旅人としての役目ばかりを追った。身勝手なほどに」

 アンダンテさんは、ただ項垂れるばかりです。
 プレスト君はその経緯を全く知らないわけでもありませんでした。
 プレスト君もアンダンテさんと同じ旅人の一派の一人でした。
 アンダンテさんの娘のことも、そしてアンダンテさんが伯爵を、プレスト君たちの師匠を教会に密告したことも知っていました。

「お前は、アドルフ、お前の娘のことを、愛してなどいなかったよ。お前はそんなことはないと言うだろうが、そんなのは関係ないんだ。お前があの子にどう接していたか。お前がリタルダンドの谷よりも深い愛情を持って、あの子を放置していたんだとしても、それは結局行いとして、子供を捨てる親と何ら変わりないよ。お前はあの子のことを見殺しにして、それで平然としていられたんだ。そして、死んだ今頃になって、あの子に報いようとしている。それは全然順番が違うよ。愛というのはね、生きている間に示さなければなんの意味もないものなのだ。死んだあとに、立派な墓を作ったところで、愛していたことの証明にはならんよ」

「そうかもしれない。いや、伯爵、あなたの言うとおりだろう。だが、私にはこんなことしかできない。これさえもできないとしたら、私にはなすべきことなど何もない」

 アンダンテさんがそう答えると、伯爵は冷淡にそうだとも、と言いました。

「そうだよ、アドルフ。お前にはするべきことなど、この世界に何もないのだ。だってお前は私に助けられたあの日に、本当は死んでいるべきだったのだからね。そのあとに続くお前の人生の道程は、言ってしまえば何もかも蛇足だ。するべきことではない。しなくてはならなかったことではない。お前がいなければ誰かが代わりにそれを務めただろうし、それが果たされなかったとしても、誰も困らなかっただろう。お前は死に損なった人間だからね。世界には、お前のために用意された領分なんかは少しもないのだよ」

「だから、旅を続けているのだ。居場所がないなら、人は旅をするしかない」

「旅? 迷子の間違いだろう。帰り道も忘れて、あてどなくさまよい続ける罪深い私のアドルフ。お前に帰り着く場所などありはしないよ」

 伯爵は立ち上がって、机の上で伸びをします。

「お休みアドルフ。お前には安らかな夜など訪れないよ。眠れぬ夜を幾夜も抱えて、険しい道を行くがいい。また会おう」

 そう言って伯爵はテーブルを降り、机の下の暗闇の中に紛れてしまいました。
 後にはただ、消沈した様子のアンダンテさんが、カンテラの火を見つめているばかりです。
 プレスト君は厠に行こうとしていたことも忘れて、嫌なものを見てしまったと思いつつ、部屋に戻ろうと階段を上がろうとしました。

「やあ、カルファゲーテ」

 階段の上の窓から差し込む、月明かりを浴びて、プレスト君の目の先の段に、黒い猫が座っていました。
 プレスト君はぎょっとして息を呑みます。

「そんな驚いた顔をするものじゃない。久しいね、お前の顔を見るのは。相変わらず泣きはらした子供と同じ色の目をしている」

 月の光の下でその黒い体に金の瞳を輝かせて、黒い猫はプレスト君の紅い瞳を覗き込みます。
 プレスト君は思わず目をそらします。そして、後ろの酒場にいるアンダンテさんを気にしました。
 それを見てとったのか、伯爵は、アドルフはしばらくはあそこに居るよ、と付け加えるように言いました。

「カルファゲーテなんて、捨てた名前だ」

「捨てたところで名は変わらぬよ。私にとってお前はカルファゲーテさ。盗み聞きとは、いかにもお前らしい姑息な真似だね」

「お褒めに預かり恐縮です。とでも言えば満足か、伯爵」

「お前に満たしてもらおうなどとは思っていないよ。お前もそうだろう?」

 何のことか、と問おうとして、プレスト君は口を噤みます。伯爵は喉を鳴らして笑います。

「アドルフの弟子のことだよ。お前には関わりのないことなのに、随分と気にかけるのだね」

「俺は子供にはそれなりに優しいんだ」

「子供だから、かね?」

「何が言いたい」

「また、見捨てるのかね。お前は」

 その言葉にプレスト君は背筋がぞわりと粟立つのを感じました。口が乾いて、唾を飲み込むことができないほどです。

「お前は見捨てて逃げることを、いつも選択肢の中に取っておく人間だからね。だからこそお前は傍観者たり得るのだし、それゆえにアドルフもお前をそばにいさせるのだ。アドルフはお前に彼と彼の弟子にまつわる物語の見物人になってもらおうとしているのだ。分かっているのだろう」

 それは、プレスト君自身、改めて意識するまでもなく、心に決めていることでした。
 あくまでアンダンテさんたちには深く関わらず、引き返せないところにたどり着く前に、自分は身を引く存在なのだと。
 そして、その範囲内において、アンダンテさんたちにまつわる物語を見届ける役を負わされているのだと。
 そのことは、わかっているはずでした。
 そして、今がその身を引く機会の一つであることも、ひしひしとわかっていました。

「見捨てるのかね。お前の恋人と友人の諍いを見捨てたように。ガブリエルとヴォルフガングを見捨てたように」

 ガブリエルはプレスト君の漆黒のギターの名前。ヴォルフガングはプレスト君の愛馬の名前。
 そしてその二つの名は、ともにプレスト君の忘れがたい大切な友人たちからとった名前でした。
 どちらも、今はもう死んでしまった人でした。
 その二人の死が、プレスト君が旅人となるきっかけになったのです。

「ガブリエルはヴォルフガングを愛していた。だが、ヴォルフガングはガブリエルがお前を愛していると思っていた。ヴォルフガングはお前の良き友人だったが、いつも、お前より劣っていると思いこんでいた。実際お前は優秀だったからね。男としても、馬乗りとしても」

「やめろ」

 プレスト君はかすれた声でいいます。しかし伯爵の言葉は止まりません。

「そして、お前自身、ガブリエルを愛していた。ガブリエルが誠心誠意愛してやまなかったのはヴォルフガングだったが、そんなことはお前たちには関係なかった。お前と、ヴォルフガングには」

 プレスト君の脳裏によぎるのは、金髪に空色の目をした天使のような女性でした。その彼女の、眠るような死に顔。

「お前たちは勝手な男たちだ。ガブリエルの気持ちなど考えもせず、どちらがガブリエルにふさわしいのかとくだらないことで争った。その果にヴォルフガングは狂気に憑かれた」

「やめろ!」

 プレスト君は怒鳴って階段の壁を殴りつけました。
 凄い音がしましたが、しかしそれでもアンダンテさんがやってくる気配も、宿の人が騒がしいと見に来る気配もありませんでした。

「ガブリエルの腹には子供がいた。もちろんヴォルフガングの子供だ。でも、ヴォルフガングはそれを信じられなかった。そしてお前は、ガブリエルの妊娠を知って、いわれのない因縁を付けられるかもしれないと思って、二人の前から姿をくらました。その結果、ヴォルフガングはお前がガブリエルを孕ませて、それで逃げたんだと完全に誤解し、ガブリエルを殺して、自らの命も絶った。お前が見捨てたから、二人とも死んでしまった。お前が逃げてしまったから、二人は殺し合わなければならなかった」

「もうやめてくれ……」

 頼む、とプレスト君は搾り出すように言います。
 それはプレスト君が心の墓に埋めてきた記憶でした。
 埋めても埋めても、何度でも土から出てきては、プレスト君の心を苦しめる、忌まわしい記憶でした。

「カルファゲーテ、見捨てる時を誤ってはいけないよ」

 伯爵の言葉にプレスト君はそちらを見ます。伯爵は月の光を浴びて、神々しいほどでした。

「ガブリエルとヴォルフガングの時、お前は二人の前から姿を消すのが遅すぎた。もっとずっと前でお前が身を引いていれば、二人の仲はそこまで深刻にならずに済んだのだ。あそこまでこじれてしまったら、もうお前は最後まで付き合うしかなかったのに、お前は最悪の時に身を引くことを選んでしまった。いいね、カルファゲーテ。今度は間違えてはいけないよ。お前はいつかこの劇を見捨てる時が来る。少なくともそのつもりでいるのだから、ならば身の引き時は、ちゃんと心得ていなければならない。くだらない思いに捕らわれて、ズルズルと居座ると、また悲劇を生むのだからね」

 それは、つまり、アンダンテさんたちを見限るなら、今だ、と言っているように聞こえました。

「わかってるよ、伯爵」

「そう、お前はいつだってわかってはいる。それなのに機を間違えてしまうのだ。お前は最速なのに、踏切だけはいつも遅い。それがお前の罪だ。心得ておきたまえ。お休み、カルファゲーテ」

 そう言って、伯爵は階段を下り、プレスト君の横を通り抜け、暗闇の中に消えて行きました。

 アンダンテさんは、やってくる気配を見せません。

 プレスト君は素知らぬ顔で部屋に戻り、夜が明けないうちに、愛馬のヴォルフガングを連れて、町を出ました。
 朝になって、アンダンテさんが部屋に戻ると、宿代の半分だけ置かれて、部屋は整理されていました。
 それを見てアンダンテさんは静かにベッドの脇に腰を下ろして、一つ息をつきます。

「それでいい、カルファゲーテ。君はそうするべきなのだ」

 これでまた、少し寂しくなるな、とアンダンテさんは思い、バカバカしいと、それを笑いました。

№126、127

2015.03.10.[Edit]
五 一方でアンダンテさんたちは、既にリタルダンド渓谷を抜け、その先にある街にたどり着いていました。 既に日はとっぷりと暮れ、夜になっていました。二人とも、崩落以降一言も口を聞いていませんでした。 あえて話すこともなかったからです。 馬車がなくなった以上その場にとどまっていることはできませんでしたし、アンダンテさんとプレスト君の二人だけで、フォルテ君を助け出すことは不可能だと、二人とも分かっていたの...

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http://enkikaferoid.blog137.fc2.com/blog-entry-352.html

ようやく五まで完了です。見れない時は上のリンクを参照下さい。
さて、当初の予定とちょっと異なってプレスト君が一時離脱になりました。これは一応プレスト君側としては物語の終盤に戻ってきて馬車を用立てているという事情があったりもするわけなんですが、実際ここからの流れにはプレスト君の目線でなくてもいいというのもあったりします。そんなこんなで少々プロットも変わったりするわけですが、一応以下に変更版プロットを載せておきますので、六あたりから書き始めていただけると助かります。

六:フォルテくんはとりあえずは助けを待つことに。その傍らでアンダンテさんに託された遺書(アンダンテさんのメッセージ、すまないと白紙の五線譜の束)を見たヴィヴァルディは猛烈な勢いで五線譜に万年筆で作曲を始め、フォルテ君が何をしてるんですかと聞くと、君たちが欲しがるものだよとかって答えて、調和の霊感の楽譜を書き上げているとか。作曲家というのは度し難いものでね、こんなものは何にもならないとわかっていながら、白紙の五線譜を見せられると手が止まらない、とかって言ってひたすらに楽譜を綴ったり。その間にフォルテ君に調和の霊感(免罪譜)について、本当はこんなものを作るべきではなかったのだ、とかって言って、調和の霊感にまつわる自らの罪を懺悔するとか。いわく、調和の霊感が出来てしまったせいで、人はそれによる免罪を望むようになり、免罪譜さえあれば、どれほど罪深いことでも許されると考えるようになり、罪そのものの罪深さから目を背け、安易に手に入れられる許しを求めるようになってしまったとか。あまつさえその免罪譜が神格化され、それを手に入れるために、各地で騒乱の種にさえなったことも、やはり免罪譜を作った自分の罪だと懺悔するみたいな。で、それでも免罪譜を書くんですかとかってフォルテくんに言われて、ほかにできることがないとかって答えるとか。で、フォルテくんはその傍らでエーデルと一緒に助けを待っている間に、過去にもこんなことがあったようなことを思い出して、子供だった頃に、アッチェレランド病に苦しんで、それでもアンダンテさんに会いたいとなくエーデルを慰めながら、ここで待っていればもうすぐにアンダンテさん(アドルフ)が来ると言い聞かせて待っていたことを思い出したり。それで記憶に確かにエーデルの顔が残っているのにその名前が思い出せないでいながら、赤毛の司祭に君はやはりこの子を知っているようだねとか言われたりして。それで、待っていても助けは来ないよ、この奈落には生きているものは入れないのだからねとか言われて、待っていても仕方ない、と崖を登ろうとするんですが、すぐに崩れてダメで、そのうちにヴィヴァルディが楽譜を書き終わって、あとはこれを届けるだけだといって、そこから亡者の罪を目指して川をひたすら上流に目指して歩き出すみたいな。

とりあえず六のプロットを少し改変しました。これを下に六の執筆をお願いしたいのですが。

№128

2015.03.18.[Edit]
http://enkikaferoid.blog137.fc2.com/blog-entry-352.htmlようやく五まで完了です。見れない時は上のリンクを参照下さい。さて、当初の予定とちょっと異なってプレスト君が一時離脱になりました。これは一応プレスト君側としては物語の終盤に戻ってきて馬車を用立てているという事情があったりもするわけなんですが、実際ここからの流れにはプレスト君の目線でなくてもいいというのもあったりします。そんなこんなで少々プロット...

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No.29の内容です。

名前:シオン・テトラ
性別:男
年齢:十二歳
国籍:
種族:人間
容姿:伸びきっていない茶色い髪の毛を後ろ側結べるだけ集めて中途半端な長さで結んでいる(カイに憧れて真似をしている)。目の色は薄い青。子供っぽいあどけない顔立ちで感情豊富。背はこの年の子供の中でも低い方(140センチくらい。成人男性170平均みたいな)。体つきも貧相で痩せていて筋肉もあまりない。
社会的地位:平民(不明、奴隷でないのは確かだとは思います)
性格:泣き虫だが我慢強い。というより、大抵のことは我慢しようとこらえているが、いつもこらえきれずに涙が出てしまう。泣くものの文句を言ったり八つ当たりはせずに、歯を食いしばりながら泣きつつ我慢する感じ。罵倒少女の罵倒も耐え切れずにすぐ泣いてしまうが基本言い返すことはできない。泣き虫だが、感情表現は豊富で驚いたり笑ったり、やや年齢よりも幼い感じで怒りや悲しみなどマイナス方向ではない感情は素直に表現する。また嘘や隠し事が非常に下手くそで、仕草にすぐ出るタイプ(目が泳ぐ、唇を噛む等)。カイのことを実の兄のように慕っていて真似をしたがる。
癖:砂いじり(暇なときなど、すぐに座り込んで砂に絵を描いたり砂粒を拾い集めたりする)
ポリシー:泣かない男になる(肉体的な苦痛より悪口を言われたり心理的苦痛があるとすぐに泣いてしまう)
長所:粘り強い性格。諦めないしぶとさ。
短所:精神的幼さ。純粋で馬鹿なところ。考えの浅さ。恐怖や緊張に対する弱さ。
知性:知的好奇心は豊富。ただし発想は別に豊富でもない。頭の回転がいい方でもない。この世界には珍しくなく字の読み書きはできない。計算は指で九九が処理できる程度。記憶力はいい方(一度言われたことがいいことにせよ悪いことにせよずっと覚えて引きずっていたりする)
健康:すこぶる健康。ただし体力はない方。旅に支障はないが肉体的な強さはない。
趣味:戦士ごっこ。魔法使いごっこ。科学者ごっこ。砂に絵を描く。大人の話を聞く。歌を歌う(文字文明が滅びてしまったこの世界では過去のことは歌にして語り継がれているとか。で、シオンはそういう歌が割と上手くてたくさん知っているみたいな)
特技:歌。物まね(よく人の言い方とか仕草をふざけて真似する)
トラウマ:幼い頃に両親が死んでおり、カイの家で育てられた。実の親には虐待されていたりして(食事を与えない、面倒を見ない、罵倒を浴びせる等。肉体的な虐待より心理的虐待及びネグレクト(育児放棄)の虐待が多かった)、無視されたり、悪口を言われると普通以上に傷ついて泣き出す。ただし正常な判断力は備えているので大声で泣き喚いたり、駄々をこねたりはしない。本人にもどうしようもなく涙が溢れてしまう。
家族:両親とも死別。現在はカイの家(ベルナクス家)で、カイの弟みたいな立場で育てられている。ベルナクス家の人々は基本シオンにも好意的。
武器:短剣。
魔法:蘇生‐死んだものを一度だけなら生き返らせることができる魔法。肉体が生前の姿で残っていないと発動できない(死体が失われている人を生き返らせたりはできない)(本人は自分にこの魔法があることを知らない)
好きなもの:カイ、ベルナクス家の人たち。パーティのメンバー。歌。絵。戦士。英雄の伝説。暖かくて緑が豊かな場所。
嫌いなもの:泣く人(自分を含め)。無視。寒くて乾いた場所。ご飯抜き。病気。悪口。

名前:カイ・ベルナクス
性別:男
年齢:17歳
国籍:
種族:人間
容姿:170センチくらい。中肉中背の割と筋骨がしっかりしたがっしりした青年。肩までの黒い髪の毛を前髪は残し後ろで一括りにしている。目の色は薄い茶色で、眉毛が凛々しい。頬に切り傷の跡が有り、体には戦士の修行で付けられた生傷が多い。肌はやや日に焼けていて浅黒い。
社会的地位:平民(未定)
性格:明るくあっけらかんとした性格。深く物事を考えたりするのは苦手で大切なのは悩むよりも実践することだと思っている。考えるより先に体を動かすタイプ。力は弱いものが強いものに挑むのは許されるが強いものが弱いものに対し力を振るうのは暴力だと考えていて、自分より弱いと思っている相手に力に訴えることは基本的にしない(女は殴らない、子供は殴らない等等。罵倒少女もあまりの口の悪さに殴りそうになって思わず自制するシーンとか欲しいと思ったり)。嘘や隠し事が苦手。
癖:石ころを手の中で握る(握力の鍛錬)(くるみは素手で割る程度の握力)
ポリシー:思い立ったが吉日。習うより慣れろ、案ずるより産むが易し。とにかく考えるよりひとつでも多くやる主義。女子供は殴らない。暴力をふるっていいのは自分より強い相手だけ。
長所:戦士としての強さ(シオンたちの村でも割と強い方みたいな)。おおらかで優しい性格。
短所:とにもかくにも思いつきから行動まで障害がないので、考えなしにやったことが大惨事を招くことを予期できなかったりする。
知性:読み書き計算はできない(特に計算は九九ができないのでシオンより下)。ただ直感力はあり勘は鋭く、本能的に正解にたどり着いたりする。
健康:すこぶる健康。肉体的にも非常に強い。持病とかもない。
趣味:剣の練習。戦士としての鍛錬。畑仕事。
特技:剣技。投げナイフ。弓。散髪(シオンや自分のを含め、自分のきょうだいたちの髪の毛を切る)
トラウマ:ベルナクス家の長男でこれまでに弟や妹を数人失っている。旅の途中で腐村の村に立ち寄ったりして子どもが死んでいるとやりきれない気持ちになる。また弱い者への暴力を禁じているが、これに反してつい感情に任せて暴力をふるってしまったりすると自己嫌悪に駆られる。
家族:父、母、祖母、下に弟妹が複数(三人くらいでしょうか)、シオン(居候)
武器:長剣。投げナイフ。あれば弓。また落とし穴をほったり罠を仕掛けたりもする。
魔法:肉体活性‐もともと身体的に優れているが精霊の加護によって家一階分ジャンプしたり、馬と同じくらいの速さで走ったりできる。活性させる内容によって柔軟性を上げたり持久力を上げたりできる。また感覚を鋭敏化させることで視力を上げたり聴力を上げたりできる。
好きなもの:ご馳走。子供。年頃の女性。戦士の師匠。家族。過去の英雄。
嫌いなもの:空腹。自分の弱さ。口の悪い人物。言うだけで何もしない人物。努力しない人物。根性なし。嘘つき。

というわけでシオンとカイを作ってみました。
人物像についてはとりわけ特殊な感じをイメージしているわけではなさそうなので平均的な感じにしました(日本人基準)。
単位についてですが、一応メートル法における一メートルというのは地球の大きさ(地球の円周)の四万分の一というのが最初期の定義なので、名称を置き換えるにせよ何にせよ、異世界が地球でない以上は基本的に代わりの単位を考えないといけないわけですが、だからって世界の大きさの何万分の一かが地球上の一メートルとほぼ同じ、みたいなのは強引なわけで。というわけで参照して欲しいのが人間の体の部位の大きさが基準単位になっている世界です。ヤード・ポンド法とか尺貫法とかも元はそのへんなんですがこういうのを身体尺というのですが、例えば一フィートはおよそ30センチですが、これは欧米人にとって足ひとつ分の大きさがこれくらいだったことに由来します。そうやって考えていくと、一年の日数も365日はおかしいですし、一日が二十四時間で一時間が六十分に分かれる根拠もなかったりするんですが、このへんはおいおい考えていくということで(例えばですが、聖石が隕石として過去に飛来して、生命の泉を吸い尽くしてからした世界の中に地球があったりして、そこから知識が輸入されたとか考えようと思えばそれらしい理由はあるのですが)。

聖石の解釈は多分そんな感じで合っていると思います。で、移動手段ですが、基本的には寄生というより、その世界の知性を持つ生物の思考を誘導して、時が来たら自分たちを宇宙に発射させる装置を作らせる、みたいな感じでいいと思ったり。で、この世界でそのために選ばれたのがノアみたいな。

で、精霊はこの世界の生命の泉を守護する存在とかでいいんじゃないかと思ったり。だから聖石がこの世界に来る前からこの世界に存在していて、原始的な生命を育んでいたとか(深い海に満たされた世界でそこで嫌気性の原子生命を育んでいたとか)。そこに聖石の飛来があって、生命に知性が与えられ急速な進化が促されて(酸素の供給による生命の進化、陸上進出)、その結果強い意志を持つ知性体を生み出すことになったので、その点では精霊は聖石に好意的なんですが、それはあくまで聖石の目的がこの世界から生命の泉を搾り取ることだと知らないからみたいな。そのことが判明すると主人公たちと聖石VS生命の泉を守る精霊たちみたいな構図になってきて、聖石側が言うことを聞かないと聖石による酸素の供給を中断するとか脅しをかけてきて主人公たちは脅される人々と精霊の意志との間で板挟みみたいな。もともと酸素の供給は聖石と生命の泉が反応することでしか得られないわけで、かと言って聖石の言うとおりにしていては世界ごと枯らされてしまうわけで。そのへんは物語の落としどころとして神人たちのやることが鍵でしょうかね。

そんなこんなでまたもやいろいろ提案させていただきました。行き違い等々ありましたらご了承ください。

No.34の内容です。

私もらくだ様と同じようなイメージでした。
で、世界のどこかに超巨大な聖石の本体があって、それぞれの町にあるのはその破片みたいな。

そして巡礼に持っていく巡礼石は、街の聖石から切り出した小さな持ち運びできるサイズのものみたいなイメージだったんですが、現在聖石が生物説があるので、一旦分離して、巡礼者が戻ってきたあと巡礼石を元の聖石にくっつけておくとそのまま吸収して元の一つの聖石になるみたいな性質があってもいいかなと思ったり。で、現在隕石説があって、かつて隕石としてこの舞台となる世界に飛来した岩石生命体が聖石みたいな提案があって、その聖石はこの世界から湧き出す生命の泉を糧として生きる生命体で、この世界から生命の泉を奪い尽くして、再び別の世界へと宇宙を旅して、次々に世界を枯らしていく世界に規制する生物みたいなことを提案しているんですが、それに則っていくと、世界に衝突した際と、一度この世界から飛び立とうとして失敗した時(バベルの塔崩壊時)の二度のショックで世界中に飛散した自分の破片たちを元の一つの個体に戻そうとしていて、各地でこの村にある聖石が強奪されるという事件が相次いでいるとか。で、この聖石泥棒たちを裏で操っているのが、聖石に魅入られて、聖石がこの世界から生命の泉を搾り取って宇宙へと離脱するのを手伝う人間の一族であるノアの一族とか。

で、現在宇宙からやってきた聖石と、この星に本来いる精霊で対立構造みたいのが出来てますけど、そうすると神人はどこのポジションに当たるのかなと思ったり。人類消滅側、かつ神の使者ですからどう考えても聖石側なんですが、だとするとノアのことを知らないのはおかしいんですよね。

というわけで、神人はあくまで聖石の意志によって生み出される存在で、人類の滅亡(聖石のこの世界からの離陸)を推進している側でいいと思うんですが、ノアがその想定を超えて裏で画策しているという構図にしてみようと思ったり。つまり、ノアの目的は聖石がこの世界から離脱することではなくて、もっと裏をかいてこの聖石の力を自分たちの一族のためだけに利用しようとしているみたいな陰謀とか。

具体的に言うなら、聖石の意思(あくまでも隕石説前提で話してますけど)では、この世界にある生命の泉をすべて絞り尽くして、各地に飛散した生きている聖石をすべて原石に吸収して、宇宙飛行中の聖石を守る存在としてノアの一族も従えて、神人も連れて、この世界を放棄し、新しい生命の泉が溢れる世界へと飛び立とうとしているわけですが、ノアの目的はもっと利己的なもので、聖石を利用しようと思っているとか。

つまり、ノアは、聖石が離陸するための計画に協力しているように見えて、実際にはその計画を意図的に遅延させていて、目的は自分の一族以外の人類を滅ぼし、滅んだ後の世界で自分の一族が反映することで、聖石が目指す別の世界とかに付き合う気は毛頭なくて、ただ、聖石の力と生命の泉の量からして、全ての人類がこの世界のとどまることはできないと考えていて、そのために人類を自分の一族だけにする必要があったとか。で、そうして人類を減らした上で、聖石はこの世界から旅立たせず、ノアの一族のためにその力を使っていればいいみたいな策略があって、もっぱらそのために行動しているとか。

で、聖石は計画通りに神人を使って人類滅亡の合議を開くわけですがそこにノアの一族の企みを気取った新人の一人が怪しく思って罵倒少女を使って自体の真実を明らかにしようとしているとか。

で、だとすると、結局は最終的にはみんな共存みたいなところに落としたいわけですが、そうすると生命の泉が枯渇しないみたいな設定がいるわけですが、そこにシオンの再生の力を持つ精霊の存在が大きく関わってくるとか。つまり、最終的にこの精霊がこの世界に働きかけることで、生命の泉を再生し続けるみたいなことになって聖石と精霊は共存を選択し、結果としてノアの陰謀であるこの世界から聖石を飛び立たせず、ノアの一族も滅びない(かつほかの人類も生き残る)が達成されつつも万事めでたしめでたしになるみたいな。そんな感じのを思いついたりしました。

というわけでブルーツ・リー様よろしくお願いします。フィルタかかってるみたいですけどこの投稿は見れますでしょうか。
フィルタかかってる投稿のナンバーを教えていただいたらその投稿が見れるように私のブログの方に内容を載せたりするんですが。
アカウント取得していただくのが一番手っ取り早いんですけれどもね。らくだ様も初期の頃アカウントなくてフィルタ対策にいろいろした頃のことを思い出します。何はともあれよろしくお願いします。

らくだ様合作のフィルタ分

2016.03.04.[Edit]
No.29の内容です。名前:シオン・テトラ性別:男年齢:十二歳国籍:種族:人間容姿:伸びきっていない茶色い髪の毛を後ろ側結べるだけ集めて中途半端な長さで結んでいる(カイに憧れて真似をしている)。目の色は薄い青。子供っぽいあどけない顔立ちで感情豊富。背はこの年の子供の中でも低い方(140センチくらい。成人男性170平均みたいな)。体つきも貧相で痩せていて筋肉もあまりない。社会的地位:平民(不明、奴隷でないの...

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トリミング・シオン
名前:シオン・テトラ
性別:男
年齢:十二歳
国籍:
種族:人間
容姿:伸びきっていない茶色い髪の毛を後ろ側結べるだけ集めて中途半端な長さで結んでいる(カイに憧れて真似をしている)。目の色は薄い青。子供っぽいあどけない顔立ちで感情豊富。背はこの年の子供の中でも低い方(140センチくらい。成人男性170平均みたいな)。体つきも貧相で痩せていて筋肉もあまりない。
社会的地位:平民(不明、奴隷でないのは確かだとは思います)
性格:泣き虫だが我慢強い。というより、大抵のことは我慢しようとこらえているが、いつもこらえきれずに涙が出てしまう。泣くものの文句を言ったり八つ当たりはせずに、歯を食いしばりながら泣きつつ我慢する感じ。罵倒少女の罵倒も耐え切れずにすぐ泣いてしまうが基本言い返すことはできない。泣き虫だが、感情表現は豊富で驚いたり笑ったり、やや年齢よりも幼い感じで怒りや悲しみなどマイナス方向ではない感情は素直に表現する。また嘘や隠し事が非常に下手くそで、仕草にすぐ出るタイプ(目が泳ぐ、唇を噛む等)。カイのことを実の兄のように慕っていて真似をしたがる。
癖:砂いじり(暇なときなど、すぐに座り込んで砂に絵を描いたり砂粒を拾い集めたりする)
ポリシー:泣かない男になる(肉体的な苦痛より悪口を言われたり心理的苦痛があるとすぐに泣いてしまう)
長所:粘り強い性格。諦めないしぶとさ。
短所:精神的幼さ。純粋で馬鹿なところ。考えの浅さ。恐怖や緊張に対する弱さ。
知性:知的好奇心は豊富。ただし発想は別に豊富でもない。頭の回転がいい方でもない。この世界には珍しくなく字の読み書きはできない。計算は指で九九が処理できる程度。記憶力はいい方(一度言われたことがいいことにせよ悪いことにせよずっと覚えて引きずっていたりする)
健康:すこぶる健康。ただし体力はない方。旅に支障はないが肉体的な強さはない。
趣味:戦士ごっこ。魔法使いごっこ。科学者ごっこ。砂に絵を描く。大人の話を聞く。歌を歌う(文字文明が滅びてしまったこの世界では過去のことは歌にして語り継がれているとか。で、シオンはそういう歌が割と上手くてたくさん知っているみたいな)
特技:歌。物まね(よく人の言い方とか仕草をふざけて真似する)
トラウマ:幼い頃に両親が死んでおり、カイの家で育てられた。実の親には虐待されていたりして(食事を与えない、面倒を見ない、罵倒を浴びせる等。肉体的な虐待より心理的虐待及びネグレクト(育児放棄)の虐待が多かった)、無視されたり、悪口を言われると普通以上に傷ついて泣き出す。ただし正常な判断力は備えているので大声で泣き喚いたり、駄々をこねたりはしない。本人にもどうしようもなく涙が溢れてしまう。
家族:両親とも死別。現在はカイの家(ベルナクス家)で、カイの弟みたいな立場で育てられている。ベルナクス家の人々は基本シオンにも好意的。
武器:短剣。
魔法:蘇生‐死んだものを一度だけなら生き返らせることができる魔法。肉体が生前の姿で残っていないと発動できない(死体が失われている人を生き返らせたりはできない)(本人は自分にこの魔法があることを知らない)
好きなもの:カイ、ベルナクス家の人たち。パーティのメンバー。歌。絵。戦士。英雄の伝説。暖かくて緑が豊かな場所。
嫌いなもの:泣く人(自分を含め)。無視。寒くて乾いた場所。ご飯抜き。病気。悪口。

シオン・テトラ

2016.03.09.[Edit]
名前:シオン・テトラ性別:男年齢:十二歳国籍:種族:人間容姿:伸びきっていない茶色い髪の毛を後ろ側結べるだけ集めて中途半端な長さで結んでいる(カイに憧れて真似をしている)。目の色は薄い青。子供っぽいあどけない顔立ちで感情豊富。背はこの年の子供の中でも低い方(140センチくらい。成人男性170平均みたいな)。体つきも貧相で痩せていて筋肉もあまりない。社会的地位:平民(不明、奴隷でないのは確かだとは思います)...

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トリミング・カイ
名前:カイ・ベルナクス
性別:男
年齢:17歳
国籍:
種族:人間
容姿:170センチくらい。中肉中背の割と筋骨がしっかりしたがっしりした青年。肩までの黒い髪の毛を前髪は残し後ろで一括りにしている。目の色は薄い茶色で、眉毛が凛々しい。頬に切り傷の跡が有り、体には戦士の修行で付けられた生傷が多い。肌はやや日に焼けていて浅黒い。
社会的地位:平民(未定)
性格:明るくあっけらかんとした性格。深く物事を考えたりするのは苦手で大切なのは悩むよりも実践することだと思っている。考えるより先に体を動かすタイプ。力は弱いものが強いものに挑むのは許されるが強いものが弱いものに対し力を振るうのは暴力だと考えていて、自分より弱いと思っている相手に力に訴えることは基本的にしない(女は殴らない、子供は殴らない等等。罵倒少女もあまりの口の悪さに殴りそうになって思わず自制するシーンとか欲しいと思ったり)。嘘や隠し事が苦手。
癖:石ころを手の中で握る(握力の鍛錬)(くるみは素手で割る程度の握力)
ポリシー:思い立ったが吉日。習うより慣れろ、案ずるより産むが易し。とにかく考えるよりひとつでも多くやる主義。女子供は殴らない。暴力をふるっていいのは自分より強い相手だけ。
長所:戦士としての強さ(シオンたちの村でも割と強い方みたいな)。おおらかで優しい性格。
短所:とにもかくにも思いつきから行動まで障害がないので、考えなしにやったことが大惨事を招くことを予期できなかったりする。
知性:読み書き計算はできない(特に計算は九九ができないのでシオンより下)。ただ直感力はあり勘は鋭く、本能的に正解にたどり着いたりする。
健康:すこぶる健康。肉体的にも非常に強い。持病とかもない。
趣味:剣の練習。戦士としての鍛錬。畑仕事。
特技:剣技。投げナイフ。弓。散髪(シオンや自分のを含め、自分のきょうだいたちの髪の毛を切る)
トラウマ:ベルナクス家の長男でこれまでに弟や妹を数人失っている。旅の途中で腐村の村に立ち寄ったりして子どもが死んでいるとやりきれない気持ちになる。また弱い者への暴力を禁じているが、これに反してつい感情に任せて暴力をふるってしまったりすると自己嫌悪に駆られる。
家族:父、母、祖母、下に弟妹が複数(三人くらいでしょうか)、シオン(居候)
武器:長剣。投げナイフ。あれば弓。また落とし穴をほったり罠を仕掛けたりもする。
魔法:肉体活性‐もともと身体的に優れているが精霊の加護によって家一階分ジャンプしたり、馬と同じくらいの速さで走ったりできる。活性させる内容によって柔軟性を上げたり持久力を上げたりできる。また感覚を鋭敏化させることで視力を上げたり聴力を上げたりできる。
好きなもの:ご馳走。子供。年頃の女性。戦士の師匠。家族。過去の英雄。
嫌いなもの:空腹。自分の弱さ。口の悪い人物。言うだけで何もしない人物。努力しない人物。根性なし。嘘つき。

カイ・ベルナクス

2016.03.09.[Edit]
名前:カイ・ベルナクス性別:男年齢:17歳国籍:種族:人間容姿:170センチくらい。中肉中背の割と筋骨がしっかりしたがっしりした青年。肩までの黒い髪の毛を前髪は残し後ろで一括りにしている。目の色は薄い茶色で、眉毛が凛々しい。頬に切り傷の跡が有り、体には戦士の修行で付けられた生傷が多い。肌はやや日に焼けていて浅黒い。社会的地位:平民(未定)性格:明るくあっけらかんとした性格。深く物事を考えたりするのは苦手...

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ピルグリム世界

スメタナ大陸:西にある大陸。教会の総本山。

ドヴォルザーク大陸:別名新大陸。ピルグリムの信仰が残っている。教会の迫害を逃れたピルグリムが行く場所でもある。

クレッシェンド山:五百年前に海底から隆起した火山島。現在は噴火はないが、しばしば地震が起こる。

川:スメタナ大陸の中心にある湖から、東に向かって流れる川と、ドヴォルザーク大陸の中心にある湖から西に向かって流れる川が、クレッシェンド山を深くえぐって深い谷間を作り、火口部付近でついに滝となって混じり合っており、そこからクレッシェンド山を真っ二つに侵食して、断崖を作っており、この渓谷をリタルダンド渓谷とよぶ。北の一角でかろうじてつながっており、そこにトンネルが掘られて、行き来できるようになっている(忘却の子守唄編)。

とりあえず整合性だけはとってみました。余計に分からなくなったとかあったら申し訳ないです。

ピルグリム世界

2016.10.02.[Edit]
スメタナ大陸:西にある大陸。教会の総本山。ドヴォルザーク大陸:別名新大陸。ピルグリムの信仰が残っている。教会の迫害を逃れたピルグリムが行く場所でもある。クレッシェンド山:五百年前に海底から隆起した火山島。現在は噴火はないが、しばしば地震が起こる。川:スメタナ大陸の中心にある湖から、東に向かって流れる川と、ドヴォルザーク大陸の中心にある湖から西に向かって流れる川が、クレッシェンド山を深くえぐって深い...

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Material 「素材の小路

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